第10話 博望坡の戦い

黄祖の戦死を受けた劉表は、亡き先妻との子である劉琦に江夏を守らせて孫権に備えさせた。


一方の劉備は新野で曹操軍に備え、住民から新たに3000人の兵を募集した。


そんな折、ついに曹操が南征に動き出す。


「曹操様間者からの書簡です」


曹操が書簡に目を通すとかなり怒った様に書簡を机に叩きつける


曹操

「おのれー!!

劉備よ許さん!!」


桜花との婚儀の事が書かれていたのである


曹操

「夏侯惇居るか!」


夏侯惇

「ここに・・・」


曹操

「他の者は少し外せ!」


皆が外すと曹操は書簡を夏侯惇に見せた


夏侯惇

「こ、これは・・・」


曹操

「趙雲が私から桜花を奪った様だ。

どう桜花を落としたか分からぬが許さん!」


かなり怒った曹操に夏侯惇は言う


夏侯惇

「落ち着いて下さい。

これも曹操様を混乱させる諸葛亮の策かもしれません。」


曹操

「それくらい私も分かっている!

だが、桜花は並大抵な女ではない、容易く結婚もしない!!

趙雲と結婚したのは本当だと書かれている。

それにいつも寄り添い幸せそうに居るとも書かれておる。」

(クッ、私の時はそうではなかったのだな桜花よ。)


夏侯惇

「曹操様落ち着いて下さい。

私が桜花様を連れ戻してきます。」


曹操が落ち着いた頃に皆を呼ぶ。


徐庶

「私が蛍の光なら孔明は月です。

5万の兵だけでは勝てないと思います。」


諸葛亮の実力を聞かされたが、意に介さない夏侯惇は言う


夏侯惇

「なに!!

劉備と諸葛亮を生け捕りにしてきましょう」


賈詡

「だから〜5万では不足なんだよ夏侯惇。

俺は15万必要だと思うよ」


なかなか話しが纏まらないなか曹操がいう


曹操

「夏侯惇、10万で行け。」


夏侯惇

「曹操様・・・

分かりました。

必ず連れてまいります。」


夏侯惇は出陣の準備をする


婚儀を終えた趙雲と桜花は初夜を迎えていた


趙雲

「本当に俺の物になっても良いか?」


桜花

「ここまできて私にどうしろと。

側に居て愛してくれるのでしょう。

それで良いわ。」


趙雲

「ゴホン!!

曹操に抱かれたのであろう。

俺は曹操みたいに優しく出来ないかもしれぬぞ。」


桜花

「えっ、曹操は過去の人だけど曹操に抱かれたことはないわ」


趙雲

「なに!!

お前、曹操と結婚したのであろう!?

なのに曹操は抱かなかったのか!」


桜花

「ええ、だって急に忙しくなってそれどころじゃなかし、側に居るのも大変だったもの。

屋敷で一人ぼっちが多くて退屈で死にそうだったわ」


趙雲

「待て待て待て!!

ではお前は男に抱かれるのは初めてなのか」


桜花

「ええ、そうよ。

優しく出来ないなら痛くない様に抱いてね。」


趙雲

「はあ・・・・・・」


趙雲は寝台に腰掛けた


桜花

「どうしたの」


趙雲

「お前の本心が聞きたい。

本当にもう曹操を愛してないのだな。」

(なんて事だ、それで血眼になって曹操が桜花を追うわけか・・・)


