僕らの高校生活

雪解月

第1話初登校

「早く! 早く起きて! ゆうちゃん! 」


俺の記念すべき高校生初日の朝は、こんな切迫した声から始まった。

聞こえてくるのは幼馴染の志津の声。


「起きてる……起きてるから。」


揺さぶって起こそうとしてくる志津に気怠そうな声で答える。

時計はまだ六時だ。何故だろう? 入学式はまだまだのはずだ。


「入学式は八時からだろ? それにまだ六時じゃないか。」


少し攻めるような声音で不機嫌そうに言う。だが志津は不思議そうな顔を浮かべていた。


「ゆうちゃんは、新入生説明会でなに聞いてたの?その前に七時からクラス発表とガイダンスがあるって言ってたでしょ⁉」


……初耳だった。高校まで歩いて四〇分程度の距離、かなりぎりぎりだ。


「とりあえずっ! 身支度済ませてリビング来て! 朝ご飯は作ってあるから!」


もうっ! と頬を膨らませながら口早に捲し立てる。俺は急いで着替えて下に降りる。

志津はそれを確認するとラップに包まれたサンドイッチと水筒を

手渡してきた。


「はいこれ、朝ごはんとお茶。とりあえず学校近くまで走ってから食べるよ。」


そう言って足早に駆け出した。普段と違った道を走って登校する、たったこれだけで、あぁ新生活が始まったんだなと実感できる。

校門近づいてきたところで歩調を落としつつそう感じた。

その新生活が誰のおかげで平穏にスタートしたのかをふと思いだす。


「志津、ありがとな俺一人だったら初日から遅刻だったわ。」


走って乱れた息を整えサンドイッチのラップをはがしながら言う。


「いつものことじゃんか。」


はにかみながら言われてしまった。こう言われると何も言い返せない。


「朝は苦手なんだ……」

と言い訳じみたように呟くだけだった。


志津と他愛もない会話を交わしている間に学校に到着し、校門をくぐるとあることに気が付いた。

校庭の真ん中にホワイトボードと、人だかりがある。その辺りからがっかりしたような声や、やったね! なんて声も聞こえてきた。


「なんかある、なんだろう?」


どうやら志津もそれに気が付いたようだ。二人して首を傾げながらボードに近づく。それには紙のようなものが貼られていること、紙には人名のようなものが書かれているがわかった。どうやらクラス発表の用紙のようだ。


「クラスが書いてあるみたいだ。お互いどこにあるか見ていこう。見つけたら人込みから少し離れたとこで集合な。」

そう言って一旦志津と別れる。


別れてすぐにボードの周りでプリントを配っている人に気が付いた。プリントを受け取り内容を見ると校内の図だということに気が付く。どうやら一年生の教室の場所が書いてあるようだ。


「えっと菊月悠斗っと、どのへんにあるかな?」


呟きながら名前を探し、名前の書かれた用紙を流し見していく。意外と早く見つかった。


「見っけ、4組か。」


するといつの間にそこにいたのか横から志津が出てきた。


「本当⁉ ゆうちゃんも4組なの? やたっ!」


なんてはしゃいでいる。それほど知り合いが同じクラスにいたことが嬉しかったのか、一安心しているようだ。


「ここにいても邪魔になるし教室に行こう。」


そう言って下駄箱まで行き、新品の上履きに履き替えた。新しい学校、新しい上履き、そして、これからできるであろう新しい友人、何もかもが新しく思えてくる。

そんなことを考えつつ俺達は教室の前にたどり着いた。

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