武士道VS騎士道 ルシード視点

 ヴァンが扉に消えて数分。オレ達はソファーで座りながら帰りを待っていた。


「ヴァンにいちゃん大丈夫かな?」


「あいつは死なんよ。お前は自分の心配だけしな」


「アジュの言う通りだ。君とシンシアさんを守り抜くことが、オレ達の勝利だ」


 メアは落ち着かない様子で時計とオレ達を見ている。子供に敵地でのんびりしろというのも酷な話だが、オレは子供が楽しめるような話題を思いつかん。だがこの子に少しでも笑顔を……最悪アークを使うしかないか。


「ルシード、余計なこと考えているの丸わかりだぞ」


「余計ではない。大切なことだ」


「大切……何かわかったんですか?」


 カムイはこの戦場について聞いているのだろう。アジュは妙に勘がいいので、オレの悩みに気づいているはずだ。だが……。


「ちなみに俺はガキの相手なんざできん」


 こいつの方が口下手だから無意味だ。


「ういっすー」


 ヴァンが帰ってきた。多少汚れてはいるが、大怪我はしていない。


「そんな軽い感じで帰ってくんなや」


「ヴァンにいちゃん大丈夫?」


「ういーっす。楽勝だったぜー」


 メアとハイタッチをしながらソファーに座り直している。あの人当たりのよさは素晴らしい。コツでもあるのだろうか。


「もう……ちゃんと話してくださいね」


 そして中で起きたことを聞いた。途中の術についてぼかされたが、内容からして過去に関わることなのだろう。ならば聞かぬが花だ。


「次はオレが行く」


「数人で同時に扉に入れませんか?」


「無理だな。ヴァンは扉に入って姿が消えた。入るのと同時にこっそり攻撃魔法ぶち込んでみたが、中の部屋が荒れただけだった。おそらく一人しか通れない」


「抜け目ねえなお前……」


 未知の敵だろうと、オレの武士道は曲がることはない。いつものように戦って勝つだけだ。


「あんま重く考えんじゃねえぞ」


「こっちは任せて自由にやってこい」


 仲間に手を振り、意を決して扉をくぐった。


「ここは……城か?」


 どこかの城の中という雰囲気だ。高い天井にあるシャンデリアも、高級そうな調度品の数々も、敷き詰められた赤い絨毯の踏み心地も。そのすべてが王族の城のようであった。窓の外には森と海と空が見える。絶景と言っていいだろう。


「なるほど、これが夢だというのならば」


「住んでみたくなったかい?」


 剣に手をかけ、声のした方へ振り向く。

 両手を広げながらこちらへ歩いてくる男は、短い赤髪を風に揺らし、青い瞳でこちらに視線を送ってくる。警戒させないよう気をつけている者の笑顔だ。美男子というものだろう。耳からしてエルフだろうか。


「いいや」


「それは残念だね」


 着ている白い服は軍服だろうか。どこかの騎士団長が着ているような、威厳と気品のある服装だ。腰の剣も高級品に見える。


「まず君と話がしたい。斬り合う以外の道もあるはずだ」


 意図が読めない。騙し合いはヴァンかアジュの分野だ。柔和な笑みでゆっくりと近づいてくる。敵の目的を聞き出せるだろうか。話に乗ってみよう。


「ルシード・A・ラティクスだ」


「おっと、先に名乗らせてしまったね。私はカガリビ。平穏のカガリビだ。この世界の騎士をやっている」


 騎士か。言われてみればぴったりだろう。佇まいから本格的な教育を受けていたことがわかる。


「私達は夢の世界を作りたいだけだ。そこでは外敵に苦しむことはない。私が永遠に騎士として民を守る」


「そのために犠牲になる人がいる」


「犠牲のない選択などありはしないさ。だからこそ、私を慕う民は幸せになって欲しい。全人類を今すぐに救うなど不可能だろう?」


「お前の野望のために命が散る。見過ごすわけにはいかん」


 言っていることは理解できる。大切な人を守りたい気持ちはある。だがそのやり方が他者の命を依り代にする行為ならば止めるしかない。


「犠牲者の出ないやり方で希望者が募るのなら、話も変わろう」


「不可能だよ。だからまず善良な市民だけでも隔離するんだ。安全で心穏やかに過ごせる世界へね」


 ここまでの返答に淀みがない。さも当然であるかのように語る。本気でそう思っているのだろう。己の道を信じて進む者の目だ。


「その善良な市民を誰が決める。お前の独断か? 善良の基準をどう決める。一部が優遇されるだけだ」


 人の善悪を個人が完全に推し量ることはほぼ不可能だ。客観的に資料を集めるだけでも労力はかかる。さらに裏付けまでやっていてはきりがない。だがカガリビは余裕の笑みを崩さなかった。


「たとえばそう、山賊に殺された小さな子供がいるとする。犯罪歴のない、ごく普通の子供だ。この子を悪と断じられる人間はいるかい?」


「それは……」


「君達の言う薄っぺらい煙に巻く言葉に意味はない。まずそういう子供だけでも安全に保護すべきなのだ。一般人より優遇される? 当然だろう。弱く罪がないのだから。それすらできない者に発言権などない」


 弱き者を助けるという理念はまともだ。だがやり方と過剰なまでの急進派であることが、賛同を踏みとどまらせる。


「所詮は夢の中だ。お前に守りきれるという保証もない」


「できるさ。この夢の中で最強は私になる。悪を裁き、善なる人が善のまま、胸を張って生きられるなら、現実を夢に、夢を現実にすべきだ。そのために犠牲が出るのなら、それでも構わない。純粋な魂こそ救済されるべきなんだよ」


「夢を見させる。現実でも生かす。それではいけないのか?」


「無理だね。エネルギーが足りない。まず現世を捨てて貰う必要がある。夢から帰すわけにはいかないんだ」


 やはり歪んでいる。命を代償とする行為に引け目がない。いつかその考えは破綻するだろう。あいつのような絶対強者でもない限り。ならば被害者が出る前に止めるのみだ。


「それは結局、お前の支配という牢獄の中にいるだけだ」


「残念だよ。どうしてわかりあえないのか」


 お互いに剣へと手が伸びる。相変わらず笑顔を貼り付けているくせに隙がない。


「メアをどうするつもりだ?」


「あの子は核だ。その血と魂が必要になる。夢の主となることも可能な器がある」


「無罪の子供を生贄に捧げるのか?」


「違う。あの子が守るべき夢の住人第一号となるんだ。永遠に我々で守る。この城もあの子が平和を謳歌するためのものさ」


「それをあの子は望んでいない」


「ならば望む世界を作るのみ」


 斬るしかあるまい。刀を抜き放ち、一息に距離を詰める。それより速く、カガリビの斬撃が左右から飛ぶ。


「速い!」


 片方を打ち落とし、身体を半身捻って回避する。態勢を整えた頃には、カガリビの剣から青い炎が放たれた。


「フレイムスネイク!」


「四の太刀、氷源!」


 炎で形作られた蛇を瞬間凍結させる。だが凍った蛇の口から、一回り大きな炎の蛇がこちらへ突っ込んできた。


「蛇は脱皮できるんだよ」


 蛇と並ぶようにカガリビが迫る。両者に対処するのは骨が折れるな。


「選ぶといい。蛇に呑まれるか、私に斬られるか」


「二の太刀、閃光!」


 両方に光の斬撃を浴びせ続ける。カガリビ本体をこれで倒せなくとも、足止めをしつつ蛇を滅する。炎が熱を呼び、我が身を焼く。冷気と魔力を身体に張り付かせて無効化するが、いずれ火傷を起こすだろう。確実に仕留める。


「やるね。君が同志だったのなら、私の副官を任せていたかもしれない」


「お断りだ。三の太刀、氷槍!」


 魔力と大気中の水分を集めて巨大な槍を生成。蛇の口へとねじ込みながら、カガリビの剣と鍔迫り合いを始める。顔に似合わず剛力だ。剣技もよく練られている。中途半端な迎撃は不可能だな。


