海と水着

第32話 部屋

 彼女とのデート。本当はいろんな所に二人で行きたいと思っている。

 でも、暑いからどうしても彼女は薄着になってしまう。それはつまり、露出が増えてしまうということで、と言うことは、他の男にも色々と見られてしまう、そんな可能性が……。それが嫌で、だから、つい、デートは俺か彼女の家、というのが多くなってしまっている。

 今日もそんな感じで二人で彼女の部屋にいる。

 彼女のお母さんも家にいる。だから、そういうことをするつもりはない。いや、仮にいたとしても、するつもりはないんだけれど……。

 隣の彼女を見ると、Tシャツにハーフパンツ。本当に部屋着、そんな感じの格好だ。いつからだろう。こうやって、自然体の彼女を見せてくれるようになったのは。俺が特別、そんな気がしてすごい嬉しかった。


「メーちゃん、好きだよ」


 だから、思わず言ってしまった。


「え?えぇぇ?た、拓斗くん?急に何?」


「うん、何か、メーちゃんを見てたらそう思ったから、言っただけ。ダメ?」


「ううん。ダメ、じゃないけど……。その、わたしも、拓斗くんのこと、好きだよ」


 すごい照れて、恥ずかしそうにしている彼女がすごい可愛くて、抱き締めたくなった。でも、ここまで暑い中、自転車で来たから汗臭くないだろうか?今はクーラーが効いていて汗は引いたけれど、それでも……。

 悩んだ末に俺はそっと、彼女の手を握るだけにした。彼女も俺の手を握り返してきてくれた。

 彼女と出会って一年以上。いや、もっと昔に出会っていたから、再会してから、一年以上。そして、付き合い始めてから四ヶ月以上。

 変わったところはあるけれど、それでも、彼女が可愛くて、素敵で、たまらなく愛おしいのは今も変わらない。こんな日がいつまでも続けばいい、そんな風に思っていた。

 けれど、その後に彼女が突然言った言葉で俺は……。


「ねぇ、拓斗くん、海とか、行きたいね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る