第10話 中央大臣
「じゃ、行ってくるよ」
そう家の玄関で僕は彼女に告げる。
「うん、行ってらっしゃい。なるべく早く帰ってきてね」
ふゆかは甘えるような声で僕に願いを伝える。
「分かった、なるべく早く帰ってくるに頑張るよ」
僕はそして家を出た。婚約の儀式が終わってから、僕はふゆかとの話を聞いて、次の日の朝、僕は王都へ向かっていた。
姿格好は、一応騎士の制服の上に、目立つのが嫌だからこげ茶色の外套を羽織っている。こっちの世界では、それなりに涼しい気候みたいだからこんな恰好をしていても大丈夫だ。
この町は王都からは比較的近いところにあるから、ここから数時間移動すればすぐに着くことができるだろう。今日の昼には王都に着いて、そこで記憶した通りのことを話せば今回の任務は無事に終えることができる。
しばらくは騎士として仕事をしなければならないから、すぐに帰るというのは無理かもしれない。それは少し彼女を寂しくさせるかもしれないけど、僕にはそれ以外にやるべきことがある。僕がこの世界にいる限り僕はふゆかのことを傷つけないように思い続けるけど、もしかしたらそれでいいかもしれないけど、今僕の身に起こっていることも知らなくちゃいけない。
昨日の夜、ふゆかと僕との話を聞いて、やっぱりこの場所にいなくちゃいけないのは、この世界の僕だ。
同じ僕でも、僕から彼女を奪ってはいけないし、この世界に居続けてもいけない。
昨日の僕は言ってしまえば今日の僕とは違って、ただ彼女のことを思っていただけなのかもしれなくて今も姿勢的には彼女のことを思ってはいるけれど、この世界の僕には負ける。だから僕は僕でこの世界から元の世界に戻る方法を見つけなくちゃいけない。
そう思って王都への道についた。
その街を見た瞬間、僕は本当に別の世界に来てしまったんだなと感じた。
僕の世界と比べて、ここは時代設定が、というか都の造りが全く違う。
王都とあるだけ、人も多く建物も造りが立派だ。写真の中でしか見たことのないような、世界遺産のような荘厳な雰囲気がひしひしと僕の身体に伝わってくる。木造建築、鉄筋コンクリートなんてものはない。レンガ造り、石造りの建物があたりにたくさん建てられ、中には茅葺屋根のものも見える。揃いも揃って民家・商店には煙突がつけられ、そこからはもくもくと煙が立ち込めている。きれいな石畳は人や馬車のようなものが行きかうたびに、カツカツと風情のある音を鳴らし、街灯には電球なんてものはなくどちらかといえばガス灯に近い様相を呈していた。
言ってしまえば、夢の中でしか歩いたことのない場所を僕は今歩いている。
だからと言って、僕は不思議とこの世界を全く夢だとは思わなかった。
それがなぜだかと言われれば、圧倒的な現実性が多分、無意識のうちに僕のその考えを根こそぎ頭の向こう側に持っていってしまったからだろう。いま肌で感じている空気が、鼓膜を震わせている響きが、目に映る景色が真実だと告げている。
今しばし頭の中で王都の地図を広げる。円形状に広がる王都は、その中心に宮殿という王および執政の重要部分を司る大臣そのほかの組織がある建物がある。宮殿には王都外部から四本の大通りが続いており、そのうちの一本を僕は歩いている。
もちろん、今回の任務の報告を行う場所も王都だ。僕はその場所へと行かなければならない。もともと目立つのは好きでないけどさすがに不審者かと思われるこんな格好のまま宮殿へと行くわけにはいかない。
だから、僕はそこで羽織っていた外套をぬぎ、持っていた鞄に入れた。
その瞬間に騎士の制服が僕の周りにいる人の目につき、周囲の視線が僕に集中する。
制服の肩口には僕の階級の証となる金の三本線とその上下に合わせて五つの星が縫いつけられている。その証が意味することを詳しく知らないけれど、あらかたの階級は知っている。階級色は全部で五色あって金はその一番上の色で、星の数は王から授与された勲章の数。つまり僕の歳でそこまでの騎士の階級をもらっているということは前例なく、それほどこの世界での僕の立ち位置は上、軍で言えば大将レベルなのだろう。
元の世界でも、この世界の僕の歳になって少しでも今の僕と考えが違えば、こういう立ち位置に立っていたかもしれない。みんなを、この世界の皆を守るためならそういうことに力を使ってもいいかもしれない、そう思うのだから。
だが例え守るためでも、別の世界であっても、視線を集めるのは僕にとって好ましいことではない。周りの人間の注目を集めて陰で噂されて求めもしていないのに勝手に過剰な期待をされる。無言だろうが有言だろうが圧力とかそういったものを受けたくない。
だから、あくまで平然を装って、いつもの歩きよりも数倍早く歩く。
周囲では、さも肩を張って、威厳のある姿として映っているかもしれない。
あくまで想像だけど……。そしてそれを気にしない風にした。
だから気づくといつの間にか人気はなくなって、僕は宮殿の中にいた。
ただただ広く、白い大きな丸柱の続くその場所を通りながら僕は前を行く案内人の背中を追っていた。
緊張は……ない。
いまいち、ここまで来ても、実感がわかない。
今現在、この国の唯一の王は重い病にかかって病床に臥している、らしい。
だから僕が話をするのは、この国を今実質的にまとめている三大臣の内の一人だ。
となると必然的に僕が向かうのは王の間ではなくて、三つある大臣室になるだろう。
僕にはそこそこの信頼があるし、おそらく大臣とは一対一と話せるはずだ。
ならば、交渉もうまくいくはずだ。
それから少しすると大臣室の前に着き、案内人がノックをして、要件を伝え、そのまま僕に部屋に入るようにすすめ、去っていった。
一つ深呼吸をして、僕はその木製の重い扉を開け、中に入った。
「やあ、まずまず予定通りといったところかな」
「なっ……!」
その声を聞いて、僕は大臣の前だというのに、そんな素っ頓狂で情けない声を出してしまった。
「まあ、君がここに来ることは君の任務が無事完了したと風の噂で聞いてから、予想はしていたよ」
目の前の人物は、身につける大臣服があまりに似合わないほど自由で気ままだった。
「でも君は思ったより混乱していないみたいだ。だから、僕の予想の中で君はもっともはやくここに辿り着いた」
銀色の癖毛を持ち、その紅色の瞳は何を映しているのかが読めなくて、それはその場所だけにとどまらないで、彼自身でもある。
つかみどころがないというのが一番しっくりとくる、布目颯也が僕の目の前で大臣として、生きて存在していた。
「君の言わんとするところは大体分かるよ。それは当然のことで、僕にもその気持ちは分かる」
僕の心は、まるっきりこのみを目の前にしたときみたいに、読まれていた。
「……なんで、分かるの?」
「分かるさ。君の言おうとしていることぐらい。忘れたのかい? 僕はイルミナティのトップだ。それくらいのことができなくて、組織をまとめる力が持てないわけがない。君だって、それくらい分かっているはずだろう?」
嫌なところを突かれた、と思った。
分かっているさ、僕に良くも悪くも裏表がないのは。上に立つ人間はどこか本心を悟られないようにするのが当然なのだろうけど、そしてこの世界の僕も例に漏れずそうだったのかもしれないけど、僕は違う。
「分かっているよ、それぐらい。で、なんでここに颯也がいるの? 僕は大臣に会いに来たんだけど」
「僕が大臣だ。ここにいるわけは君がその場所にいるのと同じ理由さ」
あっさりと僕の問いに答える。予想してのことなのかは僕には読めない。
「だったら、やっぱ颯也もこの世界に僕たちのいる世界からやってきたの? というか、生きてたの?」
あの状況の中で、とても生きているとは思えなかったけど。
「まあ……ね。こっちも一応は神の創りしゲームの参加者だから、それなりのしぶとさはあるよ」
「そう……よかった。でも、今なんていった? 神の、創りしゲーム……?」
また神という言葉が出てきた。
「あぁ……そっか。そういえば、このみちゃんに口止めされてまだ話していなかったね。ま、ここまで来れば世界も違うし、この事を話しても話さなくてもどうにも変わらないか。……ひかる君は聞きたいかい? 元の世界で起こっていたこと、僕やこのみちゃんの立場を……」
以前、このみが口を開こうとして、だけど詳しくは聞けなかった話。
颯也が話そうとしてこのみに止められた話。
すべては、この状況もそこから始まっているというのか。
だったら、僕は、
「聞きたい……今起こっていることも、あの時起こったことも、僕は知らないままだ」
「そうかい……だったら話すよ。といっても、僕が知っていることなんてそんなには多くはないけど。そうだね……始めはやっぱり神の創りしゲームの説明からになるのかな。ひかる君、君は神というものを信じるかい?」
「神……いや、僕は個人の自由だと思うけど」
「つまりは、いるって信じてないってことだね。まぁ、世の中の大概の人間に聞いてもおそらくはそう答えるだろうが。だけどね、神は存在するんだ」
「神が……?」
でも、なんとなく分かっていた。このみや颯也の口ぶりから、そしてそう思ったこともある。だから驚きはあったけど、そこまでは大きくなかった。
「神と言ってもそれぞれが思い浮かべる姿は様々だろう。あくまで概念として、誰かの言葉として、もしくは万能の人間として。天才を言い表す言葉として、まさに神の子だ、とか言う人もいるけれど、それは得てして的を射ているんだ。事実、神は元々人なんだから」
神はもともと人であった。それもなんだか頷けた。神話では、神は自分の姿を似せて人を作ったと言われてきているのだから、この場合逆だけど荒唐無稽な話ではない。
「いつから、どこから人が神となったのかは分からない。だけど、僕たちの世界では人が神となり、そして様々なものを創りあげた。創造神、僕たちの言うところの神はまさにそれだ。すべてを創ることができる神、何を思ったのか知らないけど、その神がいきなり僕たちを集めたんだ。名もない少年少女、企業家、秘密組織の創設者、殺人狂、まったく接点のない僕ら六人が神だと言い張る者の前に集められ、そして説明された。
『お前たちの中から神へとなるものを選ぶ。これから先十年以内に、この少女を捕まえ、そして儀式を行え。儀式を行ったものが神となる』
そんな短くいろいろなと足りていない言葉と共に現れたのは、まだ齢幼い雪原このみ、そうこのみちゃんだった」
「え……」
思わず絶句した。なんでこのみが神と同じ場所にいるんだ。だけど意識せず思い出したのはこのみのあの一言、「人に嫌われている……いやなことに神様には好かれてるけど」
その全てが颯也の言葉の中に現れている。
「まぁ、他にもいろいろとあったんだけどね。そこからこのみちゃんの、おそらくだけど、生きるための逃走人生は始まった。そこから九年が経った。このみちゃんは君と出会い、行動を共にして、そして君が体験したいろいろなことがあって、今現在に至るわけだ」
じゃあ、このみはずっと生きるためだけに逃げていたのか。なんとなく、その一端は垣間見ていた。その人生を想像していた。そして結果的にそれは大して間違ってなかったけど、その思いは僕がこのみとの約束、このみを守るという約束を破ってしまったという結果に帰結した。
「僕はあの騒動から何とか生き残って、ひかる君もそんな感じだろう?」
「…………颯也の考えてることとはちょっと違うのかな。きっと僕にこのみを守ってほしかったんだろうけど、結果的に僕はこのみを守ることはできなかった。僕たちはあの時、一緒に炎に包まれて、そして……」
「そう……かい。ま、そこまで落胆するまでのことではないよ。君が生きているということは、君と行動を共にしていたこのみちゃんが生きて、そして生きているならばこの世界にいるはずだ」
