3話 決断

『貯金あったっけ』



そう思い通帳を確認した。


お金はあったが、往復すると生活費が底をつきそうな状態だった。


俺は、迷った。


今までに無いくらい真剣に。


そして思った。



『人生が変わる最後のチャンスかもしれない。』



そして決めた。



「行こう。」



そこからが早かった。


新幹線のチケットをとった。


パソコンを売った。


安かったが少しは旅行の足しになるだろうと思って。


鞄を引っ張りだし、そこに最低限必要なものを詰め込んだ。



『もう二度とここには帰ってこないかもしれない』



ふとそう思った。


なぜか涙が止まらなかった。


就職仕立てでつらかった日々のこと。


少しずつ慣れて毎日が楽しかったこと。


はじめて友達ができたこと。


将来について考えていた時のこと。


リストラされて社会の厳しさを味わったこと。


ボロアパートだが、たくさんの思い出があった。



『ありがとう。』



心の中でつぶやいた。

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