断章4 下克上の言葉
領外にある深い森の奥には人の気配が全く感じられなく、人ならざる気配が所狭しと漂っていた。血生臭く、虫がはびこり、唸り声のような何ともつかない不気味な音がざわめいている。
「はぁぁぁぁ。ったくよぉ、ウズウズするねぇ」
そして甲高い気味の悪い声が木霊する。
「まぁったく、この世界の神様トウヤらはアタシたちをこんなところに追いやって……、ムカツクなぁ。……ダケド、そのおかげでコロシに大義名分がついて、本当はそんなことどうでもいいんだけどサ、いいじゃないか」
ノイズがかった不可解な言葉を発すその女は、明らかに獣に類した人間の女は立ち上がり、歩き、両手を広げ、天を仰いだ。
「これは、まるで天がアタシにそうしろと命じているかのようじゃないか。どっちにしろ、あっちでもこっちでもアタシができるのは、ヒトを殺すということダケ」
そしてさらにもう一歩踏み出す。
次の瞬間には女の目の前に光る壁のようなものが出現し、周りにいるヒトを欲している獣たちも動き出す。それはモンスターと呼ばれる化け物たちだ。その姿、大きさは様々だが、一様に何かを欲している目をしている。
「にしても、嫌だ、煩わしい、この記憶というものは。その時はまだ、アタシではなかったけれど、あの男は随分とアタシにメーワクをかけたみたいだ……」
そして、それはアタシがあの時殺そうとしていた賞品についていた邪魔な存在に違いない。本能でそう感じてる。
「ムカツクなぁ、本当に……。ま、イイカ。どうせ、みんな、ぜんぶ、絶対に、最後には、この地上のすべてのヒトを殺すんだから。どうせ、ヒトは踏みつけるための階段だ……待ってろよ、カミ」
そして女は光る壁に向かって歩を進める。
「ククク、いいねぇ。さぁ、下克上の始まりだ!」
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