第7話 メデューサ

しばらく待たされ、買い物も次第に終わりに近づいて来たかと思いきや、二人はゲームセンターに行きたいと言い出した。疲れた俺を差し置いてゲームセンターに向かう2人を追いかけた。流石土曜だけあって、虫王者を遊んでいる男の子、クレーンゲームを楽しんでるカップル、リズムゲームをやり込んでいる高校生男子2人、コインゲームでコイン集めしいてサングラスをかけてる女性などと言ったように、客の年齢層にばらつきがある。

で、うちの妹らはというと.....予想はしていたがやはり現役中学女子。プリクラを撮りたかったらしい。

正直俺は、写真に写るのはあまり好みではないので2人が撮り終わるのを機械の近くのベンチに座って待っていた。しかし、この時アルッシュが何やら辺りをちらほらと見回していた。

「アルッシュ、どうした、新手の悪魔か?」

「んーそれがだな、確かに悪魔だとは思うんだけど、どうも魔力が消えたり現れたりしている。もしかしたら取り憑く前の悪魔かも知れない。」

「昨日アルルから聞いたんだけど、悪魔が人間界に来る意義は人間の欲望を食事もしくは生命力として吸収するためだろ?吸収する時に魔力は使われないの?」

疑問に思った俺がそう質問すると、アルッシュは

「吸収する時に魔力は使われることは一切ない。だからこの魔力が消えたり感じ取られたりするのは何かの前ぐれ、あるいは人間に取り憑いた状態でわざと魔力放出をワンパターンでしているか.....」

アルッシュがそう説明し終わった後、はっっ!!となり、急いで俺はすぐさま妹達のプリクラのカーテンを開き、中を覗いだ。するとそこには石化した妹とりんちゃんの姿があった。

どうも先から声がしないと思えば、ちくしょう、やられたっ!!

俺はプリクラの機械に拳を握り殴りつけた。

「野郎!!!!!点滅させて、しかも一定の速さで魔力の放出、、それは*カメラ*!!これほど分かりやすい魔術なのに何故気づけなかったんだ俺は!!」

妹が石化したのを防げなかった自分が情けなくなり、何度も機械を殴った。

「おい、アキラ、それを殴るのもいいが、さっさと悪魔探しに行かないとだぜ?」

その言葉を聞き、ようやく我に戻れた。

「そう...だな.....で、アルッシュ、敵の居場所は掴めてんの?」

「んーぃや、この近くに潜んでることと、この現象を起こしたと思われる悪魔ならば特定できてるぜ。」

そう言うと、アルッシュは先ほど見せてくれたノートパソコンの他のフォルダーからその悪魔のプロフィールを見せてくれた。

「悪魔の名前はモルセラート・メデューサ、性別女性、能力 他者の体を硬直、石像化、弱点は不明.....だそうだ。」

「だそうだって言われても、弱点がわからないようじゃ対処の仕方がないだろ。」

多分このメデューサの能力は誰かが撮影することによってカメラを通して石像にさせる能力があるらしい。だがこの場合、もしメデューサ自身がカメラを所持していて他の人に写真を撮ると見せかけて石像化したら.....

すると、ゲームセンターの先ほどコインゲームを遊んで、サングラスをかけていた女性がスマホで他の人をパシャパシャ撮っているのが目に入った。撮られた人々はたちまち硬直し、最終的にまるで石像のようになってしまっていた。紛れもなくメデューサ本人のようだ。

「メデューサ!!!てめぇ俺の妹を元に戻せ!」

ゲームセンターの中の音がうるさかったので俺の持ってる最大音量でメデューサに要求した。しかし本人のメデューサは、

「ほ〜〜ほほほほ、どうやら貴方も悪魔に取り憑かれてるお人形さんの様ですね。」

彼女は一旦、カメラを撮る素振りをやめて話続けた。

「多分、私の能力と私の名前は既に把握済みでしょうが、名前を名乗るのは礼儀なので一応貴方が硬直する前に名乗っておきます。名前はモルセラート・メデューサと言います。初めまして少年、そして.....」

彼女はつけていたサングラスを滑らかに外して、

「Αντίο αγόρι(アンデューオ アンゴーリ) (あばよ少年)」

次の瞬間、彼女の目から黒色のビームの様なものが俺の方に飛び出てきた。

俺は持ち前の身体力で髪が数ミリ削れた程度で済んだ。とりあえず、目から出る黒いビームから逃れるために一旦体制を立て直すためにゲーム機の間から間へと身を隠しながら早々と逃げた。

「おいおいアルッシュ!!!カメラだけからしか魔術使えるんじゃなかったのかよ!!」

走りながら数センチ後ろで入っているアルッシュに質問した。

「俺そんなこと一言もいってないんだがっ!? 弱点不明って書いてるんだから仕方ないだろ!文句は大魔神百科事典に言え!!」

何やら胡散臭い辞典名が出てきたので俺は続けて質問した。

「ちなみにだけどその大魔神百科事典ってのはどこで買ったのか教えて貰えるか?」

「そりゃー、こっちにきた時に魔界百貨店HOMOのネット通販のNIWAKA店で買ったけど? 」

「おまえそろそろその百貨店で物を買うのを止めろ、その店絶対悪徳商売しかしてないから、悪魔だけに。」

それを聞いてもアルッシュは何が何だかわからなそうな顔をして、

「え?何故に??俺はその百貨店かなりお気に入りなんだけどーー商品は安いしー、使いやすさ抜群だしー」

何をいってんだ、このクソ天使は、

「もうおまえ....メデューサの餌食になって永久に石像になってろ!!」

「えぇーーーーなんかキレられたーー逆ギレだろ今の!」

そうこう言ってる間にメデューサは休む暇を与えることなく、俺らの背後を追いかけてくる。理由は分からないが走るときはサングラスを付けている様だ。

「少年、早く観念して私の石像コレクションに入るんだよ!おまえが走ってたらうまくアングルが合わないじゃない!!」

彼女は携帯カメラを片手に持って、俺らがストップする一瞬の隙を見計らっているようだ。

「と、とりあえずなにか反撃しないか?アルッシュ!!」

そう俺が提案したが、

「んなこと言ったってストップした瞬間、石像化されるんだぞ!!」

どうやらアルッシュはノり気ではないらしい。

「戦わなきゃ始まらねーだろ!!とりあえずおまえはメアドライブを張れ!!」

そう言われてアルッシュは走りながらメアドライブを空間に張った。それが確認できた俺は走るのを止め、彼女に立ち向かった。

「おい、おまえ正気か!?対策法もはにもないんだぞ!!」

アルッシュは忠告するも、俺は戦ざる終えないので彼の忠告を無視し、

「対策法無くても全力であいつをヤるしかない!!援助を頼んだ!!」

「いやいや、俺がちで援助しか出来ないの知ってるよな??攻撃技全く使えないんだぞ!!」

「んなもん知っとる!!いいからさっさとストックゲージから俺の竹刀をよこせ!」

アルッシュはゲージから竹刀を取り出して、俺に投げた。俺はその回転している竹刀をキャッチし、悪魔狩りが始まった。

「ほ〜〜っほほほ、少年にしてはいい度胸じゃない?負け勝負をわざわざ受けるなんて、貴方ーーチャレンジ精神だけは有り余ってるようね!」

高笑いをあげながらそう彼女は発言し、続けて、

「チャレンジ精神は良いけれども〜自分の立場をわきまえな小僧!!」

そう言い終えたと同時にサングラスを外し、目から眩いビームを放った。しかしその目からずっと無制限にビームが出てるわけでは無く、一定ペースでしか発射出来ないようだ。恐らく1秒に一回のペースだろう。そのビームに対して、アルッシュの詠唱エンハンス能力 "アンヘイブン"で身体能力を底上げしているため、案外交わすのは容易であった。だが、ビームが次々と放たれる邪魔でそう簡単には彼女に近づいて剣技をお見舞いすることはできない。というかこのままだと逃げてるだけで体力が尽きてしまう。

「体が近寄れないのであれば......」

俺はそう言いながら近くにあったスチール製のゴミ箱を竹刀で勢い良く叩き、メデューサの方に飛ばした。すると彼女が放つビームはスチール製のゴミ箱を瞬く間に溶かしてしまったのだ。「ほ〜〜っほほほ、物質を投げて私にダメージを与えるってゆーその発想は良い線はいってるが、所詮はガキだなぁ!!」

ズピュンピュピューン!!

彼女の目から幾多も黒い光線は音を立てて発射された。

「くっっアルッシュ!!この店にとりあえず逃げるぞ!!」

俺たちはとあるスポーツ店に駆け込んだ。

「今更何処へ逃げたって無駄よ!!さっさと観念して出てきな!!そして私のコレクションとなりなさい!」

そう言いながら彼女は店の棚を蹴っ飛ばし、俺の居場所をくまなく探った。

この世に完全なるものはいないと言うのは俺の教訓でもあり世界の掟だと心から崇拝している俺は、必ず何処かに弱点があると信じ、隠れながら彼女に店にある物を片っ端から投げ続けた。

金属バット、グローブ、サッカーボール、ラケット、ゴルフバット.....などと投げてみたがやはりどれも彼女にとってはチリ紙やゴミクズなどと同じなのであろう。

逃げ回っているうちに、遂に俺は店の一番奥まで来てしまった。奥には靴とユニフォームしかない、これは問題だ、金属、ゴム、プラスチック、スチールなどは全て溶かされるのであるのだからどう考えても打つすべはない....

「これはヤバイな.....」

だが、どうやら隠れ場所が悪かったらしく、近くに置いてあった鏡の反射により、俺の居場所が特定されてしまった。

「みーつけたぁ!!!!」

メデューサは不気味な笑みを浮かべているのを鏡越しから確認できた。

やばい見つかってしまった、なにかあいつをやっつけることができるものはないのか、なにか....なにか.....」

人は死ぬ間際、もしくは死ぬ寸前にアドレナリンを大量放出し、その間の1秒をまるで時間が止まったかのように感じ取れるらしい。

しかし、この時の俺はそれが感じ取れなかった。まだ死ぬわけにはいかないのだから、

「まだ俺の復習は果たされていないのだから!!!!」

瞬間、俺が竹刀でその*鏡* を割った。勢いよく飛び散ったガラスの破片はメデューサの体に突き刺さった。

「グァァァァァァ!!!!」

メデューサは悲鳴をあげた。

「なるほど、、飛び散る破片を全てビームで溶かすことはできないって訳か。それに....」

俺のすぐ後ろでアルッシュがエンハンス能力を俺にかけながらそう呟いた。アルッシュの言葉にに続いて俺も、

「あぁ、どうやらガラスは溶かせないらしいな!!」

メデューサはどうやらガラスの破片が片目にも、身体中にもガラスの破片が突き刺さった為、その場で倒れ、地面を四つん這ってもがいていた。

「その証拠にお前は、俺に向かってくる際に、わざわざサングラスをかけ直した。その性質から、お前自身、肉眼で鏡を見ることができない、しかもビームを発射した時に、自分自身に反射することを恐れているんだ、そうだろ!!?」

すると、先ほどまで這い寄っていたメデューサがゆっくりと立ち上がって、

「こ、小僧、よくも、、よくも私の美貌をぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

突如オーラが変わった。髪の毛も蛇になり、爪も鋭く、長く伸び、肌の色も橙色から茶色へと変化した。大気中の空気の流れも変わったような気がした。

「な、なんだ!!??この気迫は!」

俺がアルッシュに問いかけた。

「こ、これはもしかしたらバロムが使う*セカンドフィーチャー*!?? こ、こんなの俺ら七つの大罪しか使えない特性を.....何故七つの大罪を束ねるリーダーでもないおまえがそれを使える!?それを誰から取得した!!??」

アルッシュが驚くのも無理はない、アルッシュも先ほど口にしたように、セカンドフィーチャーを使いこなせるのは七つの大罪であるルシファーを含めた7大悪魔達しかいないのだから。

「どうだ!!!驚いたか!!私はあの方に伝授して貰ったのだ!!私はあの方を心から尊敬している!彼の方こそ世界を束ねる優位つのお方!!あの方こそ新世界を創造できる優位つのお方!!悪魔か天使かはっきりしない堕天使に、あの方の素晴らしさなどわかるはずがあるまい!!!」

どうやら、アルッシュがルシファーだということは最初から知っていた上でこうやって魔術を俺らに乱用していたようだ。

「よせ!メデューサ!その特性を一般悪魔のおまえが使えば取り憑いている人間と完全に同化し、おまえがその人間から出ていけば、その人間本体も死ぬんだぞ!!何の罪も犯していない人間を殺してなんのためになるってゆーんだ!!」

