花火、二人の夜
第27話 買物
夏休み、最初のデートの帰り、駅前のコンビニに寄った。そして、レジの前の棚に並べられていた花火を見て、彼女が俺に提案をして来た。
「拓斗くん、今度一緒に花火しようよ。その、今日は無理かもしれないけど、今度。どうかな?」
「俺はいいけど、夜だよね?お母さんか心配するんじゃない?」
「うぅ……。大丈夫、だよ、きっと……。友達と、って言うし……」
「でも、それって、騙すことになるんじゃ……」
そこまで言って俺は気づいた。彼女が残念そうに落ち込んでいることに。
俺は彼女と二人で花火をしているところを想像した。暗い中、線香花火に照らされる彼女の横顔。そして、その明かりもすぐに消えてしまう。彼女はそれを名残惜しそうに見つめ……。
そんな姿を俺は見てみたいと思った。例え、誰かを騙すことになっても。だから、
「でも、俺もメーちゃんと花火したいから、今回は聞かなかったことにするね」
「うん!じゃぁ、いつにする?」
「思いきって、きょう、とかは?やっぱり無理かな?」
「ちょっと待っててね。今から電話してくる」
そう言って彼女はコンビニの外に出ていった。中から眺めていると、彼女は必死に説得をしているようだった。
そして、しばらくして戻ってきた彼女は嬉しそうにしていて、俺の元に来る前に花火を手に取っていた。
俺は彼女に近づき、「どうだった?」と、半ば確信しながら聞いてみた。
「うん。大丈夫だったよ。あんまり遅くならないように、って言われちゃったけど」
「よかった。それじゃ、どれ、買おうか?」
「ん~、わたしはこれがいいかな」
彼女が手にしているのは線香花火ばかりのおとなしいもの。それは彼女にぴったりで、俺たちはそれと飲み物、それから少しの食べ物を買ってコンビニを出た。
コンビニの前で軽い食事をしていると、彼女が思い出したように聞いてきた。
「あ、そう言えば、拓斗くんは大丈夫なの?お母さんとか心配しない?」
「たぶん、大丈夫じゃないかな。遊んでたら遅くなった、って言えば」
「ダメ。ちゃんと言わないと。お母さん、心配するかもしれないよ?」
そんな風に言われ、俺はスマホを取り出し、親に電話をした。けれど、結果は予想通りで『わざわざそんなことで電話してこなくてもいいのに。あんまり羽目外しすぎないようにね』とだけ言われた。
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