第14話 血を吸う椰子は吸血樹 中編

フライングウィッチ騒動から3日後、宮崎県では恐るべき異変が起きていた。


「すご~い、ハワイみた~い♪」

フレンズのように堀切峠から海を眺める化粧は濃いが美人な茶髪の女性。


その隣で女性の肩を抱く成金趣味であんこ型なアロハの男。

「だろ~♪」

男はいやらしいドヤ顔である、頭の中は女性と過ごす夜の事でいっぱいだ。


二人だけの世界に浸っているバカップル、青い空と心地よい風が

彼らを祝福しているかのような気分を味わっている中。


シュルシュルシュルシュルシュルッ!!


植樹されたフェニックスの葉が音を立てて伸びてカップルを締め付ける!!

「グワーーーーーーッ!!」


「イヤーーーーーーッ!!」


ドク!!ドク!!ドク!!

音を立てて椰子の木が、締め付けた葉でカップルから血を吸い出す。


やがて、カップルはミイラとなり事件の被害者として報道される事となる。


この時点では、警察もヒーローもまだ椰子の木が犯人とは気づいていなかった。


一方、ヘルグリム帝国大使館のメイの部屋、彼女はタブレットペンを走らせ

パソコンの画面にマンガを描いていた。


公式サイトで連載中の漫画、メイド嫁ご奉仕日記という。


サークル名は、まんまヘルグリム帝国で夏と冬とショップや通販

でマンガや公式グッズを販売している。


ヘルグリム帝国は、ヒーロー業以外にも商売に手を出している。


ゴート66世がプロレス団体を本国で運営し、動画放送やグッズ販売を

人間界で行ったりアニーが狩猟をしたりしてジャパンマネーを地に足を

つけて稼いでいるのだ。


「ふう、夏の原稿の前に一休み。」

とメイが作業を終えてネットサーフィンをすると

『日南海岸でミイラ化遺体発見!!』

と言うニュースを見つける。


「これは、殿下のお耳に入れねばなりませんね。」

メイは、この事件を吸血夜会が絡んでいると判断した。


・・・・・・調査のついでに南国バカンスを楽しみたいと企みつつ。


デーモン道場では、黒いスライムのプールで進太郎が立ち泳ぎをしていた。

「がんばるんじゃ、あと少しでゴールじゃ!!」


祖父の応援は耳に入らない、ただの水の中ではなくスライムなのでぶよぶよと

動きを跳ね返すので負荷が全身にかかる全身運動になるがキツイ。


「スライムが雑魚って、ゲームのうそつき!!」

最後の気力で手足を動かし、プールの端にすがりつく。


達成と判断しスライムもゼリーから液状になり進太郎を解放する。


「よくがんばったのう、進太郎。」

ゴート66世がほめる。


「・・・・・・疲れた。」

プールから上がった進太郎は、その場でへばった。


そんな進太郎をやってきたフランが、お姫様抱っこで抱き上げる。

「・・・・・・殿下、お風呂に入れてお世話する。」


「うむ、任せた。」

フランの言葉をゴート66世が承諾する。


道場を3人が出ようとしたところ、メイと遭遇し報告を受ける。


「それは怪しいのう、ならば急いで出立じゃ!!」

ゴート66世の号令に従ったメイド達は、旅支度を整えて

進太郎を眠らせたまま連れて宮崎へと旅立った。















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