第18話
「それは……、どういう……?」
「そのままの意味だ」
シーファは両手で髪を掻き揚げ、頭の中を支配する言葉の紐を解こうとした。
「でも、なぜ貴方がそんなことを知って……」
「少し長くなるのだが、大丈夫か? 貴女が落ち着くまで……」
アドヴェクスターは、そっとシーファの顔色を伺おうと覗き込む。
「……待って。その傷、放置していたの?」
目を丸くして見つめる先は、アドヴェクスターの左手。
出血は止まってはいたものの、掌には乾いた血がベットリと張り付いている。
「このくらいどうって事はない」
「どうって事ある。私が!」
*
隣の部屋から、話し声が聞こえてルーヴァンは目を覚ました。
胸がざわつくような感覚に動かされるまま、静かにベッドから降りる。
裸足のまま部屋を出、シーファの部屋のドアに手をかけた瞬間、ルーヴァンは動きを止めた。
「は? これ以上緩めるとかできないぞ?」
「もう出血してないから良いだろう?」
「うるさい黙れ」
「……本当に姫君としての教育受けたか?」
ドア越しに聞こえるシーファとアドヴェクスターの声に、昼間のような険悪感はない。むしろ……。
ルーヴァンは視線を落とすと、部屋に戻って床についた。
*
「……今、ルーヴァンが部屋の前まで来てたな」
「気配でわかるのか?」
「普通はわかる」
シーファは無愛想にそう言うと、彼の左手に布を巻き直した。
「……姫君としての教育じゃなくて、狩人の教育でも受けて来たか?」
「どっちも受けてない」
「……は? 嘘だろう?」
彼の言葉にシーファは手を止める。
「まあ、正確には『拒否していた』。社交界での振る舞いなんかは全て見よう見真似だ。その他の最低限必要なものはある人にだけ教わった。人に押し付けられるのが嫌だったから」
「……宮の離れに居る婆様か」
シーファはハッとしてアドヴェクスターを見つめる。
アドヴェクスターは、不意にシーファを抱き上げると、暖炉の前に置かれた椅子へ運んだ。
「俺が、どうして国王を殺したのか、もう話しても大丈夫だな?」
シーファは突然のことに唖然として彼を見つめる。
「流石にベッドに寝ている姫君に語り聞かせるような内容でもないからな。体を冷やすと良くない。私の上着でも羽織っていなさい」
完全にアドヴェクスターに流されるがままだ。
シーファは少し不満ではあったが、彼の上着を膝に掛けた。
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