第19話 わたしの決意
「心の準備はいいですか?」
声を潜めながら、静かにそっと私の耳にユリアが問いかける。
「それは私の台詞……。ユリアこそいいの?」
「これで……いいんですよ」
口元に微笑を湛え、ユリアはそっとそう答えた。
「死ぬことになったとしても……?」
「大丈夫です、そんなことにはなりませんよ」
「そう……」
私とユリアはそんな短い会話を、古代の叡智を体に忍ばせ、手に携え、王都の裏手で隠れながらした。
王都が襲われた日から三日が経とうとしている。私たちは王都付近の遺跡を巡り、現代の技術では到底作り出すことのできない道具、古代の叡智を集めた。神が人のために残したともいえる超常的な力を持つ道具。王都を中心として点在する遺跡にそれは保管されている。それを扱えるものは数少なく、元よりその体に力を宿している者のみに使うことが赦される。私も、ユリアもそんなちょっと普通とは違った人。だけど、私たちだから王都にいるモンスターと闘うことができる。
体力的にも、統率力的にも、数的にも、私たちは今の状況下でのモンスターに真正面から戦って勝つことは絶対にできない。
私一人だけだったらどう頑張っても、勝つことはできない。
そこにユリアの知識が加わった今現在まできてどうにか戦えるところまできたのだ。
「ユリア、裏のことは任せたよ」
「はい、しっかりと仕掛けておきます」
「じゃ、行ってくるね」
「はい、いってらっしゃい」
その時交わした私とユリアの会話はとても短いものだった。時間にしてみれば一分にも満たないくらいに。だけれどその裏には、少なくとも私にとって命をかけた決断が存在していて、心のどこかでひかるのことを考えたりしているのだ。
うすうすとわかってきてはいる。おそらくこの世界での私の役目はひかるに会うことで終えるのだろうと。だから、この戦いで決して死ぬことなどあってはいけない。
自然と体に力が入り、私の小さな体は静かに音をたてないようにして王都内に足を踏み入れた。
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