第7話 今日の成果は
「ただいまー今日はいろいろあったなー。」
暗い部屋に千春の声が響く。彼女の放課後の大半は悠斗の家や志津の家で過ごしているためか最低限の家具しか置かれておらず、殺伐としていた。電気を付け、悠斗から受け取った材料を冷蔵庫に入れ一息つく。
「とりあえずシャワー浴びて少し勉強してからからハンバーグを作ろう!」
伸びをしながら予定を立て、行動に移し始める。うまくハンバーグが作れたのが余程嬉しかったのか上機嫌な彼女は鼻歌交じりにシャワーを浴びている。
「♪~。明日のお弁当はおいしく作れそうな気がする!二人には今日の成果を見せれたらいいな。」
そんな事をつぶやきながら上機嫌なまま風呂場を出て着替える。脱いだ服とタオルを洗濯機に入れ動かす。
「掃除、洗濯は練習したんだけどなあ……。」
誰に言うでもなく言い訳じみた独り言をこぼす。実は料理については頭からすっかり抜けていて一度も練習していなかったのだ。もし自分の近所に志津と悠斗がいなかったかと考えると少し怖くなる。本当にあの二人がいてくれてよかった。私だけでは今頃の食事はどうなっていたのか……。
その後しばらく授業の復習をしていると洗濯機が鳴り、洗濯物を干し始める。乾燥機がないためYシャツなどは外に、下着類は部屋に干す。干し終え時計に目をやると時計は十一時頃を指していた。
「遅くなっちゃたけどそろそろ作り始めようかな。美味く出来るといいな……。」
そんなことを考えつつ渡された材料を袋から出し、ゆうくんから貰ったメモと中身を比べる。するとその中には玉ねぎが入っていなかった。とりあえずゆうくんにその旨のメッセージを送ると玉ねぎを持ってきてくれることとなった。ボウルなどの器具を用意しているとインターホンが鳴った。ゆうくんが来たみたいだ。
「ごめんね夜遅くに……。」
ドアを開け、うつむきながら謝罪する。
「大丈夫。もとはと言えば入れ忘れた俺が悪いし。千春さえ良ければ作るの見ていようか?」
「うん、ちょっと自信ないからその方が嬉しいかも。何から何までありがとう……。」
近所迷惑にならない程度の小声で会話しつつゆうくんを部屋に招き入れる。
「千春!ちょ、ちょっとあれどうにかしてくれ……。」
食卓の方に歩く途中で切羽詰まった声が聞こえた。
「どうしたの?あれって?」
「あれ」の正体に覚えがなく振り替えりながら訪ねた。すると後ろのゆうくんの顔は赤く染まっており下を向きながら一点を指さしている。その方向を見るとあったのは私の下着類が干してあった。顔が熱くなるのを感じて急いで寝室に干しに行く。私はなんてことを……。
「ごめんねゆうくん……。完全に干してるの忘れてた。と、とりあえず椅子に座りながら待ってくれれば分からないところとか聞きに行くから。」
早く忘れてもらえるように話しを逸らし、有無を言わさずに作り始める。調味料などの量や順番などが事細かに書いてあったため特に問題もなく順調にできていく。いよいよ焼くのみとなり焼き始める。焼きすぎないように細心の注意を払って見守りながら楊枝を差し中を確認する。中は焼けているようで安堵し、ゆうくんに声を掛けた。
「できたよーゆうくん成功したよ!」
返事がしないので振り向くとゆうくんが机に突っ伏している。
「あれ?寝てるのかな?ゆうくん!おーい」
何度か揺さぶってみるが起きないので諦めて布団を運び掛ける。
「ありがとうねゆうくん。本当に助かった。これからは一人でも作れるように頑張るね!」
その後片付けを終えてゆうくんの隣の席に座りながら今日の出来事を思い出していた。二人が料理の基本的なことを教えてくれたおかげでこれからの弁当は何とかなりそうだ。今度どんなお礼をしようか、そんな事を考えつつ微睡みの中にに落ちていった。
僕らの高校生活 雪解月 @kisaragi206
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕らの高校生活の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます