エピローグ ユリア

王都王宮内部地下の神の国へと続く遺跡の中へと、健常だが気を失っているこのみを手を失いながらもシンクが向かっていた。

「ハハハっ……マダダ、マダ、オワッテナイ」

遺跡へと続く階段をくだり、そして石でできた杯のある部屋まで来た。

「コイツヲ、コイツサエアレバ、コノセカイノ…………スベテヲッ……グハッ」

そして、シンクがその杯へとこのみを置き、その腹部をその歯で掻っ切ろうとした、まさにその瞬間、シンクの上方の天上からいくつもの光の矢が降ってきた。

光の矢はシンクの腹部を貫く、内臓をつぶし、心臓に傷をつけた。口から、腹部から、体のありとあらゆる場所から血が噴出し、そして、

「ナン……デッ、オマエガッ!」

途切れ途切れにノイズにノイズがかった声を、そして天から現れたその者にかけた。

「私の同胞がたくさん殺されたときぶりですかね……シンクさん」

そう、シンクの目の前に現れたのはその背中から大きな翼を生やした女神の如く格好をしたユリアだった。

「ゴノオオオオオオオオッ!」

その言葉を聞き、既にどう頑張っても動くはずのない体を動かし、天に浮くユリアへとその手を伸ばそうとする。だが、

「無駄ですよ。あなたには……しっかりとマーキングがなされているんですから」

声音を低くし相手を威圧するような態度で言葉を放ち、そしてシンクへと光の矢が降り注ぐ。

「《太陽の光》……闇に生きるあなたは、等しく光に生きるものに注がれる聖なる光で消えなさい」

「グオオオオオオオオオオオオッ!」

次々と光の矢がシンクへと降り注ぎ、ついにはその全てがこの世から消えた。

そしてシンクが完全に消滅したことを確認して、

「ふぅ……まったくしぶとい人です」

そして杯の上に倒れているこのみの傍に寄り、

「お疲れ様でした、このみさん。……ですが言ったとおりでしたよね。私もあなたもちゃんと生きている。それに……お兄ちゃんに会えてよかったですね」

そしていつぞやと同じようにユリアはこのみを抱きかかえ、平和へと向かう王都の地上へと向かった。

そして直後、世界中に不思議と心地のよい音が響きわたった。

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