第6話 悪意のある商品説明

ミーンミンミンミンミーン

9月4日土曜日 朝9時半

「暑すぎて死ぬ....エアコン.....エアコン......」蝉の鳴き声で起こされてしまった土曜の朝、俺は寝ぼけてエアコンのリモコンを探していた。

「あ、そうか....俺の部屋のエアコン....壊れてるんだった。」

自分の中で気力という気力が全て崩れ落ちる感じがした。今日も部屋の中が暑い、尋常じゃなく暑くて死にそうだ。そう思ったが、ふと昨日の委員長の発明品を思い出した。

あ、こーゆー時にホットバスターが使えそう....だと俺は考え、昨日履いていたズボンから取り出して昨日同様、首周りに満遍なく塗った。さぁーーこれで涼しくなるはず....頼む、涼ませてくれー安らかに二度寝させてくれぇぇーー。

「............」

しかし待っても待っても一向に涼しくならない。どういうことだ?そう疑問に思ったのでよくよくその丸い容器入れの周りを調べた。すると小さな文字で商品名と注事項らしきものが書かれてあった。


商品名 <ホットバスター 今日夏博士の天才的発明品 No.45>


商品説明

・このクリームを塗ればたちまち涼しくなります〜※心臓付近には絶対に塗らないで下さい。命の保証は絶対にしません。ご自身の命は大切に☆

・塗ってから数秒後に次第に効果が出るはずです。焦らず気長に効果が出るまで待ちましょう

※効果が発揮しなくても返金は出来ません〜苦情は一切受け付けませんので☆

・病弱な方、12歳以下の方、妊婦の方、お年寄りの方は決して塗らないでください。

※チャレンジ精神に溢れている方は どうぞご自由にLet's challenge ☆

・一度ご使用した方は三日間、クリームを塗っても効果は発揮しませーん

※そこの貴方、絶対今説明を読みましたね? 毎日効果が発揮するとでも思ってました? ザーンネーン_:(´ཀ`」 ∠):


新しい未来、新しい世界、新しい発明と笑顔を貴方に! 未来機会クリエイターズ(株)


「……..クソっ!!!!」

俺は全力でホットバスターを床に叩きつけた。

「やっぱガラクタ発明だったかー」

1人でつぶやき1人で大きくため息をした。どうやら分かってはいたが、この暑い状態をどーにかすることが出来ないらしい。

「二度寝...出来ないな、これじゃ.....」

俺はベットに再度バタンとうつ伏せに倒れてだらーとしていると、気づけばアルッシュが部屋の隅っこに座ってパソコンをいじってる姿が見えた。まぁどーせ朝からネトゲでもしているんだろう。

「昨日は疲れたから、こいつはとりまほっとくか。」

俺は仕方なく布団をたたんで、一階のリビングに向かった。

「あ、おにいちゃんおはよー、今日は休日なのに起きんの早かったね〜」

休日だと言うのに、我が妹は相変わらず早起きしてリビングの片付けをしながらテレビの朝ニュースを見ていた。

「おはよー春。いや、なに、俺の部屋はエアコンが壊れてて暑くて、蝉の鳴き声に起こされた始末だよ。」

そう俺は言うと妹は依然として掃除をしながら俺の憂鬱に応えた。

「あーそーいえばそーだったねー、電気屋に直して貰えばいいじゃん?」

「あんま金かけたくないからなー、エアコン直すの地味に高いしーー。俺らうちの親から貰ってる資金でやりくりしてるからなるべく節約しないとな。」

それを聞いた妹は片付けの手を休ませずにふんっと鼻で笑った。

「ははぁん〜おにぃちゃんが節約とかよくその言葉が口から出てきたね〜 おにぃちゃんの似合わない言葉ランキングベスト10に属してるよ?そのこ、と、ば。」

妹は 嘲笑いながら俺の方を見ている。

「るっせ、なんで節約という言葉が俺に似合わないんだ!?」

すると妹は、そう言うのを待ってました!と言わんばかりの顔をして、

「そりゃだって、おにぃちゃん、よくコンビニでジュースとか食べ物とか買ってんじゃんー」

「な、何故それを....」

「ゴミ箱みればわかるよ、おにぃちゃん。」

よし、教訓が増えた、今度からは外でゴミを捨てるように心がけよう。

「じゃあーおにぃちゃん春の部屋で一緒に寝る?流石にベットに2人...ってのは中学生にもなった春からしてもちょっと色々と無理だけど、床ならば寝ても良いよー?春の部屋のエアコンは壊れてないし、どーする?おにぃちゃん。」

よくよく考えていただきたい、普通の家庭の*妹*と言うものはここまで兄に気遣いするんであろうか?最近やってたあるビッグファミリーを密着したドキュメンタリーを見たことがあったが、その中で出てくる妹はもっと兄貴に素っ気なくツンツンしていたんだが...今更、この歳になって初めて気付いたけれど....うちの妹って誰もが羨ましがる完璧完全なる妹なのではないだろうか!?

「ねぇーおにぃちゃん、声漏れてるよ声。」

気付いた時にはもう遅かった、どうやら今思っていたことは感情が抑えられなくなって、全て声に出てしまっていたようだ。我ながらなんてことを...

「え.....今漏れてた??」

「いやーほら春可愛いとか言われ慣れすぎてるし、気を使える良い子とか良く言われてるけど、春は自分の正しいことをやってるだけだよ?それこそおにぃちゃんのためを思って意見を出してみたんだけどーーおにぃちゃん春の部屋で寝るのやだ??」

軽く上目使いでそーゆーのを堂々と実兄に言うのは如何なものかと思うがーー...はっ、もしやうちの妹は学校でもこんな感じなのか!?

「いや、だから漏れてるからおにぃちゃん...春、学校では男子とも女子とも仲良いけれど、男子は最低限話しかけたり関わったりしないよ?だってみんな子供みたいな感じだしーいつも言ってるけど中々おにぃちゃん以上の人が見つかんないしーもぅーやな世の中だよね〜」

「はぁ.....左様ですか。まぁーー春の気持ちはすごく有難いけどやっぱ俺も立派な男だからそんな安安と女の子の部屋では寝れないよ。気持ちだけ貰っておくよ。」

そう俺は言うと妹はニコッと笑い

「そーゆーとこもおにぃちゃんらしくて好きだよ。」

うちの妹はこーゆーのが宜しくない、もし俺が本当のシスコンであれば、そこそこやばい状況になっているだろう。だが、俺がシスコンじゃなくて良かった。

「ところでおにぃちゃん、午後からりんちゃんとショッピングモールにお出かけするんだけどボディーガードとして付いてきてくんない?」

おいおい待て待て急すぎだろ展開が、

「え..........何故に。」

「だってーどーせ暇てなんでしょー」

「まぁ、確かにそーだけど中学生女子2人に高校生が付いて行くってどーよ。」

「そーんなにあからさまに嫌そうな顔しないでよ〜女子中学生2人のボディーガードなんて人生に数回くらいしか経験出来ないんだよ?しかもほら〜そのうちおにぃちゃんも彼女さん出来るわけだしぃーその彼女さんのボディーガードの事前練習ー?みたいな感じだしだと思って付き合ってよ〜世のため妹のため〜」

いや、世のためは絶対関係ないな?お前のためでしかないな?

「いやぁーそりゃそーかもだけど.....」


午後1時 T駅にて

結局、妹に無理矢理連れてこられたのだが......

はぁーそれにしても荷物持ちの未来しか見えない。俺と妹は待ち合わせ時間の午後1時丁度くらいに着いたのに対し、その前よりも妹の友達、つまり、りんちゃんは待ち合わせ場所に早く着いていた。

「おーいりんちゃん〜〜」

妹が妹の友達、りんちゃんよりも早くに気づき、手を振った。するとそれに気付いた向こうも手を振り返した。

「しょーかい、しまーーす。これが私の親友のりんちゃんでー。で、この冴えない男の人が私のおにぃちゃんでーす。」

「こ、こんにちはっ、春ちゃんのお兄さん。りんと申します。き、今日は一日中色々とよろしくお願いします!」

このオドオドした感じの女の子が森本りんちゃん、どうやら人見知りで学校では男も関わるのを避けていると言うより怖がっているらしい。ただ女子からはその愛らしい姿と裁縫などの手際良さが一目置かれていて人気がそこそこ高いと妹は言っていた。

「おい妹よ、冴えないってのは余計な。こんにちは、春の親友のりんちゃん?だよね?。今日は妹に引っ張られてどーしてもボディーガードをして欲しいって言われて付いて来たからやって欲しいこととかなんかあったら遠慮なく言ってくれていいよ。」

少女はうんと頷いた。

それから俺ら3人で電車に乗り、隣町の最近出来たバカでかいショッピングモールに向かった。

どうやら2人は祝日に着る用の服を買いに来たらしく、男の俺が女性服売り場にいるのはかなり気まずい。というか、俺は特に2人のガールズトークに勿論入る術がなく、ただただ2人の背中を付いていくって感じなのだが、ハタから見ると俺はタダのロリ好きの不審者じゃないだろうか?と思わず考えてしまう。

「ちっ、なんで俺も付いて来なきゃダメなんだし。」

隣で歩いているアルッシュは自前のゲーム機 忍々堂4DX を遊びながら愚痴をこぼした。

「今日に関しては同感だわアルッシュ、正直俺も仕方なく付いて来ただけだ。というか、そんなに嫌ならアルルと転生すれば良いんじゃん」

俺は小声でアルッシュと会話をした。

「いやぁそれがだな、あいつがーーー」

そう言いかけたアルッシュだったが洋服店のガラスにアルルが写り、

「それはですね旦那様、アルッシュくんがあまりにも運動不足だからです。グータラの運動不足に大天使なんて勤めません!なので今日一日中はアルッシュくんが旦那様のお世話をして下さい!」

そうアルルが言うとアルッシュは隣から水を差すように、

「けっ嘘つけ、今日は一日中溜まった魔界チャンネルでやってるDeath or Love ってゆー恋愛ドラマ観たいだけのくせに。」

そう言い返されるとアルルは少し黙り込んで、

「...........だからなんですか?」

えぇーーーこの子なんか開き直っちゃったよ。アルッシュに本音がバレちゃったから心の底から悔しがったな、絶対。

「え、、いや、、そのー別にどうってことはないけども.....」

そのアルルの鮮やかなで鮮明な一言にアルッシュは返す言葉もなかった。

「では旦那様、とりあえず私は今日は休暇でお願いします。勿論何かあれば駆けつけますのでご心配なくーー」

と言って彼女は反射面に現れなくなった。

まったく、悪魔にも天使にも困ったものだ。

そんなこんなでしばらく俺は荷物持ち係としての任務を果たしていた。

「おにぃちゃんー次あのお店行ってくるから外で待っててね〜あ、それともおにぃちゃん、実妹の試着姿を見て見たいー?」

試着姿??と思い、妹の向かう方向に目をやると女性用下着売り場の店に入る様子だ。

「ば、バカ言ってないでさっさと友達と2人で行ってろ!お、俺は外で待ってる。」

「アハハっおにぃちゃんなに顔を赤くしてんの〜そんなん冗談に決まってんじゃんじょーだん〜あ、なんかりんちゃんさっき向かい側のおトイレに行ったからりんちゃん帰ってきたらここの店入ってって伝えといてねぇ〜」

そう言うと妹は下着売り場の中へと入って行った。

全く、うちの妹の冗談も限度を抑えてほしいものだ。

しばらく、するとトイレの出入り口付近で辺りをキョロキョロしている女の子を見かけた。りんちゃんだ。どうやら道に迷っている、というより妹の姿を探しているのか?とりあえず誘導してあげないとな。

そう思い俺はキョロキョロと見渡す彼女に近寄った。

「おーいりんちゃん。」

「きゃーーー!!!すいません、すいません、お金も体も差し上げることは出来ません!」

「いやいや、体もお金も要らないしー、ほらよく見て、俺だよ俺、この冴えない顔見覚えあるだろ?」

どうやら人混みに紛れるとパニックになるタイプの女の子のようだ。

「へ?あ、春ちゃんのお兄さんでしたか...すいません、てっきりナンパかと思いまして...」

「ううん、俺も急に声かけて悪かった。驚かせちゃったね。」

「そ、そんなことないです。私の方こそ今日1日無理に荷物持ちとショッピングに付き合って貰っているのに一言の御礼も言えなくて...そ、その私人見知りで...慣れないといつもこんなんで。」

そう彼女はまだ少し俺にビクつきながらも口を聞いてくれた。

「うんー人見知りってことは妹から聞いてるよ、後趣味は裁縫だったよね?うちの妹、学校のことなんでも俺にペラペラ話しちゃうからなー、あ、もし俺に知られてまずい事とかあったら遠慮せずに春にいいなっ、あいつ普段は聞いてもないのに俺にペラペラと話してくるけど、本当に秘密にして欲しいって言えばあいつ俺にさえ漏らさないから。」

そういうと彼女は少し表情が明るくなり、

「わ、私も春ちゃんから聞いてはいましたが、は、春ちゃんのお兄さんは、や、優しいですね。」

「ははは、そーでもないよ、つかあいつ学校で俺のこと話してるのかよーーまぁ愚痴とかじゃなければなんでもいいけどなー」

「あ、あのそれでお兄さん、春ちゃんは今どこに...」

「あーーごめんごめんすっかりそれ言うの忘れてたわ〜ほら、向かいの下着売り場にいるから、行ってきな。」

「わ、わかりました。ありがとうございますお兄さん。」

と彼女は言って下着売り場に直行した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る