Climax: 存在証明

 廃棄区画。FHが用意した広い広い土地は、大半が“ヘカトンケイル”の蹂躙によって更地に変わっていた。

 その中央、青空の下にて一人。彼は青年達を待つ。



竜胆:とりあえず2人で前に現れよう。竜胆はフランコイズを庇うように立っている。


フランコイズ:さて、どうしましょうか。わたしは「制御方法を見つける」あるいは「相手を叩きのめす」の2択を意識して動く……けど、PLが前者の糸口をつかめてないのとPCの性格的に、基本的に後者になると思う。

 真っすぐ行ってぶっ飛ばす。右ストレートでぶっ飛ばす。


竜胆:……怒らせたら魔眼全部攻撃に回してくれたりしないだろうか?


GM:どれくらい煽れるかにもよるな。


竜胆:うおぉ上司は煽りのプロなのに!!!


フランコイズ:上司は煽りのプロなのに!!!



「……哀れね、ヘカトンケイル」

 フランコイズがポツリと呟く。



ヘカトンケイル(GM):「知らぬな。何者かが私を哀れんでも、“ヘカトンケイル”が此処に居るという事実は変わらん」


フランコイズ:「……そう。あなたは自分が“ヘカトンケイル”だと言うのね。なぜ? それはもともとFHエージェントのコードネームだったはず。あなたはなぜ、“ヘカトンケイル”を名乗るの?」


ヘカトンケイル(GM):「……単純な理の話をしよう。弱きが死に、強きが生きるという真理の事だ。強きが死ぬなどという事など決して有ってはならない」


フランコイズ:「ええ、それには共感できるわ。強いものが生き、弱いものが死ぬ。……だから、自分が欲するものを手にするには、それ相応の強さが必要になる」


竜胆:「なるほどな。弱い者は死ぬ。そして、強い者は死んではならない……そういう事か?」


ヘカトンケイル(GM):「ヘカトンケイル……それはかつて最強を示した者の名だ。故に、その名を以て最強を示し続け、存在を世界に刻み続けよう、というだけの話だ。それが、私に出来る友への唯一の弔いなれば」


フランコイズ:「そう、それがあなたの『欲望』なのね。一途に人を想う……素敵なことだと思うわ。でも、かつての“ヘカトンケイル”は優秀なエージェントだったと聞いたわ。……少なくとも、今のあなたみたいに闇雲に力を振るうような人間ではなかったはず。それでもあなたは、こうしてただ闘争を続けることが『最強の名を示す』ことだというの?」


ヘカトンケイル:「人はいずれ死ぬ。死して遺せるモノはなんだ? ……名しか遺らんよ」


フランコイズ:「ええ、人はすぐに死ぬわ。でも、その想いは遺る。あなたが“ヘカトンケイル”のことを想い、今もこうして戦っていることが、名前以外にも遺るものがある何よりの証明だと思うのだけれど」


ヘカトンケイル:「ハハ……ハハハ…………ハハハハハ! そんなことを小娘に説かれるとはな……! 成程成程、想い、か……!」


フランコイズ:「ええ、そうよ。私もようやくわかったの。人を好きになるって、そういうことなんじゃないかしら。想う側にも、想われた側にも、何かが遺る。きっと、そういうことなのよ。……竜胆幸守。私があなたを好きだと言ったら、あなたはそれに応えてくれるかしら? 私が死んだ後も、私のことを大切に想い続けてくれるかしら?」


竜胆:うわ、急に矛先がこっちに?!


フランコイズ:流れが強引だけど、この辺のRPをしておかないとロイスがタイタス化しづらくて…。


竜胆:そうか、じゃあ…。

「えっ? あ、ああ、もちろんだ。もしも君が死んだとしても、君の想いを忘れる事も、君への想いを無くすことも無いだろう(よくわからないけどきっと作戦なのだろうから答えておこう)」


