第8話~アジト襲撃~


さて、俺たちが捉えたスキンヘッドだが、フォルテッド盗賊団に3人いるリーダーの一人らしい。名前をバルスという。


バルスは口を割らず、少し痛めつけたら舌を噛んで自殺しようとしてきた。慌てて俺が回復魔法を使い一命を取り留めたが。

仕方ないので俺が強制的に真実を話させる魔法を使い強制的に話させた。


フォルテッド盗賊団のアジトは現在地からフォッカランまで少し進んだところにある霧の森と言う、霧が辺りを覆う森林の中にあるらしい。霧はフォルテッド盗賊団のアジトにある魔道具が出していて、森の中で暗号を言えばアジトへの道を霧が教えてくれるという。


「~~~~!!」


今俺たちはその森の中にいて、暗号を唱えたところだ。

すると、辺りを覆っていた霧が少し振動した。周りを見渡すと、一か所だけ霧がない箇所があり、道になって何処までも続いている。

そこを進めということだろうか?


霧がない道を顎で指し、合っているのかどうか確認。


「そうです。そこを道なりに進むとアジトです」

と言うのでアジトへ向かうことにした。


霧の森はとても深い霧に包まれていて辺りは何も見えない。

にも関わらず灯は一切閉ざされていないことから、やはり魔法による幻影を見ているだけなのだろう。


「さて、向かうか」

そう言い唯一、霧に包まれていない場所を歩き続けた。


「なぁ、本当につくのか?」


くたびれたのか、剣士のジュンが言う。それにバルスが反応。


「あと少しです」


「あと少しって言ったって、あとどれぐらいだよ?」


「5分程度でしょうか。もう少し歩き続けたらつきますよ」


「そうか......」


しかし、真実しか話せない魔法を使ったとはいえ、バルスってこんなに敬語を使ったりするのか? こいつの人柄はわからないので何とも言いようがないのだが..... 怪しいな。念のためにこっそりもう一度、その魔法を使うが......


(”トゥルース”)


そう、心の中で唱える。

俺はこの魔法をトゥルースと名付けた。

俺は魔法を使うとき、適当に名前を付けて言い放っている。名前が日本語であれ英語であれ、どちらにしろ魔法は発動するのだ。

水の弾を作ったとき、”水弾”と日本語で言ったのにも関わらず、翻訳するための魔法”トランスレーション”では英語の発音で唱えたのだ。


仮説だが、魔法は想像で決まるのではないのか。名前は想像しやすいように言っているだけで、実は言葉はいらないのでは?

実際に今心の中で唱えた時、魔法が発動した証である手の痛みが増した。


「......い............おい! 着いたぞ!」


考察していると、声が聞こえた。耳に響く北斗の大声。

「あぁ!わかったよ!わかった」


「何ぼぅっとしてるんだよ。ここがアジトらしい。中に入るぞ」


「ん!? 北斗、ここ敵のアジトだろ? 何叫んでるんだよ...!」


「あぁ、やべっ! 聞こえてないかな?」


「......物音は聞こえないので、多分聞こえていないでしょう」


「そうだな! じゃあ入るぞ」


「って。勝手に入るんじゃない......! おいおい、そんな不用心でいいのか......?」


「まぁ、北斗さんも入って行ってしまったことですし、あとを追いましょう」



目前には断崖絶壁の崖があり、そこにまた大きな穴ができていて洞窟になっているだろう事がうかがえた。如何にも、ここがフォルテッド盗賊団のアジトですと言わんばかりの風貌に怪しさを感じてしまう。


バルスが北斗の声は聞かれていないから大丈夫と言っていたが......何せこいつはさっきから怪しい。だが優菜が言う通り、北斗が入ってしまっていったからには後を追わねばならない。仲間を見捨てるのは論外だ。友達の北斗なら尚更、行かねばならない。


仕方がないので俺たちも後を続いた。

念のために体中に魔力を通しておく。


前回、敵と戦う際に気づいたのだが魔法を使うときに魔力を右の掌に流したとき、右腕に力が張る感覚を得た。魔力を体に通す行為はきっと身体強化を兼ねているのだろう。


(閑話休題)


さて、洞窟に入った俺たちは北斗を探すため辺りを見渡した。

洞窟は一本道になっているらしく、さらには奥までそれが続いている。

左右の壁は狭く松明がおかれている。そのため奥が見えるが最奥には扉があるようだ。扉が少し開いているので、北斗はもう中に入ってしまったのだろう。


石造りの壁は仕掛けがありそうなほどなめらかで、また、怪しさが増した。ここまで行くと横にいるこのバルスと言う名の言葉の真偽が試されてしまう。しかし真実しか話せなくなる魔法を使ったからには大丈夫なはずなのだが......


