断章2 布目颯也

「ふぅ……やっと行ったか」

噴煙舞い散る部屋で颯也は呟く。

直後、響くのは六発の銃声。そのすべてが颯也の体の各部に突き抜ける。

「ぐっ……!」

颯也の口から、体の各部から血液が流れ出す。地に膝を着き、ともすれば倒れ絶命してしまいそうな様子だ。

煙が晴れ、現れたのは全身を黒い布で覆いつくす数人の暗殺者と思われる人物。

「布目颯也だな……」

暗殺者の内の一人がそう目のまで膝をつく男に問いかける。

「そうだけど……だったら、どうする?」

口端に血を滲ませながら、未だ危機的状況に陥っていないとでも言うばかりに答える。

「殺す」

そして、そんな颯也の言葉に答えたのは短い一言と一発の銃声。その男の手の中から放たれた螺旋状に回転する鉛弾は直線状の軌道を描きながら音速を超え、颯也の額に当たり、その下にある頭蓋骨と脳髄とに孔を開けた。

「任務終了……後は残党を狩れ。それと、ボスの所に応援を……」

目の前で額に孔が開くのを確認した男がどこかに連絡をとる。既に死体となった布目颯也に背を向け、部屋を去ろうとしたその時。

「待ってよ……どこに行く気だい?」

声がした、誰もいないはずの背後から。

「なっ!」

驚愕の声が漏れ出るのと同時に、その場にいた暗殺者たちの体が折れ曲がり一瞬の内に命が絶たれた。

「君たちのボスから、聞いていなかったのか。まったく……人の命を何だと思っているんだ。だが、僕も仲間たちが殺されているのに、それを忘れて仇を討たないなんてわけにはいかないんでね」

気づけば颯也の体に開いていた孔は姿を消し、最早誰も聞くことのない空間で独り言を呟く。地面に散らばる瓦礫を踏み、倒れる死体に一瞥もせず、そして部屋から出て行った。

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