小さな合図

*『鉄の枷と氷の音・第一話』


本編

────────────────────────────────────────

『ひ、ぃ……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

『タス、ケ……テ…………?』

『止めろ向こうに行ってしまえ! 人形病患者▪▪▪▪▪が俺に近付くな!』

『ソんな……タス、けテ……くれな、ノ…………?』

俺の目の前に色素が抜け落ちてしまった白髪が舞い落ちる。彼女は無機質な瞳から透明な涙を流して、俺を見る。そしてそのまま──機械仕掛けの人形の如く▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪、ズシャアッとその場に倒れ伏した。そう、あたかも人形のように▪▪▪▪▪▪

『はっ……はっ……助かっ、た…………』

俺は助かったのだ──……





「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」

声にならない悲鳴を上げて、飛び起きる。まだ心臓がバクバクと嫌な音を立てている。

ギュッと胸元の服を握りしめ、身体を丸める。

「また、あの……夢、か…………」

──アイツはまだ、恨んでいるのだろうか……? アイツを拒絶してしまった俺を……

ハッと息を吐き出して自嘲的な笑みを形作る。

「許される訳、ねぇじゃんか……」

人形病に罹ってしまったアイツを拒絶してしまった俺が、幸せに生きれるとは思えない。

ギチリッ

立ち上がった身体が人形のように▪▪▪▪▪▪軋む。



──そして小さく合図は鳴り響く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る