第6話 電波少年、危機一髪!
その時―――――蛍光灯が破裂する音より遥かに大きい音が響いた。
ぼやける視界の中、目の前の光景に目をやると窓硝子をぶち破り飛び散る破片と共に現れた白い女の影。
外から入る陽射しに照らされヒラヒラと波打ちながら舞う純白のレザーコートは、まるで天使の羽か天女がまとう羽衣のよう。
髪はポニーテールだが異様に大きくエイやヒラメのように平たい形で、顔は女神のように美しく飛び散った硝子の破片に映り込むと神秘的に見せた。
まるで、いくつもの宙を舞う鏡に顔が映り込んでいるようだ。硝子の破片同士が光りを反射させ女神をより一層輝かせた。呼吸困難で酸素量が足りず反応が鈍くなった縁司の脳は一連の光景をスローモーションで見せた。
そして、純白の女神の足が地に付――――――――かなかった。
「うぎょ!?」
着地する直前、足をくじいてバランスを崩した女神は横転。恐らく外から勢いを付け飛び込んだのだろう、その勢いは死ぬこと無く横転した白い物体をボーリング玉のように転がし壁に叩きつけた。
この騒ぎで縁司を苦しめた砂嵐が何処かへ消えてしまった。呼吸が出来るようになった少年は慌てて酸素を吸い、むせ返った。
そして再び白い女の影を見る。
女は袖を口元に寄せて喋りかける。
「ジャマー出現、マル対に接触しました。緊急マニュアル移行します」
今度は手で耳を押えて何かを聞いた後、再び袖を口に当てる。
「了解。マニュアルに従って
彼女はコートの内ポケットからボールペンを取り出す。
右手で握ったボールペンを左耳に近付けた後、空気を裂きながら振る。縁司の目の前でペンは金属音を響かせ、勢いよく伸びきった。
アンテナのように伸びたボールペンは小さな棒になり、ペン先が三つに割れ花びらのように咲いた。
「さぁ、フィッシングタイムよ!」
彼女が細い棒をかざすと先端が微かに振動して発光。
青白いレーザーが天井に刺さる。
次の瞬間、天井に刺さったレーザーは左右に暴れ出した。吊られて彼女の身体も左右に振られるが、それに逆らおうと足を力ませ踏ん張る。
「この!」
力の反発を受けた棒は半円状にカーブを描きながらしなる。
今度はレーザーが床に刺さった。その光景は釣りをしているようにしか見えない。
「大人しく……出てこいや!」彼女は棒を強く引っ張った。
床から浮かび上がったのは天井まで伸びる半透明の影、影越しに廊下の先が見える。
その形は異様で上部が鋭く尖り、下に行くほど円柱状に太く広がるロケット形。
下半分は閉じた傘のようになり幾つもの紐が垂れ下がっている。
そして上部がお辞儀するようにこちらへ折れ曲がって行くと――――驚いたことに赤く光る二つの目玉が現れ鋭い牙を思わせる口が開いた。
後ろからは刀のような背びれが伸び、まるでパニック映画に出て来るサメの姿に似ていた。
そして閉じていた下半身の傘が開くと異様さは増す。
垂れ下がっていた紐が生命を宿したように暴れ出し紐が触手へと変貌した。こんな生き物は見たことが無い……タコやクラゲの頭にサメが合体しているようだ。
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