③
カンカンと、金属音を叩く音が遠くから聴こえてきた。泥のように眠った私の瞼は接着剤で留められているに、未だにくっついていた。意識だけがその音を拾っている。だが、段々とその音が近づいて来ているような気がする。
いや、気のせいでは無かった。頭の中まで響く金属音が鼓膜を襲う。私は耐えきれず、ガバッと起きた。
「な、何っ!!!」
寝ぼけ眼で周りを見渡すと、自分が入っている牢屋の入口付近に、男が立っていた。その手には、鍋らしきモノとお玉らしきモノ。
───オカンか!!!
アナログな起こし方に、つい心の中でツッコミを入れる。それでエプロンしてたら、完全な漫画のような母親である。だが、残念ながらエプロンではなかった。
「やっと起きたか」
少々呆れ気味で話しかけられる。寝起きに心地よい、低いバリトンが耳を抜ける。
───ああ、やっぱり良い声……
再びうっとりしてしまう。まるでBLのドラマCDを聴いているようだ。
そう、そこに居たのは、昨日のイケボなワイルドイケメンである。
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