第19話 来訪

 ピンポーン、とインターホンが鳴り、俺は目が覚めた。まだ若干思い身体を起こし玄関を出ると、そこには立ち去ろうとしている小柄な制服姿の髪の長い女子がいた。

 俺が見間違えるはずもない。彼女が来てくれていた。


「メーちゃん、待って」


 俺が彼女の背中に向かって声をかけると、彼女は振り返った。


「た、拓斗くん、ダメだよ、寝てなきゃ」


 そして、俺の顔を見や否や、慌てたようにそう言った。そして、「お邪魔します」と遠慮がちに言って、俺を部屋まで引っ張っていった。

 俺は突然のことに頭がついていかないまま、部屋に連れていかれ、ベッドに押し倒された。

 彼女を見上げると、少し怒っているようだった。


「あの、メー、ちゃん……?」


「拓斗くんは病人なんだよ?寝てなきゃダメだよ。早く直して、学校に来てくれないと……わたし、寂しいよ……」


 確かに最初は怒っているような口調だった。けれど、途中から声が潤んでいるように感じた。俺は彼女の手を握るとこう言った。


「ごめん。でも、誰か来たみたいだから出なきゃって思って」


「今日も、1人なの?お母さん、いないの?」


「うん。急に仕事は休めないらしいから。だから、メーちゃんが来てくれて嬉しかったよ」


 俺が笑いかけると、彼女はその場に座った。そして、不安そうな表情で俺を見つめてきた。


「今日ってずっと1人だったんだよね?なら、拓斗くんも寂しかった?」


「うん、寂しかった。メーちゃんに会いたかった。家で1人なんていつものことなのに、すっごい寂しかった。だから、ありがと」


「わたしもね、拓斗くんがいなくて寂しかったから、学校終わってすぐに会いに来たんだよ。でも、拓斗くんが寂しかったなら、学校なんてサボっちゃえばよかったかな?」


 彼女の言葉に驚いた。学校終わってすぐ?もう、そんな時間なのか?

 俺はスマホを取ると、時間を確認した。本当にそんな時間だった。

 そして、気付いてしまった。彼女からたくさんのメッセージが届いていることに。

 そこには休み時間の度に送られてきた俺を心配する言葉がたくさん並べられていた。

 俺は胸の中が熱くなった。そして、起き上がり、彼女をギュッ、と抱き締めた。


「拓斗くん、その、嬉しいけど、寝てなきゃダメだよ……」


 その言葉の通り、彼女は俺を拒むことはしなかった。けれど、彼女を心配させてくなかったから、俺はそのままベッドに横になった。そう、彼女を抱き締めたまま。

 彼女は小さく「きゃっ」と声を上げ、俺に覆い被さるような形で倒れて来た。


「今日の拓斗くん、大胆だよ……。わたし、その……」


「寂しかったから。だから、メーちゃんが来てくれて、メーちゃんに会えて、すっごい嬉しかったから」


「ぁ……。じゃぁ、今日はずっと一緒にいてあげるね?」


 そして彼女は俺の狭いベッドに上がってきた。シングルベッドだから、二人が横になるには狭い。けれど、それだけ彼女を近くに感じて、それがすごい嬉しかった。

 彼女は俺を見つめると、瞳を閉じた。俺も瞳を閉じ、彼女の唇に優しく触れようと近付き…………

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