第14話 下校
少し、気まずい雰囲気のまま、俺は彼女と一緒に学校を出た。
ゆっくりと自転車をこぎながら進んでいると、交差点に着いた。この交差点を直進すれば駅に出る。そして、俺の家に向かうにはここを左折しないといけない。
彼女との時間が名残惜しく、無意識に信号の手前で俺は止まってしまった。
「拓斗くん?」
彼女が首を傾げ、不思議そうな顔をしている。信号が青なのに止まっているのだから当たり前だろう。
「その、俺の家、あっちなんだよね……」
視線を逸らして、家の方を俺は指差した。彼女は「あっ」と小さく声を上げ、寂しそうな表情をした。
彼女も俺とまだ一緒にいたい、そう思ってくれてる、そう感じた。だから、
「その、うち、来る?」
思いきって聞いてみた。彼女は嬉しそうな、でも少し不安そうな顔をした。
「でも、その、わたし、変じゃないかな?拓斗くんのお母さんに、その、嫌われちゃったり、しないかな……?」
そして、服や髪を整えながら恐る恐るといった感じで聞いてきた。
そんな様子が可愛かったけれども、俺は彼女を安心させるために、
「大丈夫だよ。うち、共働きだし、今は誰もいないから。それに、もしいたとしてもメーちゃんなら嫌われることなんてないから」
そう伝えた。でも、その瞬間、彼女は顔を真っ赤にしてしまった。しかも、それだけでなく、下を向いてしまって、どこか落ち着かない様子だった。
どうしたのかな、と思ったけれども、付き合っている二人が家族のいない家にいく、この状況って……。
「ごめん!その、下心、っていうか、その、あの、そういうつもりとかじゃなくて、その、ただメーちゃんともっと一緒にいたいだけで……」
「うん、その、分かってるよ。拓斗くんが本当にそう思ってること。あの、わたしの方こそ、ごめんね。うぅ……、わ、わたし、そういうこととか、いつも考えてる訳じゃないからね?」
俺が本音を口にすると、彼女も安心したように、でもさらに顔を赤くしてそう言った。
けれども、俺はなぜか彼女を直視できなくなっていた。
艶のある可愛らしい唇。豊かな胸。短いスカートから伸びるキレイな生足。
それらがとても扇情的に見えてしまって……。さっきまでは気にならなかったのに、どうしても……。
俺は邪念を払うように頭を軽く振ると、
「うん。その、近くに公園もあるし、そこでゆっくりする?」
と、別の提案をした。それでも彼女は「拓斗くんの家がいい」と言ってくれて、俺は嬉しくなった。けれど、彼女の嫌がることは絶対にしないでおこう、そう心に決めた。
彼女をリビングではなく、俺の部屋に案内して、俺は飲み物を取りにキッチンへと向かった。
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