第13話

「まずいことになった……」

 テナは賢い。そしてシーファとルーヴァン以外の言うことは聞かない。それがさっき、シーファの呼び止める声に反応しなかったのは、新しいがいると考えるのが簡単だ。

「アドヴェクスター第2王子……」

 シーファはポツリと呟き、布を頭から深く被り、立ち上がった。

「テナに指示したのはアドヴェクスター第2王子よ。あのテナを手懐けるなんて、他なら考えられないけど、彼なら有り得る。ルーヴァン、テナにも見つからないような場所に隠れなきゃ……!」

「シーファ、テナは洞窟に隠れて眠っていた俺たちさえ見つけたんだ。隠れるより、逃げるしか手は無いと思う。だから……」

「だったら今すぐにでもここを出なきゃダメでしょう⁉︎」

 彼女は辛そうに目を伏せると、そっと言葉を紡いだ。

「久し振りにを見たわ。シュアルヴィッツの小さな軍を引き連れてアドヴェクスター第2王子がこの森を歩いているのが見えた。

 朝日が昇るとともに彼はテナの足に小さな紙を縛って空に放ち、高台からテナがどの方向へ行くか見つめ、場所を特定しようとしていた。」

「……だとしたら、こんなことしてる場合じゃないだろう⁉︎ 早く行くぞ!」



 *



「東、か。お前たちは真っ直ぐ東へ進め。馬車はここで待機していろ。私は単独で動く。昨日同様、日没までにはここに全員戻ってこい」

 長身の青年は、飛んで行く鷹を見つめ、少し鼻にかかる低く沈むような声で後ろに控えている者たちにそう伝えると、馬に飛び乗った。

「憐れな姫君……。早く夢から覚めなさい」

 昇っていく太陽に語りかけるように囁くと、青年は音もなく森へと姿を消した。

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