ここが異世界と分かったところで、私自身が何処から来たのか説明は出来ない。違う世界から来ました、なんて言ったら頭のおかしい奴と言われるに決まっている。私は考え抜いた結果、こう言った。


「覚えていません」


 そう、記憶喪失という設定にしたのだ。そもそもこの世界の国や地域を知らないし、こう言うしか無かったのだが。


「…なんだと?」

「ですから、自分が何処から来たとか分かりません」

「つまり、記憶がないのか? 名前は分かるんだよな…?」

「あ、はい。リョウです」

 あっけらかんという、私に彼の顔はますます険しくなる。

 そして私は、ある決意をする。


「あの、お願いがあります。 わた…俺をここに置いてください!!」


 こんな所で死ぬわけにはいかない。なんとか生き延びて絶対元の世界に帰ってやる。そして、この世界をとことん楽しんでやる!

 私は強くそう思った。

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