「それはマジか?アルッシュ??」

俺の質問にアルッシュは口を閉ざした。

「そいつのいう通りだ!私がこれを使ったことによって私が死ねばこの人間もそのまま道連れになって死ぬのだ!!!!この人間も地獄送りにしてやるよ!!!」

その言葉と同時に彼女の髪に巻きついている蛇達と石化光線が一斉に襲いかかってきた。

「そいつらはブラウンスネークって種類で、少しでも噛まれると猛毒が全身へ回って死ぬ!!」

「くっっっ.....キリがない!!石化も毒もどーにかしないとダメとか、かなり無理ゲーだろ!!どうにかしてくれアルッシュ!!」

俺は竹刀と俺自身の身体能力でどうにか蛇と光線を代わしているが息もかなり荒くなってきやがった。

「そう言われてもー俺はアルルみたく魔術は使えないし、天術や魔法ならば使えるけれどもそれを使えばおまえの体力を削ってしまう、おまえが命を落とす危険性もあるんだぞ!!」

そう言われるんだろうと予想はしていた、だから、だからこそ....

俺は後ろで叫んでいるアルッシュの方を一瞬向いて、

「そんなことは分かってる!!それでもやってくれ!頼む、アルッシュ!!!!!」

俺の思いが伝わったのか、それともただの神様の気まぐれなのか、アルッシュは俺の願いに応えてくれた。

「やれやれ、おまえにはたまに驚かされるよ、人間のくせに死ぬのを恐れないときた。」

そう言った後、アルッシュは背中に白い白鳥の様な翼を生やし、詠唱を唱え始めた。

「天を崇める者よ、聖天を憧れし者よ、ヘブンの扉を開きたもう、牽制なる裁きを、掟を破る物に鉄槌を!!!我が名を示し、さらなる高みへ望みたもう!!! ヘブンズ・ルミール!!!!」

ヘブンズ・ルミール 通所 聖なるヒカリは空高くから円柱形状の光が地上照らされまで、不浄な物を浄化することができる<アマノ戦技>だ。

「や、やめろ!!やめてくれ!!魂が退かれる!!」

俺はアルッシュが天術を発動させている所を間近で確認できた。どうやら、うまくピンポイントで光の中に収めることができたようだ。

「おまえは罪のない人間を殺そうとした、その罪は大きい、天に滅せよ、この愚かな魂、天へと浄化せよ!!」

「おーのぉぉぉれぇぇぇぇ!!」

そう言うとたちまちメデューサの蛇と爪は元の女性の物へと戻り、メデューサの魂は光と共に消え去った。

「や、やったぜ、やってやったぜ、これで妹は元に......」

俺は全て言い終わる前にまるで魂が抜けたかのように力果ててしまい、ばたりとその場へ倒れ込んでしまった。

「おぃ、アキラ!!アキラ!!しっかりしろ!おい!!............」

この声が最後、俺の意識は遠のいた。

←←←←←←←

「............ここはどこだ??」

目を開けば見知らぬ白い天井がそこにはあった、左手には点滴、右手には側で寝ている妹の手が俺の手の上に覆いかぶされていた。

「そうか.........あの後、病院に運ばれたのか。」

「あ、おはようございます旦那様、やっとお目覚めですね。」

俺が目覚めてすぐに対応していたのはアルルだった。

「あぁ、おはようアルル。とりあえず....あの後何も覚えてないからここまでの経緯を教えて貰えるか?」

俺は弱々しい声でそう言うと、

「はい、旦那様はあの後、貧血で倒れた、ということで、スポーツ用品のお店の方から救急車を呼んで頂き、その後救急隊員数人で救急車に乗せられ、病院に運ばれました。」

そう言うと、アルルは妹の方をチラッとみて、

「それとご覧の通り、妹様やその他の人々かかっていたメデューサの魔法もとい呪いは彼女が浄化されたことによって自然解除されました。しかし残念なことに.....」

ここまで笑みを見せていたアルルだったが、突然少し顔をうつ伏せて、

「取り憑かれた女の方は、救急隊が駆けつけた時にはもうお亡くなりになられておりました。死因は心臓発作として扱われたそうですが、警察は旦那様とその女性が近くで2人とも倒れてることを少し疑問に感じてるみたいです。これからはなるべくアルッシュくんの天術を使われないように心がけて下さいね。」

彼女は心配気な表情を俺に見せた。

「わかったよ、心配かけたな。でもあの状態では使わざる終えなかったろ?」

「それはそうでしたけれども、旦那様、そもそもあそこに鏡があったのに何故私とアルッシュくんを転生させなかったんですか?」

その質問に俺は息をを飲んだ。

「う、それは......」

あの状態で、死に際すれすれだったのに、アルッシュと転生させればいいという案など頭の中に一切無かったのである。

「それはーーあれだよ、ほら、一日休暇してるアルルをわざわざ出勤させるのもなんかー申し訳ないかなーぁーと思ったんだよ〜」

それを聞いてアルルは苦笑いをしながら、

「つまり、完全にそれを考慮なさって無かったってことですね?」

図星だ、見事に嘘を打ち砕かれてしまった。

「う、見破られてしまった....」

「ふふふっ、次からは私の事情などは気にせずに呼び出してくれて構いませんよ?アルッシュくんの天術は確かに私よりも遥かにパワーは上ですが、彼の天術を使うと旦那様のお体の方に負傷が出てしまうので、それに旦那様に死なれると私もアルッシュくんも困るんでっ。」

着用しているメイド服を横にひらひらとさせ、彼女は少しばかり笑顔を浮かべそう言った。

「あぁ、、わかったよ。」

するとどうやら、俺の声が妹の眠りを覚まさせたようで、妹は目を半開きにしながら、

「むにゃむにゃ....おにぃちゃん??あれ!?おにぃちゃん目が覚めたの!? 何で目覚めてすぐに春を起こしてくれなかったのー?」

妹は寝ぼけ半分、驚き半分で目覚めたばかりのその小さな口を開いた。

「そりゃおまえ、俺の看病を俺が倒れてからずっとしてくれてたろ?それにおまえがスヤスヤと寝てる姿を見ると、何だか落ち着くから起こしたく無いんだよ。」

俺は自分の冴えない顔にめいいっぱいの笑顔作り、笑って見せた。

「何それー。ちょいキモだよそれー。そーゆーのは好きな人だけに言いなよ〜」

妹も俺と同じほどの笑顔を見せ返した。

「ところで、妹よ、、今日の日付と時間を教えてもらえるか?」

そう俺は妹に聞いた、すると妹はスマホを出して確認した、

「え、今はまだ日が昇りきってないからーー9月6日の月曜でーーえーっと4時半くらいだね。」

んーー??今なんと申しました?聞き間違えなのかなーぁー???月曜??月曜つったのか!!?

妹の言葉に耳を疑ってしまった。

「ちょちょ、え?俺1日以上ずっとこうして寝てたの!?」

「え、えーと、そうだけど?春、昨日一日中おにぃちゃんのそばに居てて、もぅ、お陰で肩凝っちゃったよ〜」

妹は左手で肩をトントン叩く素振りを見せてはいたが、今はその肩凝りがどーのを気にしている場合ではない。

「呑気に言ってる場合か!!今日からおまえも俺も授業始まるんだぞ!ほら、早く退院手続き済まして家戻るぞ!」

そう俺は言い、付けてあった点滴の針を自らの手で抜き、椅子に掛けてある俺の服に着替え始めた。

「え、だけどおにぃちゃんまだ点滴が.....」

「点滴はもういいよ!もう治ったほら!こーんなに元気だ!だから、ほれ行くぞ!」そう言うと俺は看病室から一階へと向かい走った。

「ちょ、ちょっとぉぉぉ!待ってよおにぃちゃん〜〜春も服とかを片付けなきゃダメなんだけどぉ〜んもぉ!」

ほっぺたを軽くふくまらせて兄が走り去ったドアの方に向かって春桜は言った。


それからというものの、妹をきっちり学校へ送ってからは、始まる時間ギリギリに俺も学校に着くことができた。それから1週間ほどだったが悪魔が出てくることがなくそれなりに俺の平和的な日常、いや、俺の閉ざされた和みの時間、閉和な非日常が戻ってきた。しかし.....


