特殊任務

*『東京メランコリア・第二話』


本編

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此処は要塞都市『トーキョー』内部、TSI会議室A。今此処にはとあるチームのメンバーが揃い踏みしていた。メンバー数は五人。そのうち女は二人、他は男だ。……一人女みてぇな奴は居るがそこは除外して。

「ンで、なんで集められてんのや? 悪い事した覚え、サラサラ無いんやけど〜?」

関西弁風の口調をしたコイツは龍神龍夜たつみりゅうや。栗毛の天パと、栗毛に似つかわしくない真紅の瞳が特徴的な、弓矢の使い手。赤眼が嫌らしく、バンダナで髪を押さえてるのがご愛嬌と言った所か。

「ま、まァまァ取り敢えずお茶でも如何です?」

龍夜を宥めるように苦笑してお茶を勧めたのは篶払芭舞煉すずはらはまね。後方支援系の武器を扱う、鍼灸師特級資格を持つ女子だ。黒髪のセミロングに伏し目がちな黒眼。着物が似合うだろう和服美人には変わりない。

「………………………………それで? なんで此処に呼ばれた訳?」

爽やかな青髪をゆっくり掻き上げながら言葉を発したのは、このチームの副リーダー祟槍憐晞しきざきれいき。男にしては長い髪も鋭い刃のような剣呑な瞳も、憐晞には合っていた。昔色々あったらしく、人と関わる事を極端に嫌がり、毒を吐いて近付けまいとする傾向があるが、此処に居るメンバーは気にせずどんどん距離を詰めていく。──もっとも──澪埼にとってそれは恐怖でしか無いのか、全く本心を見せてはくれないが。

「確か──あの方▪▪▪が直々に任務を任せられる……だったっけか? 珍しいモンだな、あの方がTSI総本部に来るなんて……」

不思議そうに言ったのは大鎌を片手で扱うほど強い力の持ち主、柚須萪紗久羅ゆすふじさくら

柔らかな銀髪を頭の頂部で結び、優しく微笑みながらヨハネの黙示録を惨殺する姿は、まさに凍り付いた▪▪▪▪▪鬼女神マリアのようでTSIの中でも陰ながら恐れられているが、本人の紗久羅は何ら気にしていないらしい。

「此処に集められたのは他でも無い──人間に生き残るすべを与えた天才科学者直々の申し出で、俺ら……特殊異能集団第三班に白羽の矢が立った、って訳だ」

そして最期に発言した、今までモノローグで説明していた俺は──第三班リーダー破魔屋真澄はまやますみだ。

黒髪に赤のメッシュが入った短髪、糖蜜色の瞳と深層海色オーシャンズブルーの瞳のオッドアイ。普段は深く引き込まれそうな程に深い蒼色の瞳を、眼帯で覆っている。

「しかし……何故今更になってあの方が来られる▪▪▪▪▪▪▪▪なんて……」

「なにか思う所があったんだろ。そもそもアイツは俺たちの思考や経験、思いや考えで測れる人間じゃないからな……」

「腐敗した外界から歩いてこれる程の人物──それは人間▪▪と呼べるのでしょうか?」

「………………………さぁな。それを言えば俺らも既に人じゃあ無いだろう?」

「それは、そう……ですが……」

芭舞煉の言葉をやや辛辣に聞こえる声音で、憐晞が言い返す。だが今回その言葉には、事実はあれど棘は無い。

「「「「「…………………………」」」」」

皆が沈黙する。

「…………──よう、揃ってんのか」

「あ……」

ギィィ……ッと会議室の戸が開いて、扉から一人の男性が顔を見せる。

不思議な容貌をした彼も誰が天才科学者だと思うまい──……。

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