フランコイズ:「……そう、ありがとう。それが聞けただけで十分だわ。」


竜胆:「(合っていたようだな、良かった)」


フランコイズ:悪夢のようなすれ違いがわたしを襲う(笑) ロイスを変化させるわ。


 『“シュバルツォルム”』へのロイスをタイタス化。あなたはもう、私にとって“シュバルツォルム”ではない。

 『ネズミ』へのロイスをタイタス化。もうあなたのことが妬ましくはないわ。

 『まだ見ぬ王子様』へのロイスをSロイスに指定した上でタイタス化。きっとあなたが、探し続けていた『王子様』なのだと…信じたい。


最後に、『竜胆幸守』へ(○純愛/隔意)でロイスを取得。素敵な王子様。でもきっと、もう会うことはない。


「…あのクソ女の手のひらの上で踊らされているようで、不快だけどね」

マスターマインドへのロイスは変化なしよ。



竜胆:「だが、フランコイズ。さっきのは『もしも』の話だ。君はいずれ死ぬのだろうが、それは今じゃない。俺が死なせない」

 そう言ってヘカトンケイルを見上げる。



「ヘカトンケイル。お前に俺達は殺せない。何故ならお前は最強では無いからだ」



ヘカトンケイル(GM):「…ほう?」


竜胆:「確かにお前は強い。だが、『最強』ではない。……過去の亡霊に縋っているような奴が、真に最強であるものか」


ヘカトンケイル(GM):「一理はあるな。だがな、最強と名乗り、他に最強を称する者が居ないのならばそれは最強ではないのか?」


竜胆:「井の中の蛙のような言い草だな。つまりお前は自分の目の届く範囲でだけ最強であれば満足だと? “ヘカトンケイル”が聞いて呆れる。ああ、それとも自分より強い者を見つけるのが怖いのか? そうだな、もしもお前が一度でも負けてしまえば“ヘカトンケイル”の最強の名に傷がつく……それはなんとしても避けたいところだな。なるほど、合点がいった」


ヘカトンケイル(GM):「ぬかせ。目の届かない所など世界に存在しない所と同義だ。無いモノを見る事など出来ん。だがな……お前は私の目の前に居る、まずはそのよく動く口を潰す事から始めるとしよう」


竜胆:「随分と焦るじゃないか。しかし、目が届かないなら存在しないと同義……果たして本当にそうか?もし、その『目の届かない所』に真の最強がいたとしたら?」


ヘカトンケイル:「だからどうという事も無い。目の前の何かを潰す事を繰り返した先に、その真の最強とやらに出会う事を願うまで」


竜胆:……余裕を取り戻させてしまったようだ。間違えたか?



「さて、御託は終わりだ。良い事を聞かせてもらった。最期に貴様等の名を聞いておこう」

 巨人は戦闘体勢に入る。もはや話すことは何もない、とでも言うように。青年と少女も、それに応えるように身構える。


「私は、フランコイズ。……あなたの名は?“ヘカトンケイル”を想う、あなた自身の名は?」


 しかし、その少女の言葉に……巨人は固まった。


「私の……名は……」


「ええ、そう。あなたの考えは素敵だわ。だからこそ、私はあなた自身の名を知りたい。」


 少女の問いに巨人は迷う。言い淀む。そうして得た答えは…。


「私の名はッ、長野業平! コードネームは“ヘカトンケイル”だッ!」


「そう…教えてくれてありがとう、長野業平」



竜胆:じゃあそれを聞いてふっと笑う。

「俺の名前は竜胆幸守だ。お前の名前、覚えておく」


ヘカトンケイル(GM):「……では、やろうか」


竜胆:「ああ。存分にな」


フランコイズ:「あなたが“ヘカトンケイル”への想いを以て戦うのであれば、私は私の想いを以てそれを打倒するわ」


GM:圧倒的な暴風が彼を軸に吹き荒れる。証明する為の戦いが、始まるのだ。というわけで衝動判定どうぞ。


フランコイズ:成功。


竜胆:駄目だ、暴走した!


GM:それでは戦闘開始だ。ヘカトンケイルはフルパワーアタックと小さき魔眼を宣言。


竜胆:俺もフルパワーアタックだ。



◆1ラウンド目

行動値

 9 フランコイズ

 0 竜胆幸守

 0 “ヘカトンケイル”


エンゲージ

 [“ヘカトンケイル”]…(5m)…[フランコイズ、竜胆幸守]



GM:フランコイズの手番。



「……まず一撃、私の全力を叩き込む」


 フランコイズの体を分解して舞い上がる砂が、鎧を、武器を形作り再度フランコイズを覆う。


「“降臨、満を持してリーラ・オーヴァーテューレ”――まだまだいくわ」


その武器はさらに大きく、硬く、鋭く形を為していく。その様は、まるで翼の生えた天使がそこに顕現したかのようだ。


「”気まぐれな両翼の天使リーラ・カプリシオ”――これが私の『全力』よ。ちょっとしんどいけどね」


その体から立ち上る砂の量は尋常でなく、そのレネゲイドは凄まじい勢いでフランコイズの体を蝕んでいる事が伺えた。



フランコイズ:ということで、マイナーで武器作成&エンゲージ、メジャーでセレリティ+物質合成で作った武器を合成する。そのままさらにメジャーアクションを2回行う。

「まず、一撃。」

カスタマイズ+コンセントレイトで白兵攻撃。


GM:リアクション放棄!復讐の刃だ!