「フレイムイーグル」


 カガリビの背中に炎の翼が顕現し、音を置き去りにして消えた。


「氷槍!」


 咄嗟に周囲へと氷の柱を生やし、防御に回る。背後の氷柱が消し飛び、反射的に刀を振り下ろした。だが一手遅かった。炎がオレの身に触れ、熱で肌が焦げていく。


「ぐっ、があ!?」


 カガリビの全身から剣へと伝わる炎は、まるで鳥のくちばしのように鋭く、加速によって切れ味を増して襲い来る。僅かな残り火が羽のように皮膚を切っていく。出血しない程度に避けてはいるが、早く決定打を与えなければ危険だ。


「燃えろ。国の敵は、私が骨すら残さず焼き尽くす!」


「そうはいかん。一の太刀、彩色」


 光の屈折率を変えて、手首から先を消していく。敵が素早く動いて回避するなら、攻撃そのものを見えなくしてしまうしかない。


「刀身が消えた……?」


「多重閃光剣!!」


 魔力を刀身へと集中。ただひたすら見切られるより前に斬撃を繰り出し続ける。愚直で単純なのは承知の上だ。無心で切り伏せるだけだ。業火がこの身に降りかかろうが、この心が焼けることはない。もっと速く。もっと重く。


「うっ……くう、やるね。だが」


 カガリビの身体に無数の傷が刻まれていく。魔法を使わせるな。押し切れ。それだけを考えながら刀を振り下ろすと、カガリビが消えた。


『右である!!』


 アークの声を聞き、反射的にバックステップで距離を取ると、オレがいた場所を大量の炎が通り過ぎた。


「すまないアーク」


『気をつけるである。あの炎、突然扉から飛び出してきたのである』


「その鞘、剣と大きさが合っていないと思ったが……喋る鞘とは珍しい。どうやって手に入れたんだい?」


 扉の奥から声がする。移動した瞬間がわからなかった。炎が消えるように、ふわりと突然消えた。まだ何かあるのか。


「おじいちゃんからの誕生日プレゼントだ」


 オレが誕生日にもらった喋る鞘。名はアーク。オレを支える長年の相棒だ。たまに口うるさいが、これで頼れる存在だ。


『ルシード、あの男から生物の反応が極めて薄い。体温すらほぼセンサーに反応しないのである』


 どうやら普通の人間ではないようだな。夢の住人となり、人であることも捨てかけているのか。


「騎士とは王の剣であり民の剣。この魂が燃え尽きぬ限り、私は死なないよ」


「ならば魂ごと切り伏せるのみ!」


「その喋る鞘……よくない予感がする。悪いけれど距離を取らせてもらうよ」


「逃げるのか? 騎士を名乗りながら、正々堂々とした勝負から」


「勝つことだ。勝って守らねば。民はなんとしても守らねばならない。矜持で命を見捨てることはあってはならない。それが私の民であるならば。私は騎士なのだから」


 そして天井から、扉から、廊下の先から炎の蛇が飛ぶ。魔力を振り絞り、ただ必殺の一撃へと研ぎ澄ませる。そうすれば主が不在の蛇など両断できるが道理だ。


「どうやら消せるようだな」


 カガリビ本人から繰り出されるよりも威力は低い。今のオレなら消せる。だが本体を倒さない限り、追加の蛇は続く。やがて疲労と火傷で死ぬだけだ。


「アーク、センサーに反応は!」


『すまぬ、反応がない。夢の世界とは不可思議なものである。だが本体は必ず存在する。それは確かである』


 考えろ。やつの言葉を思い出せ。やつは騎士。騎士が城で守る場所。絶対に守護すべきものとは何だ。


「賭けだな」


『ルシード、どうするのである』


「やつが騎士であることに賭ける。アーク、ウイングモード!!」


『承知!』


 鞘が光を放ち、バラバラに分解されていく。アーク自身が組み換え、再構築されながら背中に集まっていく。やがてオレの背中に現れる機械じかけの翼は、光に手が届きそうなほどの速度を手に入れる。


