5月、誤解とすれ違い
第18話 自室
静かだ。
少し前までは小学生の騒ぐ声とかも聞こえていた。けれど、今は外から聞こえる音は少なくなった。
今日は学校は休みではない。本当なら俺も今頃は学校にいるはずの時間。けれど、風邪を引いてしまい、俺はベッドで横になっていた。
大した風邪じゃないから学校に行きたかった、彼女に会いたかったのに、母さんが無理矢理休ませて……。
はぁ、休みの日とかに彼女に会えない日は今までにもあった。なのに、なんでこんなにも彼女に会いたいんだろう……。寂しく感じるんだろう……。
そんなことを考えていたら、スマホが鳴った。手を伸ばし、確認すると、彼女からだった。
『拓斗くん、大丈夫?』
たったその一言のみのメッセージ。思わず電話を掛けたくなったけれど、もうすぐ授業が始まるから邪魔をしないように、我慢して返信を打った。
『うん、大丈夫。大したことないから。母さんが休め、ってうるさくて休みにされただけだし。』
『よかった。でも、しっかりと寝て、早く治してね。拓斗くんに会えないのは、寂しいから……』
少し間を置いてきた彼女からの返信。彼女も俺と同じように寂しい、って思ってくれてる。そう思ったら我慢ができなくなった。
『俺も寂しい。メーちゃんに会いたい。メーちゃんの声が聞きたい。メーちゃんと一緒にいたい。』
彼女からの返信はどれだけ待っても来なかった。
こんなこと言って迷惑だった?いや、気付けばもう授業が始まっている時間。彼女は真面目に授業を受けていてそれで……。
それが当たり前で、自然なことなのは分かっている。分かってはいるけれど……。
寂しさに押し潰されそうになったから、それから逃げるために俺は無理矢理眠ることにした。
目が覚めると、彼女からのメッセージがいくつか来ていた。
『そんなに言われちゃうと照れちゃうよ……。でも、わたしもおんなじだよ。だから、早くよくなってね?』
『拓斗くん、寝てるのかな?ちゃんと温かくしてる?』
『拓斗くんのいない学校、すっごく長く感じる。拓斗くん、起きたら返事欲しいな……。あ、でも、無理はしなくてもいいからね?』
『今日はこの前みたいにお家に誰もいないのかな?それとも、お母さんもお仕事休んでるの?もし1人だったら、心配だよ……。』
『返事がないのは寝てるから?それとも、できないくらい辛いのかな?心配だけど、邪魔しないようにメール、控えるね?』
彼女の言葉が嬉しくなり、でも、心配させたことに申し訳なくなって俺は慌てて返信を打った。
『大丈夫だよ。今まで寝てただけだから。全然平気。家には俺1人だけど、単なる風邪だから、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。メーちゃんからのメールで元気もらえたし。』
そして、彼女からの返信にすぐ返せるように俺は寝ないで起きていようとした。けれど、なにもせずに横になっていたからか、俺は気付けば再び眠りに落ちていた。
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