「もし……生きているなら僕はこのみを捜したい。それに元の世界への戻り方も……。何か知ってないの? この世界のこと」
「この世界のことか……まぁ、知る知らないで言えば知らないけど、推測はできるよ。僕たちがここにいるほかの人と違ってもとの世界の記憶を持っていること、そして人智の及ばないことが起きていることを考えれば、この出来事は神の仕業であると考えるのが妥当だろう」
「神の仕業……いやそれはそうなんだろうけど」
まぁ、今の話を聞けばそう考えるのが普通だけど。
「あれ……伝わらなかったかい。つまり、この世界は神が新しく創り上げた世界だ。そして、どこの世界にも神へと繋がる話は存在している」
神へと繋がる話、神話のことかな。でも、確かにこの世界を創ったのが神なら、この世界に神はいて、会う事ができるかもしれない。颯也はそれが僕の知りたいことへの一番の近道といっているのか。
「じゃあ……聞かせてくれないかな。颯也が僕にしてほしいこと」
そして、それはいつかの時と同じように、僕に何かをさせたくて口に出しているのだ。
僕も、それを受け入れることが僕のしたことへの近道となることを知っている。
だから、その言葉を口に出した。
「いいよ……」
にやっとした笑みを浮かべ、そして唐突に一つの物語を話し始めた。
あるなにもないまっくろな場所に二人の神がいた。
二人の神は光を創りだし、星を組み立て、生き物を生み出した。
だけど、それと同時に善と悪を生み出した。
善と悪とは、すべての生き物に潜み、お互いはいがみ競い合った。
血を血で洗いあうような、そんなひどい時が長く続いて、それでもなお戦いがやむことはなかった。やむことのない戦いの不満は次第に募り、誰が仕向けたのかもわからない故に、その怒りが向けられたのは己自身の善と悪。
しばらくして戦いの火種の、すべてのものの中に在る善と悪への巨大な怒りという名の威信が姿かたちを現して、それは生まれた。
善と悪の権化。
まるですべてを支配する将軍のように、その二つの存在によって世界は二分され、さらに戦いは激しくなっていった。ともすれば、その世界そのものが傾いて、ひっくり返ってしまうくらいに。そのことを危惧した神は自分自身の力をわけて、新たな神を創りだし、善と悪のバランスが崩れないように、監視させた。
その後の世界では戦いがやむことはなかったが、善と悪のバランスは保たれ世界がひどく傾くことはなくなった。今でも、善としての人、悪としてのモンスター、戦いは続いている。
「そこで、一端の話は途切れる。けれど、密かに、そんな話が残っているからには、この話にも続きがあると考えられてきた。そして、神の分身ともいえる者たちはどこにいて、善と悪とを監視しているのか? 僕は、というかこの国の研究者はね、こう考えている。この世界には王国と領外の他にも神の国というものが存在する、と」
ふう、と颯也はため息をつき言葉を出すのをやめた。
そして、颯也は少ししてまた話しはじめた。
「僕はこの世界に来て、まずこの記憶に残っていることから神に関することを探した。それで、たどり着いたのがこの神話と巫女に関することだ。神話はさっき話した通りで、次は巫女に関してだけど……」
巫女、その一単語が僕の耳を通り過ぎたとき、どこか懐かしい影が頭をよぎったような感じがした。ほとんど自分自身でも気づかないくらいで、その正体がなんだかは分からなかったけど、その時僕は何かを予感した。
それも、結局は颯也の後に続く言葉でかき消されてしまったけれど。
「巫女は、まあ昔からの伝承で今ではすっかり忘れられてしまっているけれども、神の言葉を人々に伝える、っていうことをしていたみたいだよ。この神話も、元は神から伝え聞いたものだったみたいだね」
「神の言葉……」
それすなわち、神と話す可能性を持っている人。その人に会えば、神と話し、会い、元の世界に戻れるかもしれない。
