第7話 夜の帝王と姫
やはりまだ家族をグゥルに喰われた事がトラウマになっているらしく、一人で眠れないというレイナのため、学生寮の最上階にある俺専用のVIPルームに彼女を連れ込んだ俺。
当たり前の話だが、寮は男女が別に分けられており、普通は男子寮に女が足を踏み入れることは無い。ま、夜な夜なニャンニャンしてるカップルも居るんだろうが。
「わー、広~い!」
「そうか? イギリスでは……ああ、そうか。そういや実家暮らしとか言ってたな」
「そうそう。ウチは名門ではあったけど、贅沢は大敵! なんていう考えでさぁ。まぁそれでも執事とかメイドとかは居たわけだけどね。だからアタシの部屋もここまで広くは無かったの」
「ほう、なるほどなぁ。ああ、いつまでも制服じゃ窮屈だろ。なんか着るモン……」
「大丈夫大丈夫! 持ってきてるから!」
「最初から泊まる気満々かよ」
クローゼットを漁って、できるだけ小さめの服を探そうとした俺だったが、なんとレイナはカバンに自前の部屋着をいれて持ってきていた。
どんだけ準備万端なんだよ。
「じゃ、ちょっとシャワー浴びて着替えるね。覗いちゃダメだよ?」
「うっせー。いいからとっとと行きやがれ」
「むむ、そこはもっと動揺するべきなんじゃ……まぁ、いっか。タツトだし、そんな反応するんじゃないかって思ってたよ」
「そうかよ」
運が良かったな。今日の俺は紳士的だ。覗きなんてしやしねえよ。
っつーかそんなんで動揺するのなんて、経験がまったく無いチェリーぐらいだろ。俺がそんなヤツに見えるかっつーの。
さて、テレビでも見て時間潰すか。
そういや確か今日は優奈の奴が出演予定のバラエティー番組が放送されるんだよな。
時間は……ちっ、まだやってねえじゃねえか。後でレイナと一緒に見るかね。
しっかし、バラエティー……あの優奈がねぇ……。全然似合わねえんだが。
新聞のテレビ欄にあらかた目を通してみたが、どうも面白そうな番組が無い。あっても、まだ放送時間になってないヤツばかりだ。ついてねえな。
「本でも読んでおくか」
こう見えて俺は読書家だ。
純愛小説やファンタジーモノ、推理モノ、などなど、実に様々なジャンルの小説を読む。マンガも結構好きだぜ。
ナリからしてバカっぽく見えるだろうが、実は優奈よりも俺の方が成績は良い。実戦授業は当然の事として、座学もだ。
何せ実家が実家だからな。物心ついた頃から、その道のプロたちから英才教育を受けてきた。その甲斐あって、学園の授業なんざ今更受ける必要が無いほどの知識を持っている。だから面倒くさくてフケる事が多いんだが、最近じゃ優奈のせいですっかり俺も真面目君になっちまった。らしくねえよな。
っと、眼鏡眼鏡……。
そんなこんなで、官能小説を読み耽っていると、ようやくレイナがあがってきた。
そういや予約で風呂を沸かせてあったんだっけか。だから長かったんだな。
「ふー、極楽極楽っと。タツト~、あがったよ~」
「おう。じゃあ俺もさっと入るか」
「……なんかエロ本読んでるし……」
「エロ本じゃねえ! 官能小説だ! いいか、エロ本と官能小説は全く違うんだぞ!」
「そ、そうなの? ご、ごめん。そんな真剣に怒らないでよ……怖いよ……」
「ふんっ!」
エロ本はエロいだけだが、官能小説は芸術作品なんだ! そこんとこを間違えてもらっちゃ困るんだよ! まったく、女ってのはこれだから!