「フルブースト!」


 翼からおびただしい量の炎を撒き散らし、蛇の群れを掻い潜り、衝撃で散らし、目的の場所を探して城を蹂躙していく。


「見つけた」


 立派な扉を斬り裂き部屋へと雪崩込めば、そこにはカガリビが立っていた。


「来たか。何故ここだとわかった?」


「城で騎士が守るものなど、王以外あるまい」


「いい判断だ」


 そこは玉座の間であった。長い絨毯で作られた道の先、豪華絢爛な椅子がある。カガリビはその前に、守護者のように立っていた。


「私がカガリビの本体だよ。城全体に張り巡らされた感覚と炎で敵を焼く。断罪の炎を持つ最強の騎士だ」


 先程までとは別人のようなプレッシャーを、はっきりと理解できた。騎士の誇りと自負が、気迫と殺意で部屋を満たしている。


「その傷で全力の私と戦えるのかい?」


「傷など問題ではない。どれほどの傷であろうが、オレは曲がらない。オレの信じる武士道を往く」


「武士道か。騎士とはまた違う在り方なのだろう。だが信念を感じるよ。だからこそわかる。斬り伏せて進むしかないと」


 剣を胸の前に掲げ目を閉じる。それがカガリビの礼なのだろう。ならばこちらも一礼を返す。そしてお互いに構えを取る。


「いざ尋常に」


「勝負!!」


 初手は真正面からの切り合いであった。お互いの剣と信念がぶつかり合う。


「ぬぐっ……」


 押されたのはオレの方だった。傷と疲労だけではない。もっと別の何かによって、カガリビの執念は形成されている。


「その首、もらった!」


 炎を纏った刺突の雨が降り注ぐ。オレの癖を読み切っているのか、的確に意識の外からの攻撃が混ざる。取り回しの差だけではない。明確に年季の差がある。皮膚が焼け、血が滲み出した。


「これほどの力量がありながら、なぜ悪事に手を染める! 真っ当な騎士であることもできたはずだ!」


 少しだけカガリビの刺突の嵐が緩む。大きく横に切り払い、お互いに距離を取った。


「私もかつては騎士に憧れた。全てを守る騎士に。だが現実はどうだ? 誰も救えなかった」


「どういうことだ?」


「私の国は、この世界の地図から消えた」


 また炎の蛇が襲う。だが今回はその大きさも数も桁違いに膨れ上がっていた。見上げれば首が痛くなりそうな高い天井まで、その炎は登っていく。その姿は蛇ではなく龍に見えた。


「アーク、キャノンモード!」


『承知』


 背中の羽を両肩に回して再構築。大筒に変えて極大のビームで落とす。勢いのまま本体を狙うも、ひらりとかわされて距離を詰められる。


「騎士として使命に燃え、民を守り、人生を捧げた国があった。だが戦争に負けた。国は滅んだ。欲に目が眩んだ間抜けな家臣の裏切りによってね」


 とても嘘をついているようには思えなかった。その顔から初めて笑顔が消え、悲しみに染まりながら剣速を上げていく。


「一番上で、すべてを見通し管理するんだ。人は善人ばかりではない。善人か悪人かを判断できぬ幼子を、殺させるわけにはいかない」


「そのために善良な人間まで死ぬぞ」


「だとしてもだ。夢の世界では殺させない。新しき世界に絶対的な騎士団を作り上げ、何者にも進軍は許さない! 徹底した管理によって平穏を守る!」


「平和とは武力による管理だけでは成り立たない。それぞれの魂に背かず向き合うことで手に入れるものだ!」


 アークをビットモードに変えて、浮遊する六機のレーザー射出機に変換。乱れ打ちでペースを崩す。だが驚異的なスピードで繰り出される剣技は、オレとの距離をじりじりと詰めながら周囲を回る。やはり強い。