桜花

「えっ、愛するもなにも曹操は勝手に私を妻にして御構い無しで放ったらかしたのよ。

愛する前に好きでもなかったわ。」


趙雲

「俺の事はどうなのだ・・・」


桜花

「好きよ、でも、まだ愛して居るとか分かんないのよね、どこからが愛なの?」


趙雲

「男の俺に聞くなそんな事。

女と男の考えは違う。

それにお前は乙女のままでいた方が良いのではないかこのままでは曹操に殺されるぞ」


桜花

「それも逃げた時に覚悟しているのよ。

抱くのも抱かないのも貴方次第よ。

それに私は貴方に抱かれたいと思っているわ」


趙雲

「俺もお前を今すぐにでも抱きたい!!」


趙雲は桜花を押し倒した


趙雲

「後戻りはもう出来ないぞ。

死ぬまで一緒に居てやる。」


桜花

「ええ、好きよ趙雲」


趙雲

「ああ、俺も、もうお前の全てが愛おしい・・・」


2人は重なり合うのだった。


翌日2人が起きる頃諸葛亮が部屋を訪ねて来た


諸葛亮

「趙雲起きているか」


趙雲

「ああ、今起きた。

だうしたのだ軍師殿」


諸葛亮

「許都の患者から情報が入った。

軍議を開きたいと劉備殿が呼んでいるんだ」


趙雲

「分かった支度をしたら行く」


諸葛亮が去っていくと趙雲は起き着替えるのだった


趙雲

「桜花、起きられるか」


桜花

「趙雲・・・

こんな朝早くだうしたの・・・

クッ、彼方此方痛いわ・・・」


趙雲

「初夜の翌日はそんなものだ。

許都の曹操が動いたらしい。

起きられたら軍議に参加してくれ。」


桜花

「ええ、少ししたら行くわ」


趙雲

「ああ、無理はするな。」


趙雲は桜花にキスをして出て行った。


桜花

(曹操が動いたという事はかなりお怒りね

でも私は趙雲が好き。)


桜花も又着替え軍議に参加した。


劉備

「趙雲達には悪いのだけど曹操が夏侯惇を此処に10万の兵を率い向かったと情報が入ったんだ」


諸葛亮

「ほぉ〜10万ですか。

それならまだ此処で戦えます劉備様」


関羽

「えっ、10万よ!?

どうするの。」


桜花も不敵な笑いを浮かべると関羽と張飛は少し背筋が冷える思いをした。


張飛

「あの2人似ているよな〜なんだか怖いよな〜」


関羽

「張飛!?

言い過ぎよ」


諸葛亮

「ゴホン!!

まず関羽と張飛を博望坡の左右に潜ませ、南の方に火が上がったら敵の輜重隊に火を放つ。

関平と劉封は博望坡の裏手に潜ませ、敵が来たら直ちに火を放て。

そして趙雲と桜花、先鋒、劉備様を後攻めとする。」


趙雲

「先鋒なら任せろ!!」


諸葛亮

「趙雲やる気があるのは良いが勝ってはならない。」


趙雲

「えっ!?」


諸葛亮

「ひたすら負けながら逃げるだ。」


趙雲

「これは難しい指示だな。」


桜花

「私も居るから引き際を教えるわ」


趙雲

「ああ、頼んだ!!」


関羽

「本当にこれで勝てるの?」


諸葛亮

「私の指示どうりに動いていれば勝てる。」


張飛

「まずは言う事を聞いてお手並み拝見するとしよう」


諸葛亮

「フッ」


諸葛亮は笑みを浮かべるのだったがそこで思わぬ来客があった


劉備兵

「あの〜桜花様に会いしたいと外套をすっぽりかぶった女性がいらして居ますが・・・」


桜花

「通して。」


趙雲

「桜花!?」


桜花

「大丈夫よ姉さんだから」


諸葛亮

「なに!?

