昨日も思ったけど、やはりこのバリトンボイスはヤバイ。しかも、ワイルドな風貌にピッタリなわけで、ついつい良からぬ妄想をしてしまう。


 あ、お忘れかと思いますが、私はいわゆる腐女子なのです。なので妄想は専ら、男×男なわけで。

 連れてこられた時は、あまりの衝撃に周りが見えていなかったが、そう言えば、ここにいたのは全員男だったような気がする。

 ───なんていう事だ、私としたことが!!!

 こんな美味しい事に気づかなかったなんて。私が頭の中で葛藤していると、上から声がかかる。


「おい、飯だ」

 そう言って、牢屋の扉を少し開けて、朝食らしきものを床に置いた。そしてまた扉は閉められる。


 葛藤中の私の鼻に、美味しそうな匂いが漂ってきた。昨日と同じようなパンと温かいスープ、そして恐らくデザートらしきカシューナッツが数粒。途端、ぐぅっとお腹が鳴った。私は妄想を止め、手を合わせた。


「いただきます」


 まずは腹ごしらえだ。腹が減っては妄想は出来ぬ、だ。




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