第6話~自己紹介と襲撃~
ポトフ率いる4人を助けた俺と北斗は、ポトフ達からの依頼で山の麓に存在するフォッカランなる町への旅を始めた。
現在地からフォッカランまでは遠い。
乗用物が無い俺達は徒歩で街に向かうしか手段はなく、結構な長旅になると想定されていた。
えっ? 魔法を使え?
ふざけるんじゃない。前話では魔法には代償が必要だと説明したばかりではないか。今でも手は痛む。何故手が痛むのかはわからない。だが回復魔法を試しても痛みが増したとだけ言っておこう。
閑話休題。
徒歩でフォッカランまで向かうわけだが勿論、生存の為に物資が必要だ。
ポトフ達の食料は自分たちの分しかなく、俺たち、主に大食いな北斗の分まで含めると一日は持たないだろうと言う話になった。
なので旅をする道中、食料になりそうな獲物はいないかと探しているのになかなか見つからない。
今は、旅を始めて二日目。食料は昨日食べつくされ、俺たちは食べ物に飢えていた。
そろそろ獲物は見つからないだろうか。
そんな事を考えても獲物が来るわけでもなく、思考を中断し横を歩いている計6人のゾンビ達を見た。
「あぁぁぁ、食べ物ぉぉぉぉ......」
「うひゃひゃ!! ポトフがポトフに見えてきたぞ!!」
「北斗さん! やめてください! 本当に! ギャアアアアア!!!」
ポトフが北斗に襲われていた。
北斗の肩を持ちポトフから引っぺがす。
「北斗!やめろ!」
「んあ!!! 俺は何を! ポトフさん、ごめん......」
「い、いえ...... お気になさらずに......」
ポトフが軽く頭を下げる。
「......」
暫く沈黙が続いた。
沈黙を破ったのは負傷していた女性だった。
「あの「グルル......」」
俺に話しかけたらしいその言葉は北斗のお腹の音に掻き消され、話す機会を失った女性は顔を俯いてしまった。
救済として剣を持った青年が女性に続いた。
「そう言えば俺たちは名乗っていないな。俺はジュン。主に剣を扱う。宜しく」
ジュン。 何とも見た目通りな名前だと思った。
茶色がかったショートな黒髪に日本人と何処か欧米のハーフみたいな立ちをしている。
それに続いて槍使いの青年と負傷していない方の女性も名乗った。
「僕の名前はバガス。槍使いです。よろしくお願いします」
「私はビアンカ。弓使いよ。よろしくお願いします。魔法使い様」
バンガは生真面目そうな人で、ビアンカは何と言うか、体の凹凸が凄いグラマーな体をしている人だ。
どちらもブロンドの髪を持っていて兄妹っぽさを感じさせる。
最後には負傷していた方の女性だが、おどおどしていて話しそうも無い。そう思っていたら北斗が身を乗り出した。
「俺は北斗っ!武器なら何でも使えるがやっぱり拳の方がやりやすい!粉砕!玉砕!大喝○じゃあ!」
北斗がそうハイテンションで言ったのを聞いて勇気が出たのか負傷していた女性も名乗った。
「わ、私は優菜ですぅ! か、刀を使います......」
優菜は中肉中背ぐらいの、背中まである紫の髪をもった女性だ。幼い顔立ちをしているものの手にはまめが出来ており、中々経験を積んでいるようだった。
というか、わぁお。刀を使うのか。優菜を見ると、彼女の腰には正に刀と言うべきものがあった。この星にも刀があるのか。 驚いた。
「ま、魔法使い様はどんな方で仰せられるのでしょうか!」
「あぁ、名乗っていなかったな。俺は......危ない!」
そう言い俺は口を開いたのだが、見てしまった。 何かが優菜に向かって飛来しているのを。
咄嗟に優菜の肩を抱き寄せる。
ブゥンと目の前を何かが掠める音が鳴り響く。
「全員警戒! 北斗、右側の木に何かいる!」
俺が叫ぶ。北斗が慌てて木の元へ走っていき木を殴った。
木が少し傾き、上から人が落ちて来る。そこを北斗が拘束。
俺は近くの茂みに足元にあった石を投げ付けた。そこから人々がバッと出てくる。
「彼奴らは、フォルテッド盗賊団!」
ポトフが叫んぶ。
盗賊団なのか。これはかなり厄介なのに絡まれたな。
一旦北斗を呼び寄せる。
「北斗、戻ってこい!」
北斗が腕に敵の弓使いを抱え戻ってきた。
敵方面から舌打ちをする音がする。
「お前これ盗賊に襲われるってテンプレだぞ!アジト見つけて中に捕まった人質助けたい!」
「あぁ北斗、分かってる。まずは敵の無力化だ」
今俺たちはフォルテッド盗賊団らしき集団に囲まれている。
俺たちには拳で最強な北斗、タワーシールドを持つポトフ、剣士のジュン、槍使いのバガス、弓使いのビアンカ、刀使いの優菜が居るのに対し、ざっと二十人か? 全員革で出来た鎧を装備しているが、一人だけ革の色が違う人物がいた。
スキンヘッドで目に引っかき傷の後があるこの人物はフォルテッド盗賊団のリーダーか、そうでなくとも高い地位に居るのは目に見える。
大きな斧を持っていて、俺が燃やした茂みに隠せるような場所など無かったことからポトフの持っていた魔道具と同類の物を持って居るのは明らかだ。
まだ隠し球があるのだろう。
厳しい戦いになってしまうだろう。魔法は最後まで取っておきたい。
「あ、あの......魔法使い様......」
胸元から声が聞こえる。
そう言えば優菜を抱き寄せたままだったことに気づく。
「あ、すまない」
「い、いえ......」
「丁度いい。優菜、聞いてくれ。俺たちは囲まれている。これから言う作戦を他の奴らに言ってくれ。スキンヘッドは多分魔道具を持っているから、他を何とかして一人ずつ倒していって最後は全員でスキンヘッドを襲撃だ。スキンヘッドが近くに来たら退いてくれ。分かったな?」
「分かりました!」
そう言い優菜は仲間の元へ走っていった。
去っていく優菜の姿を見届けながら、俺は暫し興奮した頭を落ち着かせた。
ダメだ、俺も戦闘狂の類なのだろう。 少し厳しい状況にいるだけで、体が武者震いしてくる。
スキンヘッドを見つめ不敵な笑いを浮かべる。
さて、一丁やりますか!
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