第20話 フランの笑顔とガーナの悪魔 後編

銃創や切り傷が痛々しい黒人の巨漢が、夜の桃ノ島に上陸する。

・・・・・・アサンボサムだ。


彼は窮地に追いやられていた、彼は日本を舐めていたのだ。

・・・・・・日本のヒーローとヴィランの多さと強さを侮っていた。


中国から泳いで日本にやってきたアサンボサムは壇ノ浦でヴィラン集団に襲われた。


平家蟹と臼と蜂と栗と牛糞の五人の怪人達である、平家蟹は激怒していた。

「見つけたぜ、黒い猿野郎!!弟分の蜘蛛の仇だ!!」


彼らは中国四国地方で細々と悪事を働くヴィランチーム、アサンボサムが殺害した

蜘蛛の密漁犯は彼らの兄弟分だった。


蟹は斬撃、蜂や栗が銃撃、反撃しようにも牛糞が邪魔をして臼が盾となり阻む。

海に飛び込み命からがら辿りついたのが桃ノ島だった。


人々はアサンボサムの侵入に気づかなかった、桃ノ島は夜は一部を除いて静かだ。

・・・・・・だが愛媛を縄張りとする隠神刑部の一族である、狸達は見ていた。


「・・・・・・台無し。」

全員がリビングに揃って隠神刑の話を聞いた後、フランが口を開く。


「・・・・・・よりによって、明日遊びに行こうとした先に敵が逃げたのかよ。」

進太郎も気まずい顔をする、弁当持って近くの山にピクニックと言うデートプラン

をまとめた矢先に飛び込んできたニュースだった。


「こうなれば、総力を持って殲滅しましょう。」

メイがメガネを光らせる。

「メイ先生、コピー本がまだでちゅよ~!!」

メイのアシスタントをしていたアニーが叫ぶ、二人は動けない。


「おじいちゃん、明日は全力プロレスさんの試合に出るんじゃ。」

変身ベルトが、副業が忙しいから休むというヒーローがかつていただろうか?


「・・・・・・私と殿下がいれば大丈夫、絶対に負けない。」

・・・・・・・フランの目は、ヤンデレの目であった。


翌日、進太郎とフランは予定通り近くの山へ遊びに出かけた。

山の持ち主が、中腹でペンションを経営していて観光地化されてはいる。


穴場らしく武道家や釣り人、キャンパーにサバイバルゲーマーに学生とかが

来るらしい中腹には池があり釣りも楽しめる。


池のほとりでシートを敷き、敵を待ち伏せていた。

弁当はある理由から地面の中に埋めた、敵を倒してからのお楽しみである。


そんな中、雑木林が揺れ口には鉄の歯足には鉤爪の裸形の怪人が姿を現した。

「人間?じゃないなニュータントか!!」

アサンボサムは、目の前の獲物二人組が只者ではないと察した。


フランが進太郎の背後に回り変身、そして自分の体を開いて進太郎を

テックな感じで自らの体内にセット。


突然フランの体内に取り込まれた進太郎、彼女の体内で謎の触手っぽい

生体器官により全身を同人誌みたいな展開にされる。


それを見ていたアサンボサムは恐怖で身動きが取れなかった。

ニュータントが人間を食ったと勘違いしたのだ。

「・・・・・・貴様、ヴィランか!!」

と叫ぶ、お前が言うな展開だが否定できない。


進太郎を取り込んだフランは全身を、紫からピンク色に変えて時折体から蒸気を噴き放電した後紫色に戻る。

「チャージ完了、変身開始。」

と声を発して、足の裏からロケット噴射で空へ飛び上がると空中で変形を始めた。


「・・・・・・と、飛んだだと!!」

アサンボサムは呆気に取られた、完全にイニシアチブを取られた。


そして、空から舞い降りてきたのは紫色の城砦だった。

・・・・・・・いや、紫の城砦を纏ったデーモンブリードだ!!


肩と胴体は西洋風の城壁と城門、手足は大きい城塔の形を模した具足。

変身ベルトのバックル部分は素顔のフランを模していた。


この状態の名を、デーモンブリードフランフォームと言う。

公式サイトにも載っている情報だ。


そしてバックルが喋る。

「殿下と私の時間を邪魔した罪で・・・・・・断罪。」

台詞がヤンデレっぽかった、進太郎ではなくフランが体の主導権を握っていた。


「そんな罪など知るか!!」

アサンボサムが突っ込んでくるが、フランが吠えると進太郎の意思を無視して

デーモンブリードの腕が上がりアサンボサムに振り下ろされ叩き伏せられる。


だが、それだけでは終わらなかった。


倒れ伏したアサンボサムの首根っこを掴んで、空へと上昇するデーモンブリード。

アサンボサムを掴んだ腕をブンブン回転させて・・・・・・投げ捨てた!!


・・・・・・アサンボサムの生死については不明である。

彼の敗因はあらゆる意味で日本をなめていたことであった。


意識を取り戻した進太郎が見たものは、飛びっきり爽やかで愛らしい

フランの笑顔だった。

















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