終わった世界に始まりを

*『東京メランコリア・第一話』


本編

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「……だ──っ! いつまでやれば終わるんだ──っ!」

真純ますみ、叫ぶ暇があるなら手ぇ動かせ」

「うるせーちゃんとやってるよ! 憐晞れいきのレイは冷酷のレイか!」

「ンな訳あるかバカが」

「少しふざけただけで睨むなよ!」

 20××年、ココは荒廃した都市、トーキョー。世界に破滅のウイルスがばらまかれ、増え過ぎた人間は大人も子供も関係無くその生命いのちの花を散らした。

 そしてウイルスとは別にもう一つ……『ヨハネの黙示録』と呼ばれるバケモノの出現が生き残った人間を滅ぼそうと、襲い始めた。

 国の上層部は急遽ヨハネの黙示録特別対策部、通称『TSI』を設立した。設立した当時、何の対策も無くただただ軍事兵器で威嚇する他無かったらしい。だが今は────

ギャァァァァァァァァァッ!!

「真純!」

「……っ! わーってるよ!」

 俺の目の前にバケモノ──正式名称『ヨハネの黙示録』──が嘶きを上げて強襲する。俺は手に握った刀、鬼刀“幽冥の夜”を構えてバケモノに向かって振り下ろす。

 それだけで目の前のバケモノは耳障りな声を上げて砂と化す。

「うしっ任務遂行完了!」

「なーにが『任務遂行完了!』だ、こンのバカ! 予定狂いまくりじゃねぇかボゲ!」

「い、痛い痛い痛い痛い! 憐晞痛い!」

「あのまま首落ちてりゃ良かったのに!」

「それだと俺は確実にお陀仏だろうが!?」

「知るかアホ!」

 刀を鞘に収めてキリッとポーズをキメた俺を蹴っ飛ばして凄んだのは、俺の相棒である憐晞だ。本来は後三人居るのだが今回は別班の援護に当たっている。

「お、ま、え、はいつもいつも独断専行しやがって! アイツに報告する俺の身にもなりやがれ! もしくはテメェが報告しろ!」

「それはヤダ!」

「嫌なら独断専行するな!」

「それもヤダ!」

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ゴキャッと音を立てて憐晞の蹴りが顔面にのめり込む。例外無く容赦は皆無だ。

「〜〜〜〜〜っ!」

「ったく面倒臭ェ事増やすんじゃねぇよ問題児トラブルメーカー

 痛みで悶えて声が出せない俺を担ぎながら憐晞が毒づく。

 今回の任務は『ヨハネの黙示録の討伐』。数は十匹、全て大型のハエトリグモ型だ。

「…………本当に世界って滅んだのな〜」

「何を今更……」

「いやさ外に出ると毎回思うんだよ、『世界って滅んだんだな』ってさぁ? 憐晞は思わない?」

「それは……まァ思わない事も無いけどな?」

「この荒れた外を平気で歩いてきたアイツは凄いのな……」


──そう、世界は滅んだ。あのウイルスとヨハネの黙示録によって。なのにアイツは……


「…………無駄な事考える暇、あるなら自分で歩け」

「痛って!」

 いきなり地面に落とされて勢い良く顔面着地してしまう。思いの外痛いのなんの。

「酷でぇよ憐晞……」

 呻きながら立ち上がりさっさと歩いていく憐晞の後を追う。憐晞は待つという事をしないから中々大変だ。

 そして俺達は壁の中に戻る。そう、巨大要塞都市『トーキョー』に。



──俺達の物語は終わらない。

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