第6話 蟻と戦う
ちまたで話題の、ヒアリの話ではないです。
名前もしらない、小さい蟻の話。
二十代前半のある夜、疲れがひどかったようで、小さいあかりをひとつつけたまま、網戸だけ閉めて、ウトウトしていました。
何かゾワゾワするな、と思って目を開けると、身体中にアリがたかっていた。
声にならない悲鳴を上げて、シーツをめくって外へ払い出し、着ていた物も全部脱いでシャワーを浴びました。
たぶん、小さなランプをめざして、引っ越し中のアリが網戸の隙間から入ってきたのでしょうが、だからといってそんなにたくさん、人にたからなくてもいいじゃないですか。
自分が死人になったような気がして、その晩は明け方までよく眠れませんでした。
とりあえず噛まれたりしなくてよかったと思いましたが、それからアリは、とりわけ恐怖の対象になりました。
さて、ベランダで芝に置くようになって6年目。
芝にあらたな敵が現れました。
アリです。
アブラムシを運んできています。
グラウンドレベルをあげたせいで、小さいアリなら巣がつくれるようになってしまったのかもしれません。
そこは切り払って、巣穴の入り口らしいところは潰し、たっぷりの水をやります。
その時はアリの姿は一時的に消えますが、しばらくするとまたアリが現れます。
アリは輪ゴムの匂いを嫌うというのをきいたことがあったので、芝の周りに並べてみました。
二日ばかり、アリの姿はみられなくなりました。
しかしすぐにまた、芝の周りをウロウロしています。
殺虫効果のある、キトサンの入った肥料を買いました。
水で薄めて、まいてみます。
その時はアリは姿を消しますが、翌日はだめです。
次にホウ酸を買ってみました。
濡れると効果がなくなるというので、雨の降らない日に、芝のまわりにそっと蒔いてみました。
しかし、雨の後のベランダには、まだ、アリの姿があります。
「まてよ。巣は、どこにあるんだ?」
普通に考えれば、一番芝の生えていない場所にあるはずです。
私はプランターの一部を切り外し(越境して生えてくる芝があるからです)、位置を変えて並べ直しました。
目に見えて、アリに遭遇する確率が減りました。
もうしばらく、キトサン入りの肥料で様子を見るつもりですが。
たぶん、この戦い、永遠に終わらない予感がしています……!
追記:それから蟻の姿をみていません。
自分たちがつくった巣のある地面が、移動可能なもので、一瞬で破壊されるということを学習してくれたようです。
頭いいな、蟻。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます