第2話

窓の外を見やると、ビルの隙間から鉛色の空が見えた。


そういえばこれぐらいの時期に……



「……お出口は右側、トキワ線はお乗り換えです。」

考え事をしているうちに、いつの間にか乗り換えの駅に着こうとしていたらしい。


ターミナル駅特有の人ごみの中、飲みかけのコーヒーを片手に持ちながら目的のホームへと向かう。


どうやら次の電車はまだらしい。

手に持つ缶が邪魔になってきた僕は、中身を一気に飲むと、その缶をゴミ箱に捨てた。


――少し気持ち悪い。


一気飲みしたのはさすがに無茶すぎた。

気持ち悪さを抑えながら、ホームで電車を待つ。


しばらくすると、すこし旧式の電車が到着した。

「懐かしい車両だな……」

とひとりごちる。

せっかくだからさっき思い出しかけていた思い出に浸ろう。

まだ目的地には着きそうにない――



ある春の日だった。やることもなくただぶらぶらと駅前の街を歩いていた僕は、携帯を片手にきょろきょろしている女の子を見つけた。


下心を隠しながらその子に近づくと、彼女も僕に気がついたのか話しかけてきた。



「あの、地元の方ですか?」かわいらしい声。

自分のことをやさしい人だと思っている声。


その声で僕は邪な心を捨てることを決めた。


「そうだよ。こんなところに見慣れない子がいるのは珍しいな、と思って」

平静を心がけてはいたが、すこし声が震えていたかもしれない。


「今年ここに引っ越すことになったんだけど、土地勘がないから迷っちゃって……。っと、私は香澄。古田香澄。あなたは?」


「佐竹肇。今年で高校二年生だ」

とすこし素っ気なく返す。


緊張している証拠だ。


「肇くん、覚えたよ。同い年で良かった~ 年上だとどうしようとか思っちゃった」

と笑う彼女。そして言葉を続ける。



「この街を案内してください!」

こうして僕たちの関係は始まった――

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