その後の事はあまり良く覚えていない。熊もどきが倒れたと思ったら、今度は背後と脇から複数の男性が現れたのだ。そして、何人かの手には弓矢を持っていた。


「よし、今日は大物だな。これならお頭も喜ぶに違いない!」

 恐らく、この中でのリーダー的な存在の男がそう言った。すると数名の男達が、倒れた熊もどきを何処かへ運ぼうと抱えだした。


 それを固まったまま見ていた私に、リーダー格の男が気づいた。そして近づいてきて、今に至る、という事だ。


「お前、何者だ?なんだ、その妙な格好は」

 そいつは、鋭い目つきで私の事を下から上まで眺めた。

 いや、逆に問いたい。あなた達の格好は何!と。


 そいつらは、まるでゲームの世界やファンタジー漫画などに出てくる、いわゆる山賊的な格好をしていた。


 そんな非現実的な場面に私は、恐怖の固まりから我に返り、思わずツッコミを入れたくなってしまった。


「おいお前、聞いているのか!!」

 なかなか反応しない私に、どうやらしびれを切らし口調が更に強まった。

「は、はい。聞いてます…」

 ようやく口を開いた私に、その男は未だに刃物を向けたまま話した。


 ──そろそろその剣を降ろして頂きたい!


 私はそう願わずにはいられなかった。

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