お前等3人姉妹なのか。」


桜花

「ええ、上の姉さんと私は双子よ。

皆みて驚くわ瓜二つだから。

でも、姉さんは髪が長いから見分けつくようにはしているの。」


諸葛亮

「だからお前は肩から下に髪を伸ばさないのか・・・」


桜花

「ええ、その通りよ」


すると女性が入って来た


桜花

「久しいわね桜姉さん」


「クスクス、そうね。

会えて嬉しいわ。

長旅をして来た甲斐があるわ。

綺麗になったわね桜花、それと桜音。」


桜花

「有難う。」


桜音

「はい、桜姉さんも元気でなによりです。」


桜が外套を取ると本当に桜花と瓜二つだった


諸葛亮

「このタイミングで来たのは災難だなとしか言えない桜殿」


「えっ!?」


桜花

「諸葛亮、なに言ってんのよ。

桜姉さんは恐ろしく強く頭が良いのよ。

それに男を世話させたら天下一品なんだから」


「コラコラ、丸で化け物みたいな言い方はよしなさい。

お初にお目にかかるわ諸葛亮孔明殿。

それと劉備殿、趙雲殿、義理の弟とでも言っておきましょうか。」


劉備

「始めまして。」


諸葛亮

「桜殿は桜花より強いのか?」


「さあ〜、分からないわ。

あまり武をするの好きではないのよ私。」


趙雲

「腕試ししてはどうだ?」


桜花

「やめておいた方が身のためよ趙雲。

私は勘弁だからね。

姉さんとやりあうと2日は武か出来ないように動かなくなるから」


趙雲

「なっ!?

そんなに激しいのか・・・」


桜花

「姉さんの攻撃は重く早く急所を突いてくるから怖いの!

それに武器まで破壊された上に追い討ちのようにたたくからね。」


関羽

「怖い・・・」


「私の武の話しはそこまでにしてくれないかしら桜花。

ところで桜花は曹操の妻となったのにどうして趙雲殿と結婚したの?」


桜花

「曹操の時は無理矢理だったの。

好きでもなかったしだから逃げて趙雲と結婚したの」


「ふぅ〜ん、で、曹操は諦めたの」


諸葛亮

「諦めるはずがないでありろう

これから追われる身になる。」


「あらっ、大変ね桜花。」


桜花

「大変なのは姉さんも同じよ。

私達瓜二つなのよ!」


「あっ、そうだったわね。」


優しく笑う桜


諸葛亮

(何を考えている此奴、怖い女だ。)


桜花

「本当にしらばっくれるのは上手なんだから。」


「当たり前でしょう。

難儀な事は誰でもしたくないものよ。」


諸葛亮

(成る程、しらばっくれていたという事はかなり頭が良い使えるな。)

「兎に角長旅であったのであろう桜花、風呂に入ってもらい休んでもらえ」


「えっ、遠慮するわ。」


桜花

「どうして!?」


「今から戦場になる所にどうして居なくてはならないの。

妹が居るとはいえ私には関係ない事よ桜花。

おまけに私は貴方達に協力する気もない。

どうせ初戦は勝利できるはずよ臥龍殿がいるのだし。」


劉備

「そうですか、これから戦場になる所が嫌なら仕方ないですね。

妹君達は私達が必ずお守り通しますのでご安心して下さい桜殿。」


劉備は優しく笑う

諸葛亮は歯がゆく何か言おうとした時、桜花が止める


桜花

「諸葛亮待って。

姉さん使える者達か試しているのよ。」


桜が劉備の周りを一周するとニコッと笑う


「桜花、私に身軽な服をちょうだい。

気に入ったわ劉備!!

貴方を勝たせてあげる。

それと諸葛亮、軍議の内容を教えていただけるかしら。」


諸葛亮

「では後で私の部屋に来ると良い。」


「それと皆、私を呼び捨てで構わない。

私もそうするからね。」


桜花は桜を連れ部屋に行くのだった


劉備

「あれは皇帝の妻が務まるくらいの器がありそうだね〜」


諸葛亮

「桜花の双子の姉とはいえ少し私も怖く感じます。」


桜音

「えっ、姉さんは少しも怖くないわよ。

とても優しいのよ戦以外はね。」


諸葛亮

「その戦以外はねはなんです桜音様。

それが恐ろしく怖く感じますが。」


桜音

「クスクス、桜姉さんを戦場に出せば分かるわ、桜花姉さんより怖いから〜」


「コラッ、私を化け物の呼ばわりするのはおよしなさい桜音。

それと趙雲、少し身体を動かしたい付き合って欲しい」


趙雲

「えっ、桜花は」


「逃げたのよ困るわ。」


諸葛亮

「あー、桜、戦前なのだあまり激しい打ち合いはよしてくれ趙雲が使い物にならなくなったら困る」


「分かってるわよ」


言いつつも趙雲との手合わせは怖いものだった


桜はあまり動いているように見えないが趙雲は息が上がっていたのである。


「うーん、物足りないわ。」


ガシャン!!


