第7話~戦闘狂~


フォルテッド盗賊団に囲まれた俺は20対7と言う絶望的な差を埋めるための作戦を優菜に伝え、味方に広めるよう指示した。


優菜が走り去り一人になったのを好機と見て敵の5人が俺の周りを囲んだ。


「いいじゃねぇか!! だが、5人じゃちょっと足りないんじゃねぇの???」


完全に戦闘狂に思考が変わった俺を見て周りにいた5人の内一人が悲鳴を漏らした。


「好機!!!」


迷わずそいつの元へ走り寄り顎を叩こうと腕を上げる。流石殺しを本業としている盗賊団と言うべきか、顎を貫かんばかりのアッパーカットは敵の左手に防がれ反対の手に握っていた短剣で俺を刺そうとした。その剣筋はまっすぐ首を狙っており避けなければ死ぬだろう。


だが、遅い。

俺は防がれていない方の手を使い相手の手首を捻る。 そのまま俺を刺そうとした推進力を使い相手の喉仏を刺した。


今のは楽しかったな!と思う暇もなく、背後に気配。


後ろに新手が迫っていたので回し蹴りで頭を蹴った。

見事気絶。


残り三人。


一瞬で味方が二人倒されたことから残りの敵は動揺しており難なく気絶させることが可能だった。


周りを見渡すと北斗の周りにはもう既に敵が十人倒れており、ポトフ達は最後の一人を斬殺していた。


ちなみに北斗の腕で拘束されていた敵の弓使いは気絶しており腕の中で北斗に身を任せている。


さて、最後に残っていたスキンヘッドは目を閉じている。 何をしているにだろうか。


そう思っているといきなりスキンヘッドの周りから炎が飛び出し、俺たちに襲い掛かってきた!


防御しなければ! 水の膜を張れば防げるか??


「”水壁”」


炎の弾は俺が張った水の壁に阻まれ、蒸発して消えていった。


不意打ちで炎を放たれたので、咄嗟に魔法を使ってしまった。炎の弾をよけたところで森が着火し、より危ない状況になってしまうので使わざるを得なかったというべきか。驚いたのは俺だけではなく、スキンヘッドも驚きに目を見開き、こちらを擬視している。


スキンヘッドの後ろを見るとポトフ達がゆっくりと敵に近づいていた。手にはロープを持っており、それで拘束するつもりかと思われる。


「”水弾”」


ポトフ達にも策があるのだろう。俺は俺で気を引くために体の周りに水の弾を3つ出現させた。

それと同時にスキンヘッドも火の弾を3つ出現させる。心なしか威力は先ほどの火球より強いと感じた。


緊張した空気が辺りを浸食する。


「……」


何秒たっただろうか。先手を切ったのは俺だった。


「行け!」


手を前に突き出し、水球をスキンヘッドに向け発射。

向こうもそれに合わせて火の弾を発射した。

俺の水球と、スキンヘッドの火の弾が触れるその瞬間。


爆発。

ジュドーンと強く蒸発する音が鳴り響く。

それに合わせてポトフ達も駆け出した。


直ちに5人がかりでスキンヘッドの手足をロープで拘束、頭にはアミュレットらしきものをはめる。拘束されたスキンヘッドはガクリと地面に項垂れた。


拘束するのは良いが、魔法を使われると困る。ポトフ達もわかっててやったのだろうが、一応聞いておくに越したことはないだろう。


「ポトフさん、こいつは魔法使いだ。大丈夫か?」


「大丈夫です。この、頭にはめたアミュレットは魔法防止の効果があるのです。普通は魔法のせいで近づけないので価値はありませんが、念のために持っておいてよかった。」


「そうか、安心した」


「終わったか?なら拷も......尋問だ!」


北斗がフォルテッド盗賊団のメンバーをロープでずるずると引き摺りながら歩いてきた。


「お疲れ北斗。そうだな。というか、普通に死体を引き摺っているが気持ち悪くないのか?」


「あん? んなもんなれたよ。」


北斗が言っているのは地球での、大地の腐敗のことだろう。あれは多大な死者を生み出した。運が良いものは見ないで済むのかもしれないが、俺の住んでいた場所では道を歩けば半分の確率で死体があるような状況だった。大抵は時間をかけて体が病弱していくが、隣を歩いていたものがいきなり倒れて死ぬということも少ないがある。

異世界に行って浮かれたのか、その事をすっかり忘れてしまっていた。

北斗の父親はその少ない例の内の一人で、仕事の為、家を出ようと玄関に行ったらいきなり倒れて死んでしまったのだとか。


そんな、遠い異世界で起きた大惨事を知るものはこの惑星には俺と北斗以外いないが...... 例え北斗が忘れようとも、俺は忘れまいと心に誓った。


「そうだったな。すまない......」


「いいんだ」


そう、悲しい話はおいておいて、今回は盗賊団のアジトを見つけることだ。俺や北斗は尋問等はしたことがないが、要は恐怖を与えれば良いのだろう。本でよんだ。


「さて、尋問だな。北斗。手を貸せ」


地面で項垂れているスキンヘッドのツルてかな頭を見ながら俺はそういった。





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