断章5 神への反逆
いやに明るいな。
今、自身が歩いている場所さえ分からないくらいに周りは光に包まれている。
これが、神への階段と呼ばれるものか。
神々がいる場所へと行くための禊の光。
まぁそれはそれで、今の僕は穢れに穢れて呪いが身体を蝕んでいるようだから、清められたら一溜りもないのだけれど、今こうして無事でいると言うことは結局それも伝説上の話というわけなのかな。
まあ元の世界の知人二人に大きな嘘をついて、だまして、裏切って、傷を負わせて、これじゃまるで悪知恵しか働かない悪者じゃないか。
だがそれも、また必要なことかもね。
誰かが憎まれ役を引き受けなくちゃ、この世界はもとには戻れないし、たとえもとに戻ったとしても今まで通りだ。
神への反逆は僕一人でいいし、逆にそのチャンスも今しかない。
世界の改変、いやこの場合は並行移動といったほうがいいかもしれないが、それが行われたということは僕たちに重い運命を背負わせた神が代替わりして、神の望む世界へと僕たちが移動したということ。
僕たちだけがそれを覚えているのは、おそらくあの瞬間に神に近い場所にいたから。
僕と、ひかる君、このみちゃんと、あと僕たちを襲ってきたシンクかな、元の世界を覚えているのはせめて人間と呼べる範囲ではこの程度だろう。
思うところに、シンクが王国内に収まる器ではないから、領外でモンスターと一緒に仲良くやっていて、人への、もしくは神への下克上とかいう反逆を始めようとしているのかもしれない。
あいつがこの世界でどんな力を持っているか分からないからこそ、僕は僕自身の神への反逆を速めなければいけないし、それにシンクがこの場所に辿りつくまでには王国を占領して、もう少し時間がかかるだろう。
あいつがこちらに来てしまったら、僕にできることはもう何もないし、逆にそこであいつらの勝ちが決まる。
そこは、もうひかるくんとこのみちゃんに懸けるしかないのだけど、なんだかんだ言ってあの二人は強いし、惹かれあうし、何かを集める力を持っているから大丈夫だろう。
でも、やっぱり気になるのは、ひかるくんのこの世界での立ち位置かな。
僕の見立てでもそこそこやるとはおもっていたけれど、いきなりこの王国のトップとは思いはしなかった。
しかも、聞くところにその強さはなかなかのものだ、と。
これは、何か裏があるように考えられるんだけど。
まあ、それでもシンクとは結構きついのかな。
なんにしても、僕の方もそろそろ気合を入れないとな。
なんせ、こっちは一人の戦いだ。
いいさ、すべてをうまくまとめてやるよ。
どんな予想外のことが待ち受けていようと、僕は、布目颯也は神を相手取る。
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