ポトフがバルスの頭にはめたアミュレットが少し怪しいと感じてしまう。

バルスが、アミュレットをはめられ崩れ落ちたとき、あまりにもいさぎが良かった。最初からアミュレットが魔法を封じるものだとわかるように。


まさか......ポトフ達はフォルテッド盗賊団とグルなのでは......?

しかし、そうなるとポトフ達は味方を惨殺した事になってしまう。


俺がポトフ達と共に居た時間は短かったけれど、俺はあいつ等を良い奴らだと思っている。信じたくない。


歩いていると俺たちはもう、洞窟の奥まで辿り着いていた。


「入るか」


ポトフが言い、俺に前を譲る。怪しい。


「先に入ってくれ」


「いや......いや、そうだな。先に入らせていただく」


一瞬渋るそぶりを見せ、ポトフは中に入っていった。


ポトフの大きな身体が扉を超えたのを確認し、俺も中に入る。

中は広いドームのようになっていて............!!!


心臓が高鳴った。

汗が流れる。


俺の視界には、ドームの中心で十字架に縛られている北斗が写っていた。


「北斗っ!!!」


そう叫んだ瞬間、後ろに音がした。

慌てて反復横跳びの領域でよける。


俺がいた場所を確認すると、そこには布袋の口を下向きに開け、腕を振りかぶっているビアンカ、ジュン、バガスの三人がいた。ほかにはポトフと優菜、バルスがいるはずだ。辺りを見渡すと、ポトフがタワーシールドを持ってビアンカ達の元へ戻っていき、優菜も優菜で刀に手を添えて、ビアンカ達の前に立っている。


バガスは......

十字架に縛られている北斗の元にいた。


「クソっ」、と悪態をつく。

予想はしていた。だが信じたくなかった。


「何が目的だ!」


「さすが魔法使い! 身体能力も高いとは言え、よけられるのは予想外だったぜ! でもな、どっちにしろお前は屈服せざるを得ない......おい、バルス!」


「へい! ......おいお前! 大人しく捕まらないと......こうだぞ?」


ポトフがバルスを呼ぶ。バルスのほうを見ると掌から火の玉を出し北斗に近づけていた。捕まらないと北斗は燃やされるということか。


(”テレポート”)


ならば、と。

バルスの元に転移で近づく。

腕を持ちそいつの顔に押し付けてやった。すると、バルスは自身が作った炎で顔を焼かれ、そのまま地面に倒れてしまう。


「一人撃退か。あとは......お前らだな?」


「っち。バルスめ、やられおって。作戦は完璧だったんだがなぁ。おとなしく捕まってくれたら命だけは助かったものを......仕方ない。お前ら! こいつを捕まえろ! 出来ればこの手は使いたくなかったが............殺してしまっても構わない」


ポトフがそう叫ぶと同時に俺たちが居たドーム状の部屋、八方向にある石でできた壁から人頭大の穴が出現。そこからぞろぞろと盗賊の恰好をした人間が入ってきた。


50人くらいだろうか。武器もない俺にとっては途方もない数であった。

ただ、幸いにしてだだっ広いこのドーム状の部屋には50人+αの人間が入ってもまだスペースが膨大にあり、間合いを活かせば勝機もあるかもしれない。


北斗が目覚めてくれればの話だが......


俺と北斗の周りに魔法でバリアを作る。


「北斗!おい、北斗!起きろ!」


十字架に縛られ、力なく項垂れる北斗の頬を引っ叩いた。

ビクッと体が痙攣し、北斗は顔を上げる。


「何してるんだ。起きろ! お前の馬鹿力でこいつらをぶったおすんだ!」


「お前か......すまない、無理だ......力が出ない......」


「はははは! 無駄だ! そいつは今その十字架の魔道具によって力が出ない。あの意味不明な馬鹿力も無駄になるな!!!」


「くそぉっ......」


何とか、何とか十字架と北斗を引き離せれば何とかなるかもしれない。だが、先ほどからそれを試してはいるのに拘束が固すぎる。十字架は鋼鉄のように固く、拘束している器具も同じくかなり固い素材で作られていると予想できる。


要するに北斗からの支援は不可能ということか。

パキッと音が鳴り響く。周りを見ると50人もの盗賊がバリアの周りを囲って武器を振り回している。パキッ、はバリアにヒビが入った音だ。


再度北斗の周りにバリアを張り、俺はバリアの外、盗賊から離れた場所に転移した。


俺を見失った盗賊たちが周りを見渡しこちらを見つけ、突進してきた。


だが、残り少数は北斗の周りに張られているバリアをたたいている。

バリアを壊して北斗をまた、人質にしようという魂胆か。


いいだろう。バリアが壊される前に......お前ら全員倒し切ってやる!


俺は顔を前に向け、こちらに迫る盗賊の大群に向かって走り出したのだった。


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