第2話
窓の外を見やると、ビルの隙間から鉛色の空が見えた。
そういえばこれぐらいの時期に……
「……お出口は右側、トキワ線はお乗り換えです。」
考え事をしているうちに、いつの間にか乗り換えの駅に着こうとしていたらしい。
ターミナル駅特有の人ごみの中、飲みかけのコーヒーを片手に持ちながら目的のホームへと向かう。
どうやら次の電車はまだらしい。
手に持つ缶が邪魔になってきた僕は、中身を一気に飲むと、その缶をゴミ箱に捨てた。
――少し気持ち悪い。
一気飲みしたのはさすがに無茶すぎた。
気持ち悪さを抑えながら、ホームで電車を待つ。
しばらくすると、すこし旧式の電車が到着した。
「懐かしい車両だな……」
とひとりごちる。
せっかくだからさっき思い出しかけていた思い出に浸ろう。
まだ目的地には着きそうにない――
*
ある春の日だった。やることもなくただぶらぶらと駅前の街を歩いていた僕は、携帯を片手にきょろきょろしている女の子を見つけた。
下心を隠しながらその子に近づくと、彼女も僕に気がついたのか話しかけてきた。
「あの、地元の方ですか?」かわいらしい声。
自分のことをやさしい人だと思っている声。
その声で僕は邪な心を捨てることを決めた。
「そうだよ。こんなところに見慣れない子がいるのは珍しいな、と思って」
平静を心がけてはいたが、すこし声が震えていたかもしれない。
「今年ここに引っ越すことになったんだけど、土地勘がないから迷っちゃって……。っと、私は香澄。古田香澄。あなたは?」
「佐竹肇。今年で高校二年生だ」
とすこし素っ気なく返す。
緊張している証拠だ。
「肇くん、覚えたよ。同い年で良かった~ 年上だとどうしようとか思っちゃった」
と笑う彼女。そして言葉を続ける。
「この街を案内してください!」
こうして僕たちの関係は始まった――
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