第21話 修復

 どうしたら彼女の不安を取り除けるのか、すぐにいい考えは出てこなかった。そもそも、俺が紛らわしい言い方をして誤解させてしまったことが原因な訳で……。

 だったら、俺の気持ちを誤解のないようにしっかりと伝えれば大丈夫、なのか……?

 それ以外に方法は思い付かない。なら……。


「メーちゃん、俺はメーちゃんのことが大好きだよ。今も、これからもずっと。嫌いになるなんて未来、俺には想像ができない。きっと、俺らが出会うのも全て、運命なんだってそう俺は信じてる」


「っく……、本当に……?」


 彼女は涙を流しながら聞いてきた。俺は、それに答える代わりに彼女を抱き締めた。

 そして、視界の隅に彼女のバッグが見えた。それには最初のデートの時に買ってあげたキーホルダーがついていた。俺は彼女の身体を少し離し、キーホルダーを指差して言った。


「メーちゃん、あのキーホルダー、覚えてる?」


「うん……。だって、拓斗くんとの、大事な、思い出、だから……」


「あれと同じ。俺とメーちゃんはどんなに離れていても二人で一人。心は繋がっている。これから先、どんなことがあっても」


「…………うん、そうだよね……。拓斗くん、ごめんね。わたしと拓斗くんは二人で一人、だもんね」


 彼女は泣き止み、笑顔を見せてくれた。


「俺の方こそ、ごめん。変な言い方して、メーちゃんを悲しませて、泣かせて……」


「ううん。わたしが悪いの。だって、拓斗くんのこと、信じてあげられなかったんだから。拓斗くんと付き合ってるのが夢みたいで、だから、夢が覚めちゃう、そう思っちゃって……。拓斗くんの気持ち、信じてあげられなかったわたしが悪いの。だから、本当にごめんなさい」


「違う。心配してきてくれたのに、無神経に帰って、なんて言った俺が悪い。メーちゃんは何にも悪くないよ。本当にごめん」


「違うよ、わたしが悪いんだよ……」


 彼女の顔から笑みが消えてしまった。本当に申し訳ないような感じで……。

 彼女の罪の意識を消す方法、これがベストかは分からない。けれど、言い考えを思い付いてしまった。だから……


「じゃぁ、メーちゃんに罰を与えるね?」


「え……?うん」


 不安そうに見つめる彼女。俺は立ち上がり近づくと、優しく彼女にキスをした。


「なん、で……?」


 意味がわからない様子で彼女は呆然としていた。だから、俺はその意味を教えてあげることにした。


「風邪、うつすことにした。だから、これが俺からメーちゃんへの罰」


「じゃぁ、もっと、もっと拓斗くんと一緒にいて、ちゃんとうつしてもらわないといけないよね?」


 そう言って彼女は抱きついてきた。


「うん、そうだね。もっと、一緒にいないとね」


 違う。これは俺への罰だ。彼女に風邪をうつしたくなんてない。けれども、ずっと一緒にいたらうつしてしまうかもしれない。

 だから、これは彼女を傷つけた俺への罰なんだ。


 彼女はとても幸せそうに俺を見つめ、瞳を閉じた。俺はもう一度、彼女にキスをした。

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