第五話 湖
水面に、月が揺らいでいる。
風が吹くたびに波が起こり、水面の月は千々に裂かれ、また集う。
「あたりに、魔物の気配はありませんね」
広い湖だった。
平坦な草原に囲まれたその様子は、湖というよりも巨大な水たまりのように思える。月と星に照らされきらきらと輝き、透明の美しさを醸し出している。
「……で、では、入りましょうか」
少し言いよどみ、ヒナは自らの服を脱ぎ始めた。ヒナの服装は、シンプルなシャツとパンツ。対する私も、同じだ。目覚めたときから着ていた服のボタンに、手をかけ、外す。
「っ……」
ヒナの顔が、背けられた。
心なしか頬が紅潮しているようにも見える。
ホックを外し、下着を脱ぎ、手ごろな大きさの石の上に置く。
水面に映る私の身体は、しなやかで、多少、貧しかった。
「少し、冷たいので……」
同じく服を脱ぎ終わったヒナが、湖の端に佇む。
整った容姿。金色の髪に、金色の眼。
月明かりに照らされるその姿は神秘的で、同性ながらに美しく感じる。ずきり、と頭の隅に疼痛が生じる。心がざわつき始める。だが、すぐに治まった。
「ヨミ?」
「いえ、なんでもないの」
こちらを見つめるヒナへ、そう言った。
ヒナの身体は、月光を注がれて綺麗で、それに、
「……」
豊かだ。なにがとは言わないけれど。
「……相変わらず、ヨミはスタイルが良いですわね」
「そうかしら」
ヒナの言葉には、称賛しか込められていない。
「ヒナ、あなたも十分すぎるほど、その、立派だわ」
私の言葉に、ヒナは「え、ええ……」と胸元を隠すような仕草をする。恥ずかしくなったらしい。腕で寄せられ、豊かなそれは更に豊かになった。ちょっと憎たらしくなった。揉んでやろうかしら。
「時間はたっぷりありますので、気の向くまで身体を清めましょう」
「ええ、そうね」
そうして、私達は
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