「戦いに負ければ、君も理解する。敗北とは何よりも避けねばならぬと。一緒にこの屋敷に踏み入った、大切なお友達が傷つき倒れ、君を残して死ねばわかるさ」


「ふっ、別にオレ達は親友でも仲良しグループでもない。ただ道が少しの間だけ重なったに過ぎん」


 あいつらは友情だの大切だのと、歯の浮くようなセリフが似合う関係じゃない。やつらはもっと自由で勝手で、それが無性に気が楽だ。


「あの中に守る必要がある人間など誰もいない。好き放題に戦って、必ず勝って戻ってくる。早死にするのはオレくらいなものだ」


「そんな薄い絆に、私の騎士道が負けるものか!」


「薄いのではない。それぞれの道が太く長く続いているのだ。自由に世界を歩き、偶然道が交われば、目の前の敵くらい一緒に倒す。それでいい。己の道とは、他人の真似事ではない。それがオレ達の絆の在り方だ。アーク、マジックドール・フルアーマー!!」


『委細承知である!』


 アークがオレの全身を包み、装着型のアーマーへと変化していく。これがアークの最終形態、魔装人形だ。オレ自身より倍くらい大きくなるのが欠点だが、この状態ならカガリビに決定打を与えられる。


「フレイムドラゴン!!」


 炎の龍が口を開け、こちらを飲み込もうと牙を剥く。ならばその中を行こう。


「なにぃ!?」


 光速を超えてフルブーストで肉薄する。装甲と衝撃波で炎は消えていく。


「ぬがああぁぁ!!」


 紙一重でカガリビの反応が勝った。最早思考より速く体が動いたのだろう。だが剣で受け止めるも、衝撃で王座まで飛ばされる。


「今はまだ空の座に、もうすぐ座る王のためにも、この世界を守る!」


「お前の作る世界は、無垢なる存在を犠牲にし、悲しみに染めることで成立させる歪んだ世界だ。捨て置くわけにはいかん」


「負けるわけにはいかない!」


 カガリビの全身が炎に包まれ、巨大な炎そのものとなって人型へと変わる。迸る青い炎は、装甲がなければ熱気だけで焼け死んでいたかもしれないほどだ。景色が歪み、部屋が溶けていく。


「人を捨てたか」


「新たな民を守るためなら命など、人の形などいらない! 誇りも、矜持も、命ですらも! 君を消す! 灰すらも残さない!!」


「おじいちゃんに教わったんだ。大切なものを手放したくないなら、まず自分の信念を手放すなって」


「その信念すらも! 私の炎で焼き尽くす!!」


 全エネルギーを刃へと集め、巨大な魔力の刀を作り出す。神聖にして絶対なる光の力を、ただ一撃に込める。己と刃を一振りの刃に変えて龍と化す。


「真の太刀、聖龍!!」


 業火の作り出す渦は、一筋の閃光によって両断された。ゆらりと揺れた炎の巨人は、元のカガリビへと戻っていく。


「どうして……どうして私が負ける……」


「お前は自分の誇りを捨て、弱い自分に負けた。初めから負けている男に、オレが負ける道理など無い。人は魂の在り方で、どこまでも強くなれる。その過程こそが自分だけの道なのだ」


「……そうか。けれど君の道は地獄を舗装するのと変わらない。永遠に終わらない戦いの果てに、終わらない夢を目指して死んでゆく」


「構わん。終わらない夢がオレの果てならば、何度負けようとも、この命尽きるまで立ち上がり歩むのみ。それがオレの武士道だ」


「そうか……君の道がどこに繋がっているのか……少し、見てみたかったな……」


 悲しそうに笑いながら、ゆらりとカガリビの魂は消えていった。

 城が消えると、そこは練兵場のような部屋で、中央で青い水晶が輝いてる。これが鍵なのだろうか。美しい光を宿す鍵は、まるでカガリビの純粋だった心を表すようだった。


「あの世で見ているといい。オレの、オレ達の歩く道を」

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