4月、ファーストキス
第12話 学校
春休みが終わって、今日から新学期。
俺は不安な気持ちで学校に着いた。クラス分けの掲示板に向かう足がどうしても重くなる。
三学期の終業式の日に告白をして付き合うことになった可愛い彼女、
重い足をなんとか動かし、駐輪場を出ようとしたとき、スマホが鳴った。
スマホを取り出し、画面を見ると、彼女から写真付きでメッセージが来ていた。
『今年も同じクラスだよ。また一緒だね。』
その言葉の通り、写真には俺と彼女の名前が横並びで写されていた。
俺は心の中でガッツポーズを取って、急いで彼女に返信を打った。
『一緒のクラスでよかった。今年も一年、よろしくね。』
『うん!実はね、わたし、拓斗くんと別のクラスになっちゃったらどうしよう、ってすっごい不安だったんだ。』
『それ、俺も。だから、掲示板を見に行くのがすごい怖かった。今もまだ駐輪場にいるし。』
既読は付いたのに、なぜか返信が来なくなった。友達と話でもしてるのかな、と思っていたら、
「いつまでもこんなところにいないで教室に向かいなさい」
そんな声が届いた。学校に着いてからかなりの時間、ここにいる。もう遅刻ギリギリか、と思い俺は慌てて顔を上げ、謝ろうとしたら……、
「え?メーちゃん?」
そこには彼女がいた。
確かに聞こえていたのは透き通るような美しいソプラノボイス。正真正銘彼女の声だった。けれど、普段とは違う言葉使いだったから、つい違う人かと……。
「えへへ、迎えに来ちゃった」
俺がそんなことを考えていたら、彼女がはにかみながら、嬉しそうにそう言った。
久しぶりに見る彼女の制服姿は私服姿と違って、新鮮に見えた。つい数週間前まではこの姿の彼女しか知らなかったはずなのに。
思えば、春休み中、何度も彼女とデートしていたような気がする。もしかしたら、半分以上の日、一緒にいたかもしれない。
俺がそんなことを考えて黙っていたから、彼女は不安そうな顔をした。
「あ、ごめん。その、制服姿久しぶりに見たなぁ、って思って。それで、いっぱいデートしたなぁ、って思い出しちゃって」
「不思議だね。前までは制服姿くらいしか知らなかったのに、今は制服だとちょっと変な気分。その、それだけ拓斗くんと一緒にいたんだよね、わたし……」
頬を赤らめ、そんなことを言いながら俺を見上げてくる彼女がとても可愛くて、愛しくて……。俺は我慢できずに周囲を見渡して誰もいないことを確認した後、彼女を抱き締めた。
「た、拓斗くん、ここ、学校だよ?誰かに見られちゃったら恥ずかしいよ……」
口ではそう言いながらも、彼女の腕は俺の背中に回されていた。
「大丈夫。誰もいないこと確認したから」
俺がそう言うと、彼女の腕に力が込められたのが分かった。
「拓斗くん、大好き」
「俺もメーちゃんのこと、好きだよ」
何度も繰り返しているその言葉。けれど、想いは色褪せることなく、口にする度に強くなっていっているような気がした。
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