ぷんすこ怒りながら、俺は一風呂浴びに向かった。
気持ちよかった。が、あんまり長く待たせるのも何だし、早々に出ることにする。
……女って、何故か知らんがやたらと長いよな、風呂。
大事なピアスを一旦外し、色々と丁寧に洗って風呂に入った後、なんやかんやあってすぐに出る。
俺は寝間着として、スウェットを愛用している。ゆったりとしていて楽でいいんだよな。ジャージとかも悪いわけじゃねえが、まぁ好みの問題だろう。
そしてまた大事なピアスを着け、ある程度髪形を整えてから部屋に戻った。
「おかえりー。適当に食べるもの作っといたよー」
「お? お前、名門のお嬢様なのに料理できんのか」
「うん。ママから教わったんだよ」
「ほほう、そりゃあ楽しみだ」
ネグリジェを身に纏って手料理を囲むレイナの姿は、ちょっと不思議なものを感じたが、まぁ普通に美味そうだしいいか。
「時間なかったから、あんまり大したものはないけど、どうぞ召し上がれっ」
「ん。いただきます」
短時間で、無駄に豊富な俺の部屋の食材から選び、料理するっつーのはなかなか大変だっただろうに。そこまで気を使う必要はねえんだがな。
ま、ありがたく。
……む。
「うめえな」
「ほんと? よかったぁ」
「毎晩作ってもらいたいぐらいだぜ。俺が風呂に入ってからあがるまで、そんなに時間もなかっただろうに、すげぇなお前」
「えへへー。じゃあ毎晩泊まりに来てもいい? アタシも一人部屋だから、そこら辺は自由なんだよね」
「Eランクで一人部屋っつーのも珍しいな。Aランクともなりゃ、どいつも専用のVIPルームを持ってるもんだが」
「元Aランクの転校生だから、学園側も色々と気を使ってくれてるんじゃないかな。まぁ、部屋はボロいけど」
「ハハッ、なるほどなぁ」
「あっ、でもここって男子寮なんだよね? 大丈夫……かなぁ? タツトの迷惑にならない?」
「気にすんな。どうせ先公どもは俺に何も文句は言えねえよ。生徒たちだって、精々がブレイブネットで噂する程度しかできねえしな。どいつもこいつも、根性無しが」
「そっか。なら、本当に、いいかな?」
「構わねえよ。大歓迎だ」
「……ありがと」
礼を言うのはむしろこっちの方だ。目の保養になる上に、美味い手料理も食えると来た。これで断る奴はただのバカだろう。
だが、まぁ……。
「その代わり、お前も色々と噂される事になるだろうぜ。むしろ被害を被るのは俺よりお前の方だ」
心配するとすりゃあ、それだな。
俺は全く問題ねえが、まだEランクのレイナは何かと大変だろう。
「それこそ全然構わないよ。だって、アタシがタツトと一緒に居たいんだもん。一人じゃ怖くて寝れもしないし、他人に何を言われようと関係ないって」
「なら、いいんだがな」
「ありがとう、タツト。本当に優しいね、アナタは」
「はっ、俺はただのチンピラさ」
「またまた。ただのチンピラは、こんな厄介な女に優しくなんてしてくれないよ」
「どうだかな。ま、お前も食えよ。それに、そろそろ始まる時間だ」
「ん?」
時計を見ると、例の優奈が出演予定のバラエティー番組が放送される時間が近付いていた。
色んな芸能人が集まり、現役の学生ブレイブである優奈に、色々と質問してみようっていうヤツらしい。
「ほら、これ」
「……へぇ、ユウナが出るんだ! 見たい見たい!」
「俺も見たいと思っててな。録画予約もバッチリだぜ」
そして、ちょうど俺たちが食い終わった頃に、番組が始まった。
司会の上手さに定評のある人気芸人がMCを務め、人気女優やらコメンテーターやら、よくわからん専門家やらが集まり、学園の客寄せパンダとして、すっかりアイドルの顔になっている優奈に様々な質問をぶつける。
中には「グゥルも全く現れていないのに、スポーツ選手と化しているブレイブに国家予算を割くのはいかがなものか」という旨の、なかなかキワドイ質問もあったが、優奈は無難に「いつまたグゥルが現れるかわからない以上、ブレイブの存在は必要不可欠です。疑問視される声があるのも理解できますが、ブレイブを無くすわけにはいきません」といった感じで返していた。
「よくもまぁ口が回るもんだな。やっぱり台本とかに書いてあんのかな?」
「どうだろう。ユウナの性格からして、自分の意見を言ってるだけじゃない?」
「あー、確かにありそうだ。ネットで炎上とかしても気にしなさそうだよな」
「あはは、そうかも」
っつーか国家予算がどうたらとか、学生である優奈に聞くなよ。そういうのは政治家に言え、政治家に。
なんでこういう輩って、政治家に喧嘩を売る度胸も無いくせに偉そうなんだろうな? ま、いざ政治家と口喧嘩になったところで、うまくやり込められるのがオチだろうが。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、とうとう寝る時間がやってきた。
さて。
「寝るところはどうする?」
「え? 一緒に寝よ?」
「即答だなおい」
「じゃないと寂しくて怖くて、眠れないよ」
「そうかい」
レイナよ。お前さん、もうちょっと自分の身体がどんだけエロいか自覚しろよ。
距離が縮むの早すぎだろ常識的に考えて。
いいのか? いいのんか?
「俺に紳士さを期待すんなよ? 一緒に寝たら、普通に襲うぜ?」
「え? うん。いいよ? だから言ったでしょ。アタシ、アナタにずっとついていくって。本当に、あの時の言葉が嬉しかったから、アタシがあげられるものは全部、アナタにあげるよ。その代わり、言ったことは守ってね」
「……当然だろうが。俺は“帝王”だぜ? グゥルなんざ何匹居ようが敵じゃねえんだよ」
「……ん。期待してる」
拝啓、あの世のお袋とクソ親父。
この俺、達人は、この歳にして嫁さんが決まりました。わがままボディを持つ外国人の美少女です。
……一夫多妻とかダメっすか? あ、いい? さすがろくでなしの両親だぜ!
でもまぁ、レイナを泣かせるような真似はしねえつもりだが。
なんとなく、黒ヶ崎の奴が鬼の形相で飛んできそうだ。
この後、めちゃくちゃ夜のダービー戦した。
俺、夜の帝王になったわ。
いや、別に初めてじゃないけどね? でもレイナは初めてだったみたいで、最初は結構痛がってたわ。
最終的にド淫乱になりましたが。
外国美少女バンザイ!
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