第10話 映画

 その後、ゲームをしばらくしてファーストフードで昼食を食べてから、映画館に戻ると、ちょうど入場開始が始まっていた。

 すでに薄暗い中、購入したペアシートに座ると、彼女との距離が近くて、緊張してきた。

 すると、彼女が俺の肩に頭を乗せてきた。


「その、始まるまでこうしててもいい?」


 耳元で聞こえる彼女の小さな囁き声。それに心臓が高鳴るのを感じた。

 俺は「うん」と小さく答え、彼女の手を握った。彼女も握り返してくれて、このまま時が止まってしまえばいいのに、とそんなことを思ってしまった。

 けれど、しばらくすると映画が始まってしまい、彼女は離れていってしまった。それを名残惜しくも感じたけれども、手だけはしっかりと繋がれたままだった。


 映画は読んだことはないけれど、少女マンガの王道、そんな感じのラブストーリーだった。

 だから、当然、キスシーンなどもあって、その瞬間、思わず俺は彼女の方を見た。すると、彼女も俺の方を見て目が合った。

 けれど、それは一瞬で、彼女は照れたように正面を向いてしまった。俺はその後も彼女の横顔を、いや、唇を見続けていた。

 いつか、俺もその唇に触れる日が来るのかな、そんなことを思いながら……。


 映画が終わり、彼女がお手洗いに行っている間、俺は売店に戻り、キーホルダーを購入した。

 買い終わるのとほぼ同時に彼女も出てきたから、ペアになっているキーホルダーを取り出し、片方を彼女に渡した。

「ずっと一緒だから」

 と、映画の中の台詞と一緒に。

 このキーホルダーのモチーフは二つが一緒になることで初めてちゃんとした形になる。だから、映画の中でもどんなに離れていても俺たちは繋がっている、そんな想いが込められているものだ。

 だから、俺もそんな想いを込めて彼女に渡した。


「うん、離れててもずっと、繋がってるんだよね?」


「うん」


「わたし、今、すっごい幸せ、だよ?幸せすぎて怖いくらい……」


「俺もメーちゃんとこんな風にいれて幸せだよ」


「それに、これからも、ずっと、なんだよね?」


「うん」


「拓斗くん、大好き……」


「俺もメーちゃんのこと、好きだよ」


 彼女の頬を流れる綺麗な滴を俺は指で掬った。

 彼女は本当に幸せそうに微笑みながら、俺があげたキーホルダーを握りしめていた。

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