第2話一の始まり全ての終わり
冷蔵庫の妖精が見えた。
ふわふわと宙に浮かぶ冷蔵庫の姿をした妖精は俺の周りをうろちょろ徘徊している。
狭く、太陽の光が差し込まない、散らかった部屋の中でパソコンから溢れるブルーライトだけが唯一の光である。
毎日、部屋から出ずに、ただただゲームやらなんやらと同じような日々を送っている。
引きこもりになってから、約一年。
ここ最近は、妖精(幻覚)が見える。
どうやら、俺はもうダメらしい。
完全に人間として使い物にならないゴミクズとなってしまった。
今、俺はどんな顔をしているのだろう。もう半年くらい自分の顔を見ていない。
きっとひどいことになっているんだろうな。
冷蔵庫の妖精なのかもしれない奴が宙に浮かびながら、「早く外に出なよ、出ちゃいなよ〜」と、話しかけてくる。
嫌だ。誰が外に出るものか。
外に出るくらいなら、死んだほうがましだ。
「けど〜、このままここにいたらもっとダメになるよ〜」と、冷蔵庫の妖精は語りかける。
もういいよ、ダメ人間の底辺まで成り下がった俺だ。もう何も怖くない。
その後も冷蔵庫の妖精は俺の周りを浮かび続ける。
できるものなら、やり直したい。
その気持ちはまだ微かに残っている。
もしやり直しができるなら、俺は人生をやり直して今度こそ真人間として生きていくだろう。
今の生活にはもう飽きた。
あと少し頭をおかしくすれば、恐らくは、あの世だ。
そうなる前にこの状況から脱したい。
けれどもその勇気が出ない。
だから、やり直す機会が欲しい。
人生をやり直す、そんなチャンスを。
「今、何時なんだろう。パソコンでも見るか」
すると、一通のメールが届く。
もしかして、また迷惑メールだろうか。
メールフォルダを開き、中身を見ると、『Re.人生をやり直したいあなたへ』と書かれていた。
なんだ、ただの宗教勧誘か。
削除、削除っと。メールをゴミ箱に入れようとしたら、ゴミ箱のアイコンが消えていた。
バグっているのだろうか。だとしたら最悪だ。
一応、他のメールも溜まっているので、消せるか試して見ると、消せた。
消せてしまった。
やはり、バグっていたのか。
それでも、このメールだけは消せなかった。この一通だけは消せなかった。まるで見てくれといっているかのように。
恐る恐るメールを開くと、『人生をやり直したいと思っていませんか?やり直したい方は、このURLをクリック!!』と書かれていた。
人生をやり直すか、やり直せるものならやり直したいものだな。
まぁ、暇つぶし程度にやってみるか。
俺はURLをクリックして、次のページに進んだ。
そこには『西暦、月、そして日にちの入力してください』と書かれていた。
どうせ戻るなら、ニートになる前に戻れたい。
俺は、ニートになる前の一年前に設定した。
そして、決定ボタンをクリックし、送信されました。と画面に映る。
ーーその瞬間、俺は戻っていた。
一年前の自分に。
人生やり直しゲーム @10071999
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