エピローグ 布目颯也

「なんとか……なったみたいだね」

場所は東京より少し離れた場所、壊されることなく残ったイルミナティの本部にて颯也は椅子に座り、自身の生気が抜け落ちるのを感じながら、静かに呟いた。

「どうやら……いろいろなことがなかったことになったようだけど、さすがに僕の命は削られたままらしいね」

まぁ、神に歯向かうとか格好つけて最後まで僕は何もすることができなかったわけだから、これはこれで僕にふさわしい最期なのかもね。

「だけど……できることならイルミナティをもう少し見守っていたかったな……」

颯也の脳裏に映し出されたのは、過去の思い出。まだイルミナティ創設当時の小さな組織のとき、仲間を守るため組織を守るため死んでいった仲間たちの顔、言葉、そして残していくことになるであろう仲間たち。

「随分ながい間、僕の我侭を突き通して、だけどいま会いに行くよ……。ははは、まだ当分はそっちに行かずに、この組織を守り続けるって約束したのに……怒られてしまうかな。でも、少し、たのしみ……で」

途切れ途切れになる言葉を、静かに目を瞑りながら出していく。そのことにより、残された僅かな命の破片をなくしていくように、そうして頬に一筋の跡を残し、この世のすべてから掴んでいた手を離した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る