第2話入学式

これから始まる高校生活や、新しくできるであろうクラスメイトに期待を寄せつつ教室の戸を開ける。


「おはよう、黒板に貼られた席順見て座ってくれ。」

教師にそう促され席に着く。


「えー、全員そろったようだな。おはよう生徒諸君担任の田中だ。数学講師をしている。ともあれ、入学おめでとう。君たちの高校生活を見守れることを嬉れしく思うよ。この時間は各クラスでのガイダンスだが、特に重要でもないので省略する。周りの生徒と友好深めておいてくれ。」


担任の軽い自己紹介が終わり皆思い思いに周りの生徒と会話を始めている。まだ誰とも話せずにいる俺は、どうしたものかとクラスを見渡していた。すると不意に声を掛けられた。


「俺は片桐柊、片桐でも柊でも何でもいいぜ。よろしく。お前の名前は?」


どうやら彼が記念すべき一人目友人となりそうだ。


「俺は菊月悠斗だ。俺のことも好きに読んでくれていいよ。よろしくな柊。」


「OK。じゃあ悠って呼ばせてもらうな。」


他にも出身中学、志望理由など様々なことを話していく。話のネタも尽きかけてきたところでチャイムが鳴った。


「もうこんな時間か、入学式が始まるぞ。出席番号順に並んで私に付いて来てくれ。」

担任からそう声を掛けられ、皆教室から出て廊下に並び、動き始める。


いよいよ入学式だ。昨日は夜更かししたのだ、初日から寝てしまわないだろうか。そんな事を考えながら列について入場して行く。

そして、いよいよ入学式が始まった。


◇◇◇


それでは、第56回春陽高校入学式を始めます。一同、礼。

続いて、新入生代表による挨拶です。一年四組、雪城千春さんお願いします。


はい。

暖かな春の訪れとともに……


◇◇◇


そこからというもの俺には退場の時まで入学式の記憶がなかった……



「お前なぁ、初日から爆睡しすぎだろ。何度揺すっても全然起きねえし。」


教室に戻ってから、柊は呆れた顔をして小言を言っている。


「いや昨日から高校生活が楽しみで眠れなくて……」

苦笑交じりに言った。


「いや、お前遠足前の子供かよ。」

……何も言えない


「ゆうちゃん、入学式寝てたの……」

いつの間にか横にいた志津にも言われてしまった。


「いや、あの、校長の話までは起きてたんだよ。」


などとつい言い訳をしてしまった。それを聞いてから柊は笑い始め、志津はより一層呆れた顔を見せた。


「あのねぇ、ゆうちゃん。うちの高校は生徒主体の学校だから新入生代表と在校生代表の言葉だけで短かったんだよ。すぐに終わったのに寝ちゃうなんて……」


そうだったのか、全く知らなかった……


「あー可笑しい。言い訳して墓穴掘るとか才能だろ。」


「知らなかったんだ、仕方ないだろ……てか柊だってこう言うの真面目に聞かなそうじゃないか。」


と軽口を叩きあいひとしきり笑いあった後、志津のすぐそばに女子生徒がいることに気が付いた。


「志津その子は?」


その少女に視線をやりながら訪ねる。

「友達の千春ちゃん。」


そう言って志津は少女を促す。

「雪城千春です。ゆうくんは聞いてなかったかもだけど新入生代表だったんだよ。」

と悪戯そうに言われてしまう。


「ごめん聞いてなくて……頑張って作っただろうに。」

全く聞いてなかったので素直に謝る。すると

「大丈夫だよ。」

とくすくすと笑いながら許してくれた。


この後すぐに先生が戻り、解散となった。解散した後、俺たちは志津の机の周りに集まることにした。


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