フランコイズ:「くっ…やはり一撃で削りきるのは難しい…か」

ネズミへのタイタスを昇華して起き上がる。


GM:その攻撃に対してEロイス、不死の巨人を使用、100点軽減!


ヘカトンケイル(GM):「……どうした、その調子では先と変わらんぞ」


フランコイズ:「だけど、『防いだ』わね?『それ』がなければ、私の攻撃も通る――」

 2回目、コンセントレイト+カスタマイズの白兵攻撃、インフィニティコロナの効果も使用。


GM:もう一回リアクション放棄の復讐の刃だ。ダメージロール……38。フランコイズは?


フランコイズ:「やっと見つけた私の『王子様』…こんなところで倒させるつもりはない。」

 ダメージロールの直前に『まだ見ぬ王子様』へのタイタスを昇華、ダメージロールに+5Dするわ。ダメージは……146!


GM:ゲェー?!


フランコイズ:だってここ逃したら次いつ攻撃通るかわからないもの。RP通り、正真正銘全力よ。


竜胆:ひゅー!やっちゃえフランコイズ!


GM:それは一発でHPが全部吹き飛んだ……ちなみにHP115……。



「”天使の一矢オーガ・デス・リーラ”――喰らいなさい!」


 魔眼装甲を全て一撃目の防御に使用していたヘカトンケイルは、フランコイズの二撃目への対応が間に合わなかった。辛うじて殴り返しはしたものの、生身の部分に攻撃が直撃する。

 マスターエージェントの全力の攻撃に柔い生身は吹き飛ばされ、崩れた様に見えた。


「……まだだ。この程度で、"ヘカトンケイル"が倒れてなるものか!」



ヘカトンケイル:Eロイス、修羅の世界を使用してHP1で戦闘不能を回復する。ここまでは想定してないー!時間凍結使用できねえええ!!


竜胆:お前も持ってたのか!


フランコイズ:“シュバルツォルム”へのタイタスを昇華、戦闘不能から復活するわ。



「ゴホッ……カハッ……」


 少女は咳き込み、膝をつく。その体は砂に分解され続ける。

 言葉通り全力の一撃だった。過去最高レベルの威力だったという自負もある。……しかし、眼前の巨人はまだ、立っていた。


「これでも、だめか。これ以上は……」


 後ろを振り返る。そこには、竜の鱗を持った青年の姿。

 立場的には敵同士だ。しかしその相手も……今は。


「……後はまかせたわ」



竜胆:……任せろ。当てさえすれば勝ちだな? 時間凍結を宣言。HP-20してメインプロセスだ!


GM:来い。


竜胆:マイナーアクションで斥力跳躍を使ってエンゲージ、完全獣化と破壊の爪で人竜に姿を変える。そのままメジャーアクションで獣の力+C:キュマイラで攻撃だ!


GM:復讐の刃だ! さらに、不死の巨人の効果を使用しダメージを100点軽減。


竜胆:時間凍結で減ってるから普通に倒れる……が、脅威を表のままにしておいたフランコイズへのロイスをタイタスにして昇華、起き上がる。彼女の前で倒れる訳にはいかない。


GM:更にもう一度、竜胆の本来のメインプロセス。


竜胆:エフェクト自体はさっきと同じ。そしてサンズエージェントを使用。達成値+20、侵蝕値が10上がるからダイスも増える!


GM:もちろん復讐の刃で迎え撃つ!



 暴走している竜胆の口からは、もはや人の言葉は出ない。ただ竜の如き咆哮と共に、倒すべき敵へ爪を振るう。

 魔眼の鎧などもう一発目に使ってしまった。いまあるのは己の体のみ。ヘカトンケイルはそれでも、避けず殴り返す。

 巨人の拳と、竜の爪。お互いの想いを乗せた、愚直で暴力的な二つの力が、衝突する。


 ――爪を受けた時に、臓腑と筋が破れる音がした。鎧があろうとも、中身が動かぬのでは只の置物に過ぎない。


「ハ……笑わせる。“ヘカトンケイル”が……この様など……。私が為れる筈も無かったか……。すまない……友よ……」


 巨人の鎧を纏った男は、ゆっくりと、その場に倒れ伏す。……“ヘカトンケイル”は、敗北した。





GM:…実は攻撃にガン振りしたせいで復活リソースも何もない。戦闘終了だ。エンディングの前に一つだけ言っておく。中身の人間は、Eロイスを使っていない。


竜胆:!


フランコイズ:へぇ……。とりあえず、ロイスを取得するわ。長野業平に親近感/憐憫)で親近感が表。私と同じ実験体……憐憫。親近感は、人を一途に思う姿勢から。


竜胆:俺も……長野業平に感服/脅威でポジティブが表だ。

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