9月14日 火曜

キーンコーカーンコーン 6時限目終了時

「いやぁ〜〜今日一日も終わったねアッキー」

同時に委員長は背伸びをした。

「そっれな〜〜俺も疲れたよ、本当〜、委員長と康太は放課後なんか用事あるの?」

俺の質問に一番早く委員長が反応した。

「んーーうちは部室で研究&開発かな〜〜ほらーうちらそろそろ文化祭あるやん?その為のどデカくて綺麗な花火を用意してくれって会長に頼まれてなぁ〜」

その言葉に驚きを隠せない様子で康太は、

「へ?あの生徒会長、頭でも打ったか?何故にうちの天災すぎるいいんちょーに頼むんだ?」

「いやぁ〜〜それほどでも〜」

完全にいいんちょーが自分がバカにされていることに気づいていない様なので、俺はそっと一言を委員長に添えてあげた、

「いや、いいんちょー、それバカにされてるから、貶されてるからー絶対いいんちょーの思っている天才ではないから。」

「えぇ!!??そうなん?んもぉこーた酷いやんーーそんなにうちの才能が羨ましいん?」

どうやら彼女はマジで信じ込んでいた様だ。

どんだけ信じやすい体質なんだよおまえは...

「誰がおまえの才能を羨ましがんの?」

その康太の一言に俺も速攻同意した。

「それな」

そうすると委員長は少しばかり不機嫌になり、

「もぉーー、こーちゃんもアッキーも酷いんやからーー」

とすねてしまった。

「で、康太は何すんの?」

ついでに俺は康太にも同じ質問をした。

「ゲームの攻略かー女子を墜とすテクニックの考案の実践かーだな。」

康太は真顔でそう言った。若干キモさもあったがこんなのはいつも通りな康太なので、軽やかに流してやった。

「こーちゃんの趣味、いつも思うけど普通からかけ離れてるな。」

委員長は、その康太の一言にひいている。

「そっかーじゃあおまえらどっちも忙しそうだし、いつも通り妹を迎えに行って真っ直ぐお家に帰るとすっかー」

俺はそういって立ち上がり、肩がけバッグを持ち、2人に、じゃあな、と言い残して妹の学校へと向かって行った。妹の中学に着いた時にはもうすでに妹は校門前でただただ校門の壁に身を預けて空を見上げていた。

「おーい、春ー迎えにきたぞー」

俺がそういうと妹はやっと俺に気づいて、

「あ、おにぃちゃん、今日は早かったね〜〜いつもは何してるか分かんないけど、あ、もしかして学校でナンパとかしてる感じ?」

その馬鹿みたいな質問をされながら俺と妹は帰り道をのんびりと歩き始めた。

「バカ、んなことするか、キザメガネでもあるまいし。」

俺がそう言うと、妹はキョトンとした顔をして、

「キザメガネ??誰それー」

「あー、そーいえば春は知らなかったなー俺の少数の友達の中の1人だよ、勉強できてゲーム好きなんだけれども、キザでどんな女子にも片っ端から声をかけてる奴だよ。」

俺がそう言うと妹は驚いた感じの声をわざとらしく出して、

「というか、おにぃちゃん友達いたの!!??」

「驚くとこそこ!!?、つかなんで真面目な顔で驚いてんの!?妹よ、辞めてくれーその顔でそーゆーことを俺に言うの辞めて。」

「冗談だって〜冗談〜〜まぁ、驚いたのは事実だけどねーー、ほら中2のある日からおにぃちゃん人と関わることを嫌ってたじゃん〜、元のおにぃちゃんに戻って、春は嬉しいよっ。」

その言葉と同時に左肩を妹に掴まれた。

「そ、そうか。」

我が妹ながら軽く照れてしまった。

「あーそーいえばおにぃちゃん、この前さ春のクラスの転校生の話ししたじゃん?赤髪のイタリア人の子!あの子の名前がね〜〜」

次の妹の言葉で俺の右隣で歩いていたアルルは顔色を激変させた。

「アスタルテ・イブリースらしいよ〜名前も外見もかっこいいって瞬く間に学校の人気者になっちゃったよ〜」

「なぜ、、彼が......ここに.... 」

アルルは怖い顔をしていた。そしてあの何に対しても動じないはずのアルルがこの時、俺は彼女と出会って、初めて彼女の震える姿を目にした。その顔からは、後にあんなことになるとは誰も予想していなかった.....


-To be continued-

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