第10話

そして、その日は突然訪れた。ある冬の日だった。


「二年五組の佐竹肇、至急職員室まで来なさい。荷物もまとめてくるように」

昼休み、いきなり呼び出しがかかる。何かやらかした覚えはないのだが――


とりあえず職員室へと向かう。そこで担任に告げられたのは衝撃の事実だった。



「あのな、さっき吉田の容体が急変したそうだ。親御さんから連絡が来て佐竹を呼んでほしいと言っていた」


話についていけない。というか理解したくない。


「とりあえず病院に行ってやれ。公欠ということにしとくから」


「わかりました」

短く答える。



無我夢中で病院までの道を駆ける。とにかく危機感だけはあった。


「来てくれたか」

と男の声がする。


「香澄さんのお父様ですか?」


「そんな畏まらんでいい。隆三さんとでも呼んでくれ」


「分かりました、隆三さん。それで香澄さんの容体は……」


「今は安定している、が長くは持たないだろうと医者が言っていた。」


そんなことがあるのか――少し狼狽する。自分の周りにこんなことが起きるとは思っていなかった。


「どうか最後まで香澄のそばにいてやってくれ。それが香澄の願いだ」


「分かりました」

僕はどうすればいいか分からなくなった……

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