第13話 強風

 始業式と簡単なHRも終わり、帰り支度をしていると、スマホが震えた。画面を見ると、彼女から『今日は一緒に帰ろ?』とのメッセージ。

 俺は今年も隣の席になった彼女を横目で見ると、彼女も俺の方を向いていたから小さく首を縦に振った。その途端、彼女が嬉しそうに笑った。

 ヤバい。俺の彼女、超可愛い。自慢したい。でも、「付き合ってるの、恥ずかしいからみんなには秘密にしよ?」って彼女が言っていたから、我慢するしかない。


 クラスメイトたちの大半が帰り、人が少なくなった頃、俺たちは二人で教室を出た。そして、そのまま校舎から外へ出たとき、急に強い風が吹いた。その瞬間、


「きゃっ」


 彼女の小さな悲鳴が聞こえた。

 彼女の方を見ると、手で押さえてはいるものの、スカートが風でめくり上がり、足の付け根の辺りまでが見えていた。

 制服だと私服の時よりも短くなっているスカート。そこから伸びる白くて、美しい曲線。それが今では見たこともないところまでが露に……。


「た、拓斗くん、見えた……?」


 彼女のきれいな足を凝視していた俺はその言葉で我に返った。

 彼女を見ると、顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにしている。

 俺は、何をしていたんだろう……。彼女のスカートがめくれ、それを凝視?最悪だ。

 俺は彼女を安心させるために、正直に告げた。


「見えてないよ。メーちゃんのキレイな足しか」


「……バカ」


 それなのに、彼女はうつむいたままそう言って、俺の胸をコツン、と叩くと足早に駐輪場へと1人で向かっていった。

 何か、間違えた?って当たり前じゃん!キレイな足しか、ってそんなこという必要ないじゃん!見えてないって言うだけでよかったのに!足だけでも見られてたら嫌かもしれないじゃん!

 俺は慌てて彼女を追いかけた。


「メーちゃん、待って」


 追い付くと同時、腕を掴んでそう言った。

 振り返った彼女は未だ顔を真っ赤にしていて、でも、それは恥ずかしさからというよりは……。


「……拓斗くんのバカ。そんなこと言われちゃったら恥ずかしかったのに、嬉しくなっちゃう……。また、風吹かないかな、とか考えちゃう。でも、他の人には見られたくなくて……」


「それって、俺には見せたい、ってこと?」


「え?ち、違う!そうじゃなくて、その、見られてもいいかな、ってだけで、見せたいとかそんなことは…………その、見たいの?」


「え?その、見たくないって言ったら嘘になけど……、でも、メーちゃんが嫌なら見れなくてもいいよ」


 彼女が怒っているわけではないことに安心したけれど、突然の質問に俺は驚きを隠せなかった。でも、俺は正直に答えた。

 彼女は嬉しそうに「うん、ありがと」と答え、二人で駐輪場へ向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る