「じゃあ……その巫女って人はどこにいるの? 話を聞く限りじゃ、結構重要な人っぽいから王都にいるんじゃないの?」
「いや、確かに昔は重宝されていたらしいけど、今は王都にはいない。いるのは……領外だと考えられている」
「……! ちょっと待って、領外って……!」
「そうさ、巫女は、その神の言葉を聞くことができるという、ともすれば国家転覆の可能性さえ持っている。だから百年くらい前に巫女は領外へと追放された。今でも生きているのかは分からない。けれどもこの世界で神と会うという可能性を秘めているのは、彼女らしかいない」
…………悲しい話だ。
口ぶりからすると、颯也は巫女の詳しい場所までは知らないらしい。
「それで僕に巫女を捜せ、ということなの?」
「そうだね、まぁ僕もそこまで調べようとしたんだけど、生憎この場所を離れることはできないし、他にも調べ物があったからね。残念ながら詳しい場所までは把握できていないんだ。でも……さすがにここまで話せば、君も巫女に辿り着けるだろう?」
ここまで言われて、お膳立てされて、それで結果が出せなければ、それこそ本当の役立たず。あの時、このみを守れなかったのも頷ける。
だけど、僕は決してそんな人間にはなりたくない。
巫女を捜し、僕の知りたいことを知り、このみを見つけて、元の世界に戻る。そうしたら、僕は君に謝るよ、このみ。
「その瞳はイエスととっていいのかな。……一ヶ月だ。一ヶ月は君がいなくても、この国は廻り続けるだろう。だが、それ以上は難しい。それまでの間に、巫女を見つけるんだ」
それは完全に王都中央大臣颯也の言葉だった。僕はそれに頷き、そして大臣の部屋を出た。
『この世界のことなら、王都王国史資料館に行けばいいよ。そこにこの世界の、この国が持つすべての情報がある。君の階級なら、どんな資料でも見れることだろうよ』
と、去り際に颯也から言われた。
多分、国立国会図書館的な場所のことだろう。
この宮殿の中にはないだろうけど、おそらく王都にあるのは間違いない。
まあ外に出て、王宮の前の道にある標識でも見れば、その場所ぐらい分かると思う。
「さあて……とりあえずは、資料館に行くか……」
行って、とりあえずの情報を集めたら一端ふゆかの所に帰って、それからは旅に出るかな。変な話だけど、うまくいけばふゆかと会うのは、次で最後だ。領外に行くのだから、当然危険もついてくると思う。僕自身はきっと、それなりに剣も巧みで強いだろう。けど、今の僕にはその力はない。
現在、領外にいるモンスターの数は以前と比べ少ないといっても、いないわけではない。
少し訓練をして、領外での戦い方も心得なければいけない。
やることはたくさんあるし、時間は限られている。
使えるものは全部使って、守るものは全部守って、完全に元通りにする。
なにも一〇〇%、それができないというわけじゃない。
できるだけの力は、この世界の僕は持っている。
だから、やるしかない。
いろんな喧噪のなか、僕は地方への移動便の馬車へと乗った。
定員は大体十五人ぐらいで、その実際の乗員はその半分くらい。
僕が王都に来てから、一週間が過ぎた。
訓練の甲斐あいって戦闘の仕方もわかってきた。体が勝手に動いていくといった感じのほうが正しい言い方かもしれない。それでも今の僕は前の僕に比べて半分の力も出せていないらしいけど。
ま、それでも、領外での普通の戦闘においては十分だろう。だから残り三週間は、僕は領外に向かうつもりだ。資料館での調べ物のおかげで巫女がいそうな場所もいくつかの候補地に絞ることができた。
そして今僕はこの王都を去ろうとしている。
これから一端、ふゆかのもとへ戻って、そこから旅へと出る。
あっちでふゆかになんて言うのかも、もう決めている。
覚悟は決めた。
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