第17話
「これが答えじゃ、ダメかな?」
俺がそう聞くと、彼女の両目から大粒の涙が幾つも流れ始めた。
彼女はあんなこと、してほしくなかった?嫌だった?せめて、する前に一言何かを言うべきだった?
「十分、だよ……。十分すぎるよ……。拓斗くんの気持ち、伝わったよ……」
「じゃぁ、何で泣いてるの?」
「え?……何で、だろ?嬉しいのに……。うん、嬉しいから、かな」
彼女は俺の言葉で初めて涙を流しているのに気づいたようだった。
俺が彼女の涙を親指で拭うと、彼女は嬉しそうに頬をほころばせた。そして、唇を俺の方へ差し出し、瞳を閉じた。
俺はそれに応えるように瞳を閉じ、二度目のキスをした。
背中に回された彼女の腕に力が込められるのを感じる。
唇から、彼女の想いが伝わってきている気がする。
少ししょっぱい二度目のキスは俺を幸せな気分にしてくれた。
ゆっくりと離れると、彼女は照れた様子でありながら、とても幸せそうだった。きっと、俺も同じような表情をしてるんだろうな、って思った。まるで、鏡写しのように。
「マンガとか、ドラマでキスしてる理由が分かった気がする……。だって、拓斗くんの気持ち、伝わってきたし、すごい、すっごい幸せな気分になっちゃったから……」
彼女も俺と同じなんだ。気持ちが伝わって、幸せな気分に……って、え?もしかして……?
「ねぇ、メーちゃんもキス、初めてだった?」
「……うん」
彼女の言葉からそうじゃないか、って思ったら本当にそうだった。だから、俺は焦った。もっと、ムードとかそういうのが必要だったんじゃないか、って。
「その、ごめん」
「え?」
「あの、ファーストキスって大事かな、って。だから、もっとちゃんとした方がよかったかな、って。大事な思い出にしてあげられなかったかな、って。だから、ごめん」
俺が不甲斐ないばっかりに彼女の大事な思い出になるはずのものが一つ、減ってしまったんじゃないかって、そんな気持ちで俺は謝った。けれど、
「ううん。大事な思い出、だよ?だって、拓斗くんがこんなにもわたしのこと、想ってくれてるって分かったんだから。それに、その、相手が拓斗くん、だから……」
最後は消え入りそうな声だった。それでも俺の耳にはしっかりと届いて……。
彼女は俺をまっすぐ見つめていて。
俺も彼女をまっすぐ見つめ返して。
そして、今度はどちらからともなく瞳を閉じ、唇を合わせた。
そんな中、俺は思った。
眼鏡っ娘の彼女が可愛すぎる!
──と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます