第25話 引留

 あっという間に時間が過ぎ、フリータイムで入ったはずなのに、すぐに終わってしまった。

 二人の時間ももう終わりか、そんな風に名残惜しく思いながらも二人で帰路についた。

 そして、駅に着き、外に出ると彼女が足を止めた。ずっと手を繋いでいたから彼女に手を引かれるように俺も足を止めた。


「メーちゃん?」


「拓斗くん……帰りたく、ない……」


 振り返り聞くと、彼女は熱っぽい表情で俺を見つめていた。その目は何かを求めているかのようでもあり……。

 俺は、今日男になる?そんな妄想をついしてしまったけれども……


「今日、拓斗くんと一緒ですっごい嬉しかった。このネックレスも……。本当に、夢、みたいで……。だから、帰っちゃうと、本当に夢になっちゃいそうで……」


 と、彼女は言った。

 俺は、さっきまで考えていたことを恥ずかしく思った。そして、そんなことを言う彼女を愛しく思い、周りに人がいるのにもかかわらず俺は彼女を抱き締めた。


「拓斗、くん……?」


「夢じゃないよ?」


「……うん」


「俺はここにいるよ。家に帰っても、俺とメーちゃんはずっと、一緒だから」


「うん……」


 俺はゆっくりと彼女の身体を離し、


「でも、もう少し、一緒にいようか?」


 そう言うと、彼女は嬉しそうに、はにかみながらも頷いた。



 駅前のファーストフードで彼女の親から電話が来るまでドリンク一杯でとりとめのない話をしていた。

 そして、別れ際、彼女が


「今日は本当にありがとう」


 そう言って軽く背伸びをしながら、俺にキスをした。それは一瞬で、突然のことだったから、俺は驚いたけれど、彼女の幸せそうな、赤く染まった表情を見て、俺は思わず彼女を抱き締めた。そして、


「また、学校で」


 と言った。彼女は俺の腕の中で小さく頷いた。

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