「お前、何者だ。どこから来た?その珍妙な服はなんだ?」

 彼は続けざまに問い出してきた。そんな彼に私は、ようやく自分の立場を理解し、なんと答えるか頭の中で考える。が、自分ですらこの状況を把握出来ていないのに答えなんか出せるわけがない。そもそもここは何処なのだろうか、日本ではないことは確かだが。

「おい、聞いてるのか?!」

 答えない私に彼は痺れを切らしたようだ。声が更に鋭くなっていく。焦った私はとりあえず、こう答えた。

「…わ、分かりません」

「なんだと…?」

 返ってきた答えが曖昧だった為、彼の声色に段々と苛立ちが孕んできた。

 ───うそは言ってません!!!

 怒気が含んできた声に私はびくつきながら、心の中で反論する。恐ろしく声に出せなかった。

「……名前は?」

「へ……?」

 突然質問を変えてきた彼に、頓狂な声を出した。


「お前の名だ」


 さて、また困った質問だぞ。なぜなら、自分は本当は女だが、今の容姿は男なのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る