剣と剣が重なったと思ったら趙雲の大剣が根元から折れた


趙雲

「ハッ!!

頑丈な大剣が折れた・・・」


「趙雲有難う。

貴方、大剣より槍の方が得意でしょう。」


趙雲

「確かに・・・」


「その癖が出ていたから。

私はお風呂に入ってくるわ」


桜が去ると諸葛亮は劉備に言う


諸葛亮

「怖い女です。

あれではどんなに大柄な力がある武将でも負けます。

武器を破壊する技を持っているとは・・・」


劉備

「でも味方なんだから安心だよね諸葛亮」


諸葛亮

「それもそうですね劉備様」


夏侯惇が許都から出陣する時に張遼が駆け寄ってきた


張遼

「夏侯惇殿〜」


夏侯惇

「なんだ張遼。」


張遼

「俺も行きます。

曹操様が付いて行けと言われました。」


夏侯惇

「好きにしろ!

俺だけでは力不足と言いたいのだな。」


張遼

「違います。

桜花様がもしや参戦されたら夏侯惇殿が大変だと曹操様はお気遣い俺を出したのです」


夏侯惇

「そうか、では付いて来い。」

(桜花をそれ程に側に置きたいのですね曹操様

確実に捉える方法か〜)


夏侯惇が出陣したのち曹操は煙草を吹かしながら少し考えて居た


曹操

(矢張り桜花を諦めるべきなのか・・・

無理矢理連れ帰ってもどうせ逃げることしか頭にないだろう・・・。

フッ、だがあって見ないと分からん

それに諸葛亮や趙雲に騙されているやもしれぬしな)


博望坡に近い場所まで進軍した夏侯惇は、趙雲が率いる劉備軍先鋒の数の少なさを見てますます自信を深めた。


夏侯惇

「フン、あれだけの数で俺に勝てると思っているのか皆生け捕りにしてやる」


そして自軍を急き立てて新野を目指したため、隊列は伸びきっていく。


後方を進んでいた副将の李典と于禁は、道幅が狭く、草木が生い茂る地形に入ったことに気づいた。


火攻めにはもってこいの地形である。


そこで急ぎ先頭の夏侯惇と張遼に追いつき、火攻めを警戒するように伝えた。


しかし、時はすでに遅し。


夏侯惇が進軍停止を命令し終わる前に両側の葦原から火の手が上がり、あっという間に火の海になったのである。


夏侯惇

「しまった罠だ!!

引け!!引け!!」


算を乱して逃げる夏侯惇軍の背後から馬首を返した趙雲と桜花が攻撃を仕掛ける。


博望坡まで戻ると兵糧が燃やされており、火の中から関羽が現れて行く手をふさいだ。


これはどうにか血路を開くことが出来たが、自陣に食糧を取りに戻っていた夏侯蘭は張飛に出くわし、あっけなく蛇矛で突き殺された。


夏侯惇

「桜花!!

曹操様が戻れと言っておられたぞ!!」


桜花

「断る!!

私は今や趙雲の妻だ!!」


夏侯惇

「クッ、次は覚悟しておくのだな・・・」


夏侯惇軍は命からがら帰って行くのだった


こうして劉備軍は大勝利。


諸葛亮の策略を目の当たりにした関羽と張飛は


張飛

「これぞまさに英傑」


関羽

「ええ」


その実力を大いに認めたのだった。


この少し後、病気がちだった劉表が死亡した。


後継者には長男の劉琦を指名していたが、蔡瑁らの陰謀により遺書が書き換えられ、蔡夫人の生んだ次男の劉琮が後継の座についたのである。


瑠璃

「姉さん時が動き始めましたね」


琥珀

「ええ、まだ派手な動きをしては駄目よ瑠璃」


瑠璃

「分かっています。

姉さんは諸葛亮殿が心配じゃないの」


琥珀

「心配は心配よ、でも今私が出て行っても仕方ない事です」


瑠璃

「なんと言ったらいいものか〜」


琥珀

「運命が動き出したのです。

それだけなのよ」


劉備軍を陰から見守る瑠璃と琥珀だった

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