言の花と幻想花《ラグリティア》

第一話 “非日常なんて、そんなもの”


────────────────────────────────────────


こん、ちき、ちん

ちりん、とん、しゃん

ふぃら、ふぃら、ふぃー


『どこかで、祭りかな…?』


賑やかな祭り囃子が耳につく。今は澄み渡る夜空が、とてもキレイで。まるで、浮世の夢を見ているかのようで、現実味がない。


朱熹しゅき様だ、朱熹様が来た……!」

「おぉ…ありがたやありがたや……」

「珍しい、あの方が来られるなんて…」

「また一層神々しくなられて…」


『朱熹、様…?』


そう不思議に思った時、神輿の上に深紅の瞳と、白銀に血を流したようなメッシュが入っている長髪をした美丈夫が姿を現した。

その姿はまさに“朱熹”の名が相応しい気がした。


「…………皆のモノ、ご機嫌麗しゅう。元気そうで何よりだ…」

「朱熹様水臭いですよ! 俺らはいつでも元気です!」

「朱熹様こそ元気そうで良かったですよ!」

「…………ありがとうな……祭りを存分に楽しんでいってくれ…」


『とても、キレイな人だ……』


ふと伏せていた顔を上げて朱熹と呼ばれていたヒトを見ると、目が合った。


『……!』


朱熹は少し目を細めて俺を見ると──…

優しく微笑んで、口に指を当てた。

俺の頭の中に透き通ったキレイな超えが響く。


『楽しんでいってくれ、人の子よ……』

『…! “人の子”って事は……皆アヤカシ…?』

『そうじゃ。これはアヤカシの宴じゃ…後で来られよ、もてなそう』


「──朱熹様、一度お戻りを…」

「……分かった」


朱熹は小さく俺に頭を下げると、神輿の奥に戻っていった。


『キレイな、ヒト…だったな……』


それが俺と朱熹様の、不思議